第8話 レアアイテムリスト!

「二人は仲が良いんだね」

 私は二人を交互に見ながら素直な気持ちを伝えた。


「まあね」

 タクは少し照れたように頬を掻きながら答えた。


 さて、これからどうしようかと心の中で考えながら私はテーブル置いていたMパッドを手に取ると再び操作を始めた。


(元の世界に戻る方法は調べられないかな)

 私は淡い期待を抱きながら天気アプリアイコンの隣にあるアイコンをタップした。


「次は何が出てくるんだろう」

 気が付くとティスが隣から覗き込んでいた。タクも遠目から画面の様子を窺っているので、私はみんなで画面が見られるようにテーブルの上にMパッドを平置きした。


 私が起動したアプリは一瞬図鑑のような表紙が表示されて消えた後に小さなたくさんの絵が表示された。


「これは……」

 タクの顔色が少し変わったように見えた。

 私は次の言葉を待った。


 タクはしばらく画面を凝視してから顔を上げると言った。

「これは、レアアイテムのリストのようだ。トレジャーハンティングしていた時にも同じようなリストを使っていた。尤も私たちが使っていたリストは文字が中心でアイテムの外観が分かるようなものは多くはなかったが――しかもこのリストは膨大な文献を集めて調べてもわずかな情報得られず、たとえ名前はわかっても正体がよくわからないようなかなりレアなアイテムもいくつか載っているようだ。多くは私の知らないアイテムだが」


 どうやら私が起動したアプリはお宝図鑑のようなものだったようだ。となれば、アイテムの詳しい情報を知りたくなるのが人情。私は気になるアイテムを適当に選びタップしてみた。すると画面が変わりそのアイテムが少し大きく表示されその下に何やら情報らしきものが表示された。


「なるほど、アイテムを選ぶとその情報が表示されるという仕組みか。一体どうなっているのかはわからないが、レアアイテムリストと詳しい文献が合わさったものと理解すればよいということだな、これはすばらしい」

 タクは感心したように頭を深く上下に動かしながら言った。


「これなら文献を含んだたくさんの資料を一人で持ち運びできるってことになるよね。資料を見ながら調査もできるし、移動も楽になる。トレジャーハンティングもしやすくなるんじゃない、兄さん?」

 ティスは少し驚いたような口調で言った。


「たしかに、すべての資料がこのMパッドの中に含まれるのであれば移動はかなり楽になるな。トレジャーハンティンググループが移動するときは資料を運ぶための専用馬車が必要になるのが常だからな。移動先でも場所をとるし」

 ティスは部屋の上の方を見ながら少し懐かしそうに答えた。


 私はトレジャーハンティングという言葉に多少惹かれ始めていた。もしレアなアイテムが手に入ったらそれだけでも楽しいだろう。タクはトレジャーハンティンググループには戦闘チームがあったと言っていたが、戦いはどうしても必要なのだろうか、戦いはどれくらい危険なのだろうか、私もトレジャーハンティングは可能なのだろうか…… そんなことを考えながら私はあれこれと想像を膨らませていた――異世界に転生してしまったという現実を忘却の彼方に葬り去りながら。



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