第12話 旅の準備!

「何をしているんだい?」

 ティスが戻ってきた。


「『握手』をしているのさ。これはMの居た世界では一種の信頼の証らしい」

 タクは私と握り合った手を見せながら言った。


「ふーん、じゃ、僕も『握手』をしよう」

 ティスは私に右手を差し出しながら近づいてきた。


「どんなたびになるかわからないけれど、これからよろしく」

 私はそう言いながらティスと握手をした。


 握手が終わるとティスはソファーに座って言った。

「この小屋から持って出た方が良さそうなものは隣の部屋にまとめておいたよ。ただし、Mが持つのに適当なカバンがないな。服は僕たちの服を流用できそうだけれど、それを入れていくのにちょうど良いサイズの一人で持てるカバンが二つしかない。どうしようか」


「ここからは何か袋に入れて持って出て、カバンは町で調達しよう。もう少しMパッドで調べないと結論は出ないけれど、町に行った後の行先次第では手持ちのカバンだけじゃ不足するかもしれないし、どちらにしてもある程度のものは町に行って必要なものを揃えないとならない。ここには最低限のものしかないし、トレジャーハンティングが目的ならなおさらさ」

 タクはティスの方を向きながら言った。


 私は少し気になって尋ねた。

「私は持ち物がMパッドとこの服しかないから、当面は二人に世話になるしかないのだけれど、お金の方は大丈夫かい? 大丈夫じゃなくても私にはどうしようもないのだけれど」


 タクは少し笑いながら言った。

「ふふ、その点しばらくは大丈夫さ。僕が居たトレジャーハンティンググループは規模はそれほど大きくはなかったけれど、それなりに結果を出していたから収入は十分あったんだ。僕は割と貯めるのが好きな性分でね。その時の蓄えがある程度ある。だから君は心配しなくていいよ。もし君が費用のことが気になるのなら、Mパッドを使えるだけで君は十分僕たちの貢献しているからその対価だと思ってもらえればいい」


「そうか、それはありがとう。本当に恩に着るよ」

 私は感謝の気持ちを込めてそう言った。


「それはそうと、君はまだ体力が十分じゃないから旅に出るのは何日か休息をとってからにしよう。町までは1日では行けないから、その間に持ち運びに便利な食料の調達をしておこう。それともう少しMパッドで調べて今後のことを考えておこうか」

 タクはあれこれと考えている様子を見せながら言った。


「僕はこれからいくつか食料を調達してくるよ。兄さんはMとしばらくMパッドのことを調べておいてよ」

 そう言うとティスは出掛ける支度をしだした。


「わかった。今日は僕はここに居ることにするよ。気を付けて」

 そう言うとタクは立ち上がり、出入り口の方へティスを見送りに行った。


(いよいよMワールドへ一歩を踏み出すのか……)

 私は少し不安はあったが、期待の方が勝る気持ちで窓の外を見ていた。


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