104、終幕
「はは、こんな使い方も出来るんだね。凄いよ」
「それはどうも。一応、様々な事態に対応する為に造った銃ですから」
そう言って顔をそらす彼女は、どこか誇らしげというか恥ずかしげというか。ヴェネは改めてリーヴァルをクモの巣の上に置いた。
「ふん、残念だったな。お遊びはここまでだ、〝狂い猫〟」
「まぁ、仕方ないかぁ。さすがにウェレイちゃんが他者転移に目覚めるなんて、想定しようがないしねぇ」
逃げる手段を根こそぎ封じられて動く事すらままならないというのに、リーヴァルの口調は平然としている。その態度に違和感を感じたか、ミオナが〝巻き蜘蛛〟を構えつつ眉間にしわを寄せる。
「……大丈夫だよ、ミオナさん。こう見えてこいつ、かなり神妙にしてるから」
「きゃはっ。さすがヴェネちゃん分かってるねぇ」
「分かりたくはなかった。あと黙れ」
と、ケータイに着信。ウェレイからだ。
『お疲れ。無事……だよね?』
「おかげさまで」
ウェレイは屋上から心配そうにこちらを見ている。手を振って見せると、彼女も手を振り返してくれた。
「あとはエレちゃんやカロン達が人獣を救えているかどうかだけど……まぁ、心配はいらないかな。厳しかったら今頃、鬼のように呼び出されてるだろうし」
『あはは、人気者は辛いねぇ……えと、ありがとね、ヴェネ君』
「へ? いきなりどうしたんですか?」
『そのままの意味。君達のおかげで、あたしは救われたの。感謝してもしきれないよ』
屋上の彼女は、涙を拭ったように見えた。
『いつかお礼するよ。あたしに出来る事なら何でも言ってね』
「何でも、かぁ。じゃあ今度僕とデートでも…………あ、えと、すみません、今の無しで。パートナーさんがクモの巣まみれにしようと僕を狙ってるんで」
『うん、見えてる。お仕事お疲れ様、って伝えといて』
おかしいな。僕を銃で狙う事はどう考えてもパートナーの仕事じゃないはずなのに。悲しい。
『あ、伝えると言えば、リーちゃんにあたしの声が聞こえるようにしてもらっていい?』
「ん? うん、分かった」
ケータイをリーヴァルに近づける。すう、と息を吸い込む音が聞こえた。
『リーちゃん、社長秘書から業務連絡だよ。あんた、クビね』
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