110、足並み揃えて

 とその時、懐のケータイが鳴り出した。画面を確認すると、サイネアからのようだ。


「はいはい、どしたの? カロン」

『仕事だ。強盗らしい。場所は追って送る。急行しろ』


 有無を言わせぬ物言い。せっかくミオナと親睦を深めようとしていたのに台無しだ。


「いやいや、強盗は〝烏〟の領分でしょ」

『犯人は超能使いのようだ。例の薬が流出、悪用された可能性も無いとは言えない。必要だ、出ろ』

「はぁ……そう言われたら仕方ないね」


 通話を切ると、現場の座標が送られてきた。ここから5分、ってとこかな。逃げた方向、逃走手段なども加味して追いかけなければ。


(まったく……厄介な置き土産だね)


 最後まで迷惑を掛けてくるところも含め、昔から何も変わっていないな、あいつは。


「事件、ですか? 強盗と聞こえましたけど」


 そう言うミオナは、二つ目……いや、三つ目かな? お菓子に手を伸ばしていて、その顔は心なしか幸せそう。うん、まぁ良い事だけど。


「らしいね。それじゃあ行こっか、パートナーさん」

「え? あの、いえ、ですから、私はまだ〝大鷲そちら〟の事件に関与は出来なくて」


 しどろもどろになるミオナを尻目に、ヴェネは足早に歩き出す。


「はは、細かい事は気にしな~いの!」

「細かくありません! 捜査に無断で加わった事がバレればまた叱責を」


「さぁ、今日も菓子折りご褒美の為に頑張ろ~」

「パートナーなら私の話を聞きなさい、ヴェネ・ミラージュ!」


 叫ぶミオナだが、戸惑いながらも後を追ってくる。相変わらずの律義さだ。


 ホント、似てないなぁ。後頭部をどつかれながらも、ヴェネは意気揚々と〝燕の巣〟から足を踏み出す。新しいパートナーの足音と共に。





              ダーティ・スウィート 七色の闇   終

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ダーティ・スウィート 虹音 ゆいが @asumia

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