第13話 明日旅に出ることにした!

(小鳥の鳴き声)


 旅に出ると決まった日から何度か目の朝を迎えた。

 外は晴れているようだ。


「おはよう。気分はどうだい? Mパッドの天気予報通り外は晴れているよ」

 タクはそう言うとカーテンを開けた。


「ここ数日はだいぶ体調も戻ってきたみたいだ。ここは自然が綺麗で空気も良くて良い休息がとれたよ。自然に囲まれた湖畔の家に住むなんてなかなか素晴らしいことじゃないかと思い始めているよ」

 私は窓の外を見ながら言った。


「これから旅に出るのにここが気に入ってしまったというわけか。確かにここはなかなか素晴らしい場所だ。元々、長く住もうと思ってここを選んだんだ。ここは気候が過ごしやすくて食料も調達しやすいから日常生活には困らないし、ゆっくり暮らすにはいいところだよ」

 タクは答えた。


「とはいえ、旅にはいろいろな意味で期待しているんだ。だから旅に出たくなくなったわけじゃないよ。もし、準備に問題がないなら明日にでも出かけられるよ」

 私は自分は元気であるとポーズでアピールしながら言った。


 直後、ティスの声がした。

「朝ごはんができたよ。良かったら二人とも来てくれないか」


「いま行くよ」

 タクは部屋の出口に向かいながら答えた。

 私もタクに続いてティスのところへ向かった。


――


「何を話していたんだい?」

 ティスは飲み物をコップに注ぎながら聞いてきた。


「ここは住みやすそうだという話と、すっかり元気になったから近々旅に出ようじゃないかという話をしていたんだ。君はどう思う?」

 私はティスに尋ねた。


「そうだね。僕から見て君は元気そうに見えるし、旅支度は大体できているから食料の用意さえすれば明日にでも出かけられるよ。でもどうせなら町に着くまで天気が悪くない方がいいから、Mパッドで天気予報を見て決めたらどうかな」

 

(なるほど、それもそうだ)


私は頷きながら言った。

「たしかにそうだね、天気が悪いと何かと不便だから食事が終わったら調べてみよう。ここから町まで1日では行けないと前に言っていたけれど、何日かかるのかな」


「途中で何もなければ2日だな。どこかで1泊すれば大丈夫だ」

 タクは私の質問に答えた。


「途中で何もなければ…… とは?」

 タクの含みのある言葉に私はつい合いの手を入れた。


「まあ大した問題にはならないだろうが、野生の動物――我々はエネミーと呼んでいる――が居て行く手を阻んでくることがある。以前、町に行くとき何度か遭遇したことがある。別の道を行けばいいこともあるし、やむなく対決する必要がある時もある。この辺に出現するエネミーはそれほど強いわけじゃないから大きな問題にはならないと思うが、君は戦いには慣れていないだろ? ティスと僕はある程度戦えるけれど、君を守りながらとなると場合によっては退避するしかないこともあるかもしれない。もちろん、君のこと僕たちが守るがあまり無茶はできない。だから何もなければ町まで2日だが、何かあれば予定は立たずってやつさ。したがって、食料は多めに持って行こうと思う。少しは現地調達できるだろうが、持って行ければそれに越したことはない」

 タクは私にこの周辺の現状を含めて説明してくれた。


 どうやら最初からこの旅は危険をはらんでいるようだ。しかし、私も単に守られる存在でいるというわけにもいかないので、あまり自信はなかったが自分の経験について告げることにした。

「私は少し剣術――実際は普通の剣道だが――をしていたことがある。どこまでやれるかはエネミーに遭遇しないと何とも言えないけれど、少なくとも武器の類を持って行きたい。どうだろうか」


「なるほど、それは心強い。ティスも僕も武術は専門じゃないからね。期待しているよ。ここには大した武器はないけれど、木刀があるからそれを君に託そう」

 タクは私の方をじっと見ながら言った。


「わかった」

 期待されるような腕ではないので、言ったことにちょっと後悔したが、旅をする上で戦いを二人に任せておくばかりにもいかないと思い、私は覚悟を決めた。


 そんな私の不安をよそに、ティスは天気予報を見ながら楽しそうに言った。

「ここ数日は天気は良いようだね。明日出掛けるということでどうだろうか」


 タクは私の方を一度見て同意を促し私が頷くのを確認してから言った。

「では、そうしようか」



 いよいよ明日、旅に出る!

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