第41話 戦いの後、そして…旅の始まりへ… 上
「アサトばかりに、重いモノ背負わせるなよ……」
アサトはタイロンを見ると、上を向いていたタイロンがゆっくりと顔を水平に持ってきて、アサトとオレンを視界に入れた。
「そいつは、どう見ても頼りなさそう…だけどな…。そいつはいつもまっすぐな心を持っている。強くて判断力があって…、常識をわきまえない言葉使いをするのが、リーダーとかヒーローみたいなものなら、…俺はたぶん…ついてはゆかない…。こいつのまっすぐな気持ちにリーダーを感じているんだ。それを…あんたが言っているのは、しっかりしろって言っているようなもんだろう…違うんだよ、俺たちの関係は…。こいつにはこいつのやり方がある。こいつの強さはそこにある…一人で何もできないから、俺たちを頼るんだ。それがリーダー失格って言うなら…一昨日来やがれだ!あんたが言っている事をまともにこいつは受け取る。それが、こいつにとってどれだけの負担になるのかもわからないだろう。俺たちは…8人そろって『チームアサト』だ!、誰を優先的に守るんじゃねぇ~。みんなで旅をして、みんなで強くなって、みんなで守り合って…。さぁ~行こうって時にアブスゲルグがあるんだ!」
「そうだな…」クラウトが近付いて来た。
「ウン!そうだよ…。」ケイティが小さく飛び跳ねて立ち上がる。
「そうね…」アリッサが立ち上がるとセラとシスティナも続く。
「わたしは…自分がどういう人間なのかはわかりません。オレンさん?が言っているような人なのかもしれないけど…、今は、このチームの後方支援のパートを守っている魔法使いです…特別では無いんです…」
「わたしもじゃ…。旅…したいし…、婿に頼まれたから来ただけだ。アサト以外にも、守って貰える…そうそう、オークプリンスは、私を心底守る!」
「なぁ~に言ってんだ。俺が守れって爺さんから言われているだろう!」タイロンの傍で、顔を水平に持ってきたジェンスがセラに声をかけた。
アサトの周りに一同が集まり、座っていたアサトを立たせたシスティナは、アサトの手を掴むとまっすぐと伸ばしてみせ、その上にセラが手を置きアリッサが手を置いた…。
クラウトも恥ずかしいのか、恐る恐る手を置き、もっさりとタイロンとジェンスがいつの間にか現れ、ジェンスが手を置き、タイロンが手を置くと…最後にケイティが手を乗せてニカっとした笑みを見せ、一同が見合い、笑い合う…。
これが…チームアサト…。
「みんな、ありがとう…」
「まてまてまてまて…」と、なぜか…、グンガとガリレオが飛んで来て手を置いた。
「あんたたちぃ!」ケイティが声を荒げるが、「まぁ~まぁまぁ~いいじゃねぇ~かぁ~、俺やって見たかったんだぁ」とニカっと笑うグンガの表情が入り、その隣には、ガリレオとバシャラの姿もあった。
人数が多いせいもあって、体が斜めに手を出している。
そこに…オレンも手を乗せた…。
アサトは一同を見た。
「ぼく…頼りないけど…。」
「今に始まった事じゃねぇ~。そういうつもりでついて来ているんだ!」
タイロンが横やりを入れ、その言葉に女性陣がクスクスと笑う…。
照れたアサトは言葉を続けた…。
「これからの旅は、困難が予想されます。僕も強くなる、みんなも…だから…僕らのペースで進みましょう!」
その言葉に一同が小さく笑みを見せた、そして…。
「じゃ~行きましょう!『アブスゲルグ』へ!」
…と大きな声を上げながら大きく腕を高々に持ち上げたアサト。
その動きに一同が、「おぅ!」と言う声を上げ、一同が力一杯に手を高々に挙げた…。
その手は…本当に高々で…そして…。
いつまでも上がり続けており、誰も手を降ろそうとしない…。
その手を見上げていた一同から、自然に笑い声が上がってきて…、大きくなっていき、砦の外まで聞こえる程の大きさに、いつの間にかなっていた……。
その笑い声を聞いていたアイゼンらも、なぜか自然に笑みを浮かべ合っていたのであった……。
しばらくして、砦からタイロンを先頭にグンガとガリレオ、アサトとジェンス、デシャラの姿が見え、その後方には、アリッサにケイティ、セラとシスティナの姿があり、最後方をクラウトとオレンが進んで来ているのが、砕けたゴーレムの残骸の傍で休んでいるアルベルトらに見えた。
その姿を確認したアルベルトは、ゆっくりと立ち上がると、大きなスライドで駆けだすインシュアの姿があり、そのインシュアの後ろ姿を見ながら、アイゼンとフレシアスが、アサトらへと視線を向け、ミーシャとサーシャが、目じりを下げて見ていた。
ポドリアンとグリフの話し相手をしていたレディGも、動きに気付いて視線を移すと、横になって休んでいるグラッパの傍にいたフレディも立ち上がり視線を向け、その後方から、チャ子が、インシュアの後を追うように駆け出して行った。
近付いてくるインシュアに向かって、笑みを見せたタイロン。
「インサン!」
「あぁ?男には興味ねぇ~、話しかけんな!」
「え?」
呆気にとられた表情になったタイロンを通り過ぎ、そばにいたグンガとガリレオは、インシュアの言葉に爆笑をはじめていた。
インシュアは、システィナへと駆け寄ると、切らしている息を整えながら、しゃがみ、システィナを上から下までじっくりと見始めた。
「大丈夫か?なにも無かったか?あの女、傷だらけだったって言っていたから…」
頬を赤らめたシスティナは、そばにいるセラやケイティ、アリッサを見た。
そのアリッサらは、小さく驚いた表情を見せていたが、アリッサが、なにかに気付いたのか、ケイティの背中を押して進み出し、その動きにセラも動き出した。
「…インサン、恥ずかしいです…。」
「いいんだ、他の奴は、シスちゃんは大丈夫なのか?」
インシュアの言葉に小さくうつむいたシスティナ。
「…はい…、みんな大丈夫です」
「そっか…よかった、良かった…」
小さく頷いているインシュアの姿を、妖艶な笑みを浮かべて通り過ぎるオレンと、メガネのブリッジをあげてみていたクラウトが通り過ぎた。
「ケイティ!セラぁ~、アリッチ!に…シス?」
チャ子が手を振りながら進んでくるのが見える。
…ってか、迎えの目的は女性陣だけ?
アサトの脇を通り過ぎたチャ子は、セラに抱き着いた。
その姿をアリッサとケイティは、大きな笑みを見せて見ていた。
アイゼンらの傍に来るアサトらは、タイロンが盾を置くとポケットからペンダントトップを取りだし、遅れて来たクラウトへと渡した。
アサトは、その傍に立つ。
アイゼンの脇で、グンガとガリレオが、なにやら話していると、大きな笑い声をあげながら来た道を戻り始め、その2人を追うようにデシャラも走り出した姿が見えた。
「お疲れ様」
アイゼンが笑みを見せてアサトらを労うと、クラウトが進み出し、アイゼンへと黒みを帯びた赤く透明感のあるペンダントトップを差し出し、そのトップを受け取ったアイゼンは、じっくりと見ると、そばにいたフレシアスも、トップを覗き込むように見た。
「これが…オーブの破片です」
「うむ」
「ホンとに傷を付けないのか?」
不審そうな表情を見せてフレシアスが言葉にすると、アイゼンが短剣を取りだして持っている手へと当て、素早く動かしたが、そこには…傷がつかない…。
「ほう…」
アイゼンは声を上げると、短剣をフレシアスへと渡し、フレシアスは、短剣の刃を見てから、アイゼンの手へと当て、素早く動かした。
「ほんとだな…。」
納得したように言葉にすると、短剣をアイゼンへと渡した。
「誘いのオーブの破片よぉ~、おねぇ~さんが、おじいさまから盗んだもの。」
妖艶な口調でオレンが現れると、そばにいたフレシアスの表情が緩んだ。
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