第10話 この世界のことはよくわからない?
「別のアプリを見てみようか」
ティスが隣の部屋へ行ったのを見届けると、私はタクの方を見ながら話しかけた。
「アプリ?」
タクは聞き返した。
「ごめん。ついいつも使っている言葉を使ってしまった。『アプリ』とは画面にアイコンで示されているもの一つ一つの機能のことだと思ってもらえればいい。さっきのは『アイテムリストのアプリ』というわけさ。見たところ、他にもアイコンがあるからこのMパッドには他の機能すなわちアプリがあるということになる」
「なるほど、最初にMパッドのことを教えてくれた人はMパッドはいろいろなことができると言っていた。それらの機能がこのアイコンから起動できるというわけか。そしてそれらが各々の『アプリ』ということになるんだね」
タクは私に確認するように言った。
「そういうこと」
タクの理解が速いので私は正直助かったと思った。元の世界では自分であれこれ考えるのはそれなりに得意だったが、他人にわかりやすく説明するのはあまり得意な方ではなかった。
「さっき見たレアアイテムリストと文献が合わさったアプリ――レアアイテム図鑑――があれば、おおよその情報はわかる。記載されている地名などの情報から探索すべき範囲を絞っていけばある程度アイテム獲得に近づけると思う。もちろん僕らの実力に合った難易度のアイテムに限られるけれどね。問題は、僕らはこの周辺や僕がトレジャーハンティングで行ったことがある地域、あるいはティスが住んでいたことがある町とその周辺くらいしか知らないということだね。このレアアイテム図鑑には僕が知らない地名のような名詞も出てきているから、ゆくゆくはこれらの名詞について調べなくてはならなくなる」
タクは少し難しい顔をしながら言った。
「この世界には地図はないのかい?」
私は疑問を口にした。
タクは答えた。
「地図はある。が、あまり詳しいものはないんだ。この世界の全容は僕が知っている限りまだよくわかっていない。というか、世界が広すぎて把握できない。前に僕は『ここは近い将来、苺の国になる』といったのを覚えているかい? 今回他に8つの国が作られることになっている。しかし、全部で9カ国できることはわかっていても、各々の国の詳しい情報はわからないんだ。しかも、9カ国がこの世界のすべてかどうかすらわからない。だから地図はあっても、断片的なものしかないし、そもそもこの地域以外の地図はほとんど入手不可能だ」
「君は、Mパッドのことを『他の地域に遠征した人に聞いた』と言っていたよね。地図がなくてどうやって遠征したんだろう」
私は尋ねた。
「他の地域の地図もまれに入手できるのさ。古い文献の中で発見されたり、すでに知られている越境地域で売られていたりね。まあ売られているものは真贋がわからないものも多いし高額だったりするしでいろいろな意味で使うのは難しいのだけれど」
タクは一通り説明すると、のどが渇いたのかティスが持ってきていた飲み物を一気の飲み干した。
(Mパッドに地図アプリはないだろうか)
私はMパッドの他のアプリを起動してみることにした。
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