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「『ギャラクシーワールド』かぁ。意外といい場所だったね」


 ホログラムによりこの世界に現れた、仮想の海が僕らを包む。こんな幻想的な視界の中でさえ、彼女の長い艶やかな金髪はホログラム光を餌にして、水中の気泡のごとく、ゆらめき、照り輝く。


「そうだな。このショー八月末までらしいから、僕らはギリギリラッキーだったんだな」


「これも全て私の日ごろの行いのおかげだね」


「お前の大学の友達が開発に携わったんだっけ? それなら一概に否定は出来ないな。ったくこれだから天才は」


「でも、その天才を見事恋に落としたんだから、理太も隅に置けないよね」


「急にデレるなよ、照れる」


「ふふん、ならもっとデレデレしてあげるっ」


 彼女はそう言って。


 ――くいっ、と。ふわりと身体が引かれる感触。


 シャツの袖を掴まれたのだ。

 振り向くと、そこには白い歯を見せて、はにかむ


「――ッ!?」


 その時、頭に鋭い痛みがはしった。


 違和感――? 

 いや、これはだ。


 何かを僕に訴えるために、頭を叩かれたような……そんな痛み。まさしく、悲痛。

 

「理太……? 大丈夫?」


 心配そうに僕を見上げる譁�隱。


「あ、あぁ。大丈夫大丈夫。袖クイにキーンと来ただけだから」


「私はかき氷か」


「座布団一枚」


「もう、そんなのいらないから。ちょっと休も? これまで歩きっぱなしだったもんね。ごめんね、はしゃいじゃって」


「気にすんなって。お前ずっと研究の虫だったんだから、僕といるときくらい好きにすればいいさ」


「ふふっ……、じゃあそうさせてもらおうかな。でも研究だって好きでやってることなんだよ?」


「ロボット工学と量子力学だっけ?」


「そ、二足の草鞋わらじになるのかな」


「ロボットは別として、量子力学ってシュレディンガーの猫とかいうやつが出てくるやつだろ? あんなもん何で勉強してんだ?」


「うーん、なんでだろうね。なんかそうするべきかなって思った――、ってだけかな。自分でもよく分からないんだけどね。

 だから研究も少し遅めになっちゃってる。あくまでロボット工学が専門だからね。それがカタチになったら本気でやるかな。時空跳躍タイムトラベルとかしてみたいし」


「そりゃまた御大層なこって。僕としては過去をやり直されると困るな。譁�隱と会えなくなったら、嫌だし」


「私愛されてるぅ~。

 でも心配ないと思う。今の理論が正しいのなら、人間の時空跳躍は難しそうなんだよ。ロボットとか、私の開発してる半人半機アンドロイドに行かせるってのなら話は別だろうけどさ。

 それに、そもそも私は過去に未練なんてないしね」


「そっか……それは良いことだな」


 そこで突然、彼女はパチンと手を鳴らした。それはどうやら気分転換の合図だったようで、彼女は周囲に笑みを撒きながら言う。


「はい、真面目な話はここでおしまい! 観覧車、観覧車行こっ!」


「はいはい、分かったから引っ張るなって、腕が伸びる」


「じゃあ銃で撃たれたも平気だ」


「別にゴムになったわけじゃないからな」


 楽しい、カノジョとの遊園地デート。

 あぁ、本当に。

 ずっとこんな時間が続けばいいのに。そんな乙女チックなことを思った。









 

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