第11話 地図アプリ!
私は、地図アプリらしく見えたアイコンをタップした。すると、思惑通り地図のような画面が表示された。中心の小さな円はおそらく現在地なのだろう。この小屋の隣にある湖らしきものも表示されている。今表示されている範囲にはいくつか地名らしきポイントもある。
「これはこの周辺の地図だね」
タクは画面をじっと見ながら言った。
「これは、時々買い物に出掛ける町の名前だ。それから、これはあの窓から見える丘の名前だ」
タクは画面を指さした後、窓の外を指さして言った。
「湖と丘の関係から町の方向も間違いないようだ。するとこの知らない地名は町の一番高いところから見える別の町らしきところの名前だな。行ったことはないが」
タクは独り言のように言った。
「他にいくつか地名らしきポイントが表示されているけれど、知っている地名かい? 行ったことはあるかい?」
私はいよいよ面白くなってきたなと感じて好奇心から尋ねた。
「そうだな、ここは知っている。いつも行く町よりも大きな町だ。ここに来る前に最後に寄ったのがこの町なんだ。実はこの小屋のことを知ったのはこの町でなんだよ。ただし、少し遠いし日常使うようなものはいつも行く町で十分調達できるからそれ以来は行っていない。そもそもここを離れること自体たまにしかないけれどね。食料はこの周辺で調達しているからね」
タクは答えた。
私は他に情報が表示されないかと思い、Mパッドを操作してみた。ピンチアウトするとこの周辺の道が少し細かく表示され、ピンチインするともっと広い範囲が表示された。しかし、広い範囲を表示しても最初に表示された範囲より外の範囲はほとんど情報が表示されなかった。どうやら今の状態ではMパッド内にあまり詳しい情報がないらしい。オフラインということなのか、それともタクが言っていたが情報自体があまりないのか。どちらにしてもこのままではこれ以上詳しい情報は得られそうになかった。
タクは私の操作を見て言った。
「地図の表示範囲が変わるのかい? 紙の地図では考えられないことだね。Mパッドは地図の代わりにもなるか…… しかも1枚の地図というわけではなく、何枚もの地図の代わりになるということだね。初めてMパッドの話を聞いたときはどんなものかあまり具体的にはわからないなと思っていたけれど、これは本当に便利なツールだね」
タクは言葉を続けた。
「Mパッドは一体どこから来たものなんだろう。君の居た世界に似たものがあったと言っていたから君と同じ世界の別の人間なのかもしれないね。その人が今この世界に居るかはわからないけれど、逢える可能性もあるかもしれない。もし君が望むならその時に元の世界に戻る方法が分かるかもしれないね。そういう意味でも、旅に出るのは正しい選択のように思う」
「ありがとう。そう言ってくれると私も少し心強いよ。これからよろしく」
私は、右手を差し出すと握手しようとした。
タクは、私が何をしようとしているのかわからなかったらしい。その様子を見て私は改めて異世界に来てしまったことを改めて思い知った。とはいえ、運良く親切な人間に助けてもらったことは本当に幸運だったと思った。
私は左手でタクの右手を持ち上げながら伝えた。
「これは『握手』といって、信頼の証のようなものだよ。こうやってお互いの手を握り合うのさ」
「なるほど、信頼の証か。これは悪くないね。こちらこそよろしく」
タクは少しおどけた様子で肩をすくめて握手しながら言った。
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