第42話 戦いの後、そして…旅の始まりへ… 下

 「久しぶりだなオレン…いや…オレアシアン…」

 「オレンでいいわぁ~、アイゼンさん…それにぃ…」

 アイゼンの後方から、こちらに向かってくる白衣のモノに目がとまったオレンは、表情強張らせた…。


 「げっ、なんでエイアイがいるの……」

 「飛ばしたのは、軍用ジープだね、オレン。」

 「はははは…ごきげんよう、エイアイさん」

 「まったく、あれ1台しかないと言ったら、盗んでいきましたね。そして……」

 呆れた口調でエイアイがオレンの傍に来て、メガネの向こうの眼差しをオレンへと近づける。


 「はははは…、結果オーライでしょ。あれで、隙が出来たから……」

 「まったく…、君たち姉妹は……」

 「オレン!」

 サーシャの声に救われたオレンは、大きく無邪気な笑みを見せてサーシャを見ると、手を大きく振り、サーシャへと進み始めた。

 その後ろ姿を黙って見ているエイアイの姿が、そこにあった……。


 アサトは、オレンらを見ていると、目の前にアルベルトが腕組みをして進み出した。

 「アルさん…」

 「…ったく…」

 辺りを見渡したアルベルトは、アサトへと視線を向ける。

 「…とりあえず…よくやった…」

 その言葉を言うと、振り返り進み出した。


 その後ろ姿を見ていたアイゼンは小さな笑みを見せる。

 「彼なりの評価だよ。ナガミチの家では、何もできなかった事に腹を立てていたが、あの傷を見たからな…」

 アサトは、歩いているアルベルトの背中を黙ってみていると、その視界にペンダントトップが入って来た。

 その動きに目を見開いたアサトは、差し出しているアイゼンを見る。


 「今日の戦いの戦利品は、これだけだ。これを手に出来るのは、君らだ」

 「え?」

 アイゼンの言葉にクラウトを見ると、小さく頷いていて、その行動にトップを受け取った。


 「これからの旅には必要と思う。そして、これ以外にも入手をする事を心掛けた方がいい。これは…、いずれ君たちを守る物になるから…」

 「はい…」

 返事をしたアサトは、ペンダントトップへと視線を移す、黒みを帯びた赤く透明感のある石は、先ほどまでクレアシアンの胸元にあった石で、彼女を守っていた石、以前、持ったことのある重みがそこにあり、また、アイゼンがとった行動に、石の力を感じ、そして…戦利品の石……。


 アサトは振り返りタイロンへと視線を移した。

 その視線に眉をあげたタイロン。

 そのタイロンへとトップを差し出す。


 「盾持ちには、欲しい石でしょ…」

 アサトの言葉に、頭を掻きながらトップを見ているタイロンは、一度、周りにいる者をみてから、そのトップを手にした。

 「あとから装飾に加えてやるから、どこに付けたいか考えておけ!」

 ポドリアンがニカニカとして言葉をタイロンへとかけると、タイロンは頭をかきながら照れ笑いを浮かべた。


 「それじゃ…、みんな揃ったようね…、ここで私からぁ~」

 オレンがミーシャとサーシャを伴って現れ、しなやかにシスティナへと進んだ。

 インシュアと一緒に来ていたシスティナは目を見開き、一同を見た。


 「フフフ…紹介するわぁ~、彼女は…『』」

 オレンの言葉に頬を赤らめたシスティナを、砦の外にいた者らが、不思議そうな表情を浮べた。

 システィナの隣にいたインシュアが、小さくシスティナの表情を見ている。


 「フフフ…いきなりで、戸惑っている顔…わたしわぁ~スキィ~~」

 上機嫌なオレンは、システィナの胸元にあるペンダントトップを掴むと、優しくシスティナから外した。


 「彼女は誘われた者、その誘いが成功した例の一つ。彼女は…、本物の魔女、『』を持っている…。私たちと同じ感じのなにかを持っていると思われるわぁ~」

 唖然とした表情の一同をみると、小さく妖艶に微笑み言葉を続けた。

 「今から、彼女が、魔女であると言う証拠を見せるわぁ~」

 システィナの手を取ると一緒に、アサトらから離れた場所へ移動して一同へと向いた。


 「この世界で、魔法使いと言われる者らが、トリガーとして使うのは…『なんとかの神よ…』だったわよね…、その呪文自体、偽物の証拠…、強いて言えば、なんか形に当てはまっている言葉…って感じかな…。おじいさんの話しでは、『ドラゴニアの神』とか…『土の神』とか言う言葉は、近い過去に作られた言葉、あなた達が信仰しているイミテウスと言う女神は、ドラゴンの神…って言われているようね…、その神が住んでいる場所がドラゴニア…、だから、ドラゴニアの神なのよね…。この世界には、神を象徴する絵には、ドラゴンが描かれる…、まぁ~、付属して言うと…火を扱うなら…紅蓮の淵…だったかしら…。水は……、忘れたわぁ~」

 オレンは小さく笑みを見せた。


 「とにかく…、どこかに住まわれし…とかと言う言葉を使うでしょ?…、おかしいでしょ?住んだり、いたりで……。なのよね…でも、簡単な話し、なんちゃってな呪文は一言。があればいい。それだけで、どの魔法も発動ができる…石とか、古の遺物とかでね…。」

 オレンは手にしていたトップを見て、小さく笑みを見せて続けた。


 「でも…本当の魔法使いは…、それも古の魔法使いは、本当の呪文を知っている。古では、神が住む場所を…『ヴァルハラ』と言っていた、その場所と神を関連付ける…、この子は…『光の属性』…」

 オレンは、隣で目を小さく丸くしているシスティナを見た。


 「だから…唱えなさい。魔法へのトリガー…『ヴァルハラに住まわれし、光の神よ』と…」

 その言葉にオレンを見たシスティナは、小さく息を呑む、その表情に頷いて見せたオレン。

 「…『ヴァルハラに住まわれし、光の神よ』」


 その言葉に、光がシスティナへと集まり始め、時間を掛けずに、システィナの体に吸収されると、システィナは何かを思い出したように手を上げて、指先をジェンスへとむけると、小さく、文字を描くように動かし始めた…すると…ドサッと言う音を立ててジェンスが倒れ、その傍にタイロンが近付くと目を見開いて一同を見た。

 「…寝てる……」

 「え?」

 アサトだけでない、ほかの者も驚きの表情でジェンスをみると、システィナを見た。

 「わたし…なんで…」

 システィナも驚きの表情でジェンスを見てから、隣のオレンへと視線を移した。


 「フフフ…頭で覚えていた訳じゃないみたいね…体が覚えていた…ってことかしら…今の状況で、証明する為には、これが最適と体が反応したのね…」

 視線を一同に向けたオレンは妖艶な笑みを浮かべた。


 「彼女は魔女…と言っても、人間。流れている血もそう…でも、まれに能力と言う者をそなえて生まれる事があったよう…、彼女は、古で……」


 オレンは、砦でアサトらへと言った事を、推測と言う形で、アイゼンらへと説明をし、それを聞いた者らは、驚嘆の声を小さく出していた。一通り話し終わったオレンは、一同をみると小さく微笑む。


 「彼女らが旅立つまで、彼女の教育は、私がするわぁ~、それに……、その子と、その子も…」


 指さしたところにいたのは、セラと……。

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