第7話 ティスは芸術家?

「危険なのはちょっとアレだけど、お宝探しは興味あるな」

 私は素直な感想を言った。


「確かに、狙っていたアイテムを見つけることができたら楽しいのだけれど、これがなかなか難しい。割と見つけやすいものをあるのだけれど、ある程度レアなアイテムはそう簡単に見つけることができない。危険度も高くなるから準備も十分していかなくてはならない。場合によっては新しい仲間を探したりね。でも、僕がしていたことに興味を持ってくれたことは嬉しいね」

 タクは手に持っていた紙をテーブルに置きながら言った。


「ティスもタクと一緒にトレジャーハンティングしていたのかい?」

 私は気になって尋ねた。


「僕は町でいろいろなことをして暮らしていたんだ。兄さんとは別にね」

 ティスは含みを持たせた言い方で答えた。


「いろいろなこと?」

 私は思わず口に出した。


「そうだな…… 例えば絵を描いたり音楽を演奏したり…… あとは家具を作ったり陶芸をしたり。いろいろなことに興味を持っては始めて、興味が移ったらそっちを始めたり。まあどれもそれなりに稼げたから生活するのに不自由はなかったけれど、兄さんがしばらく落ち着いた生活をするというのでついてきたんだ。ここは人がめったに来ることはないけれど、町にはない別の何か面白いものがあるかもしれないし、というか実際に君に逢えた」

 ティスはニコッと笑って答えた。


 何かを始めては途中で別のものに興味をもってしまうという部分は私に少し似ているなと思ったが、それらで生活できてしまうというのがすごい――私なんて最初に形から入って必要なものを揃えるものの、それに費やした費用を回収することなくその趣味がフェードアウトしているような気がする。この前なんてイラストを描いてみたいと思って結構高価格の道具を買ったけれど、しばらく使ってそれ以降ほとんど有効活用できていない。これ以外にも…… …… あまり思い出すと自己嫌悪に陥るのでこのへんでやめておこう。まあ、素人の趣味なんてそんなものだといえばそれまでかもしれないが――趣味で始めたものが収入を生み、あまつさえ生活できてしまうというのは素直に称賛に値すると思った。


「ティスはね、僕と違って器用なんだよ。天才肌というか何というか。興味を持ったどの分野でも一定のレベルに短時間で到達できる。そのレベルも一般人では届かないようなレベルまで高めることができるんだ。すごいだろ? 今は慣れたけど昔は毎回驚いていたものさ。」

 なぜかタクは自慢気にそう付け加えた。


「兄さんだってトレジャーハンティングではいろいろな役割を器用にこなして結果を出してきたじゃないか。この世界ではトレジャーハンティングは最も尊敬される仕事の一つだし、僕に言わせればタイプが僕と違うだけで兄さんの方がすごいよ」

 ティスもタクのことを誇りに思っているらしかった。


 どの世界でも仲の良い兄弟を見るのはいいものだ。

 自分でもなんとなく心地よい感情を抱きながら私はそう思った。


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