第6話 タクは戦術家!

 食事を終えると私たちはリビングのソファに座った。


「さて、なにから考えようか」

 タクは自分の顎に手を当てながら独り言のように呟いた。


 正体がバレてしまった私はもう自分のことを隠す必要はあまりないと思い、自分に起こったことを二人に話した。


「なるほどね。なぜ君がここに来たのか、どうやってここに来たのか、それらはともかくとして、君は自分の知らないうちにこの世界に転生していて、ここに来たら着ている服が替わっている上に持ち物はMパッドのみだったということだね。そして君の居た世界にはこのような事象を起こすテクノロジーや能力を持った人は君の知っている範囲では無い、居ないと。しかしMパッドのようなものは実在していたということだね?」

 タクは私の話を確認しながら内容を整理してくれた。


 続いてティスが口を開いた。

「そうだとしたら、この世界に存在する何かの力の影響という可能性が高いんじゃないかな。この世界には様々な能力を持った人や動物が居て他人に影響を及ぼすことができる能力を持った人もいる。それから不思議な現象を起こすモノもあるよ。希少なモノなら君が遭遇したような現象を起こせるものもあるかもしれないよね。僕よりもいろいろな文献を読んだことがある兄さんなら何か思い当たることがあるんじゃないの?」


 そういえば、さっきもタクはこの世界の歴史について詳しそうだった。何をしている人なのだろうか。少し気になった私は尋ねた。

「君はさっきこの世界の歴史について話してくれたけど、詳しいのかい?」


 タクは答えた。

「今は休業中だけれど、僕は戦術家なんだ」


「センジュツカ?」

 私は一瞬言葉の意味が分からず聞き返した。


「組織の参謀役さ。その組織が成果を上げるために何をしたらいいか考えるのが仕事だ。僕の場合は語源そのままの意味で戦闘チームの参謀だった。戦闘チームといってもトレジャーハンティングをしていた小さなグループ内の戦闘担当チームというだけで、積極的に戦いに出掛けるというよりは必要に迫られてグループを守っていたという感じだけれどね。僕は戦闘が必要になったときに戦術を考えるの主な仕事だったけど、グループ自体はトレジャーハンティングをしていたから過去の文献を読む機会が多かったんだ。昔から本を読むのも好きだったということもあるけれどね」

 タクは少し懐かしそうなそぶりを見せながら話してくれた。


 ゲーム好きな私はトレジャーハンティングという言葉に興味を持った。

「トレジャーハンティングって、具体的に何を探していたんだい?」


 タクは立ち上がると壁側にある本棚の中から数枚の紙を手に取りテーブルの上に広げた。それぞれの紙にはお宝らしきものの絵と説明文のようなものが書いてあった。

「探すものはその時々で違うんだ。依頼を受けて探すこともあれば自分で探したいものを探すこともある。対象によって難易度はもちろん違うし必要な装備や能力も違う。だからそれらの条件が合致したアイテムを探すことになる」


 続けてタクはテーブルに広げた紙の中から一枚を手に取り説明を始めた。

「これは剣。トレジャーハンティングするためには危険度の高低こそあるものの多少の危険はつきものだから武器は必要だ。だから武器の類はこの世界でたくさん流通はしているけれど、中には成長する武器というものがある。そういった武器は普通の武器比べて強力なものが少なくないから重用されている。それらは店で売っていることもあるけれど自力で手に入れることもできるんだ。他にも鎧や銃もあるし、傷をいやす効果のあるアイテムもある」


(まさにゲームみたいだな)

 テーブルに広げられている他の紙を見ながら私はそう思った。


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