第3話 Mパッド起動!

「ところで、ここはどこなんだい?」

 私は自分の心に浮かんだ考えを振り払うように二人に尋ねた。


「ここは、もうすぐ苺の国になる地域の山奥さ。」

 タクは私の様子を見て少しいぶかしげにそう答えた。


(苺の国…… 聞いたことない……)

 私は聞いたことがない国の名前に動揺し絶句したがタクのおかしな言い回しにはたと気が付き尋ねた。

「もうすぐ? とは?」


「Mワールドをいくつかに分割してランド建設を進めるという話を知らないとは言わせないぞ。」

 タクは驚いたように目を見開いて私をまじまじと見ながらそう言った。


(Mワールド…… ランド建設……)

「あー、あれね。そ、そう…… ランドね。うん、知ってる(知らない)」

 私は焦って少し早口で言った。声も上ずっていたかもしれない。


「ふ-ん…… でも本当は知らないんでしょ」

 ティスはじっとこちらを見ながら言った。


 私はあわてて言った。

「いや、そんなことはないよ、――」


「ははは、今のは感情を読み取るのが得意なティスじゃなくてもわかるよ。僕でも分かったくらいだからね」

 タクはそう言うと言葉を続けた。

「実は今のやり取りとは関係なく、僕らは君がMワールドの別の地域の人間ではないかと思っていたんだ。僕らは近いうちに苺の国になるこの地域とごく近い周辺のことしか知らない。でも僕は訳あってこの地域のことは普通の人よりも詳しい。その僕から見て君はこの地域の人間ではないように思う。僕らにはなじみのない君の名前もこの考えを支持している。他の地域のことはよく知らないけれど君のような名前が使われていても全く不思議じゃない。それと――」

 

 タクは私が目覚めたときに見せた電子端末ようなものを手に取りながら言った。

「これはたぶん、マジックパッド――通称『Mパッド』――だ。うわさに聞いた話だと、ごく限られた人間がだけが使うことができるもので、いろいろなことができるらしいけれどその一つが情報を見ることらしい」


「何の情報が見られるの? 本とは違うの? ただの板のように見えるけれど」

 ティスは不思議そうにMパッドを覗き込んだ。


「詳しくは僕にもわからない。ただ、前に居たところでそういうものがあるらしいということを聞いたんだ。その話をしてくれた人は別の地域へ遠征したときに実物を見る機会があってMパッドの外観のことも話してくれたんだ。その人はMパッドを使えたわけじゃなかったけれど、使用中は片面が光って――」


(ピコ)


 誰ともなく思わず声が出た。

「えっ、」


 タクの話を聞きながら何となく私がMパッドに触ると突然電源が入り画面が表示された。


(おかえりなさい M)

 画面にはそう表示された。


「!?」

 これはスマホのようなものだろうと想像はついたが私のものではない。

 なぜ私の名前が表示されたのか…… それに、目覚めた直後私が触ったときは電源は入らなかったのになぜ今電源が入ったのか…… わけがわからない。


「これはすごい。僕が触っても何も起こらず使えるようにはならなかったのに君が触ったら光ったね。やはり君なら使えるようだね。君がどこから来たのかはわからないけれど、どうやら君は特別な人のようだ」

 タクは少し興奮した様子でそう言った。


「光るのすごいけど、君の名前しか書いてないね」

 ティスは少し拍子抜けした様子でそう言った。


「この先はどうしたらいいのか憶えているかい? 記憶があるといいのだけれど」

 そうだ、私はまだ記憶があいまいだという設定になっているのだった。忘れていた。見慣れたスマートフォンのようなものを見て私は少し油断したが、まだ自分の状況や今のこの環境について十分に把握できているわけではない。


「多分大丈夫だと思うよ。やってみる」

 私はそう言うと、Mパッドをしっかりと手に持ち適当にスワイプしてみた。

 するといくつかのアイコンが表示された。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る