第36話 戦況を変える一撃! 下
「待ってぇ~~」と女の声、その声の持ち主は…ミーシャであった。
「お…おぉ~これまたおじさんらを喜ばせるような格好だな!」
ポドリアンが声を上げる。
「お…おぉ~~、またまたミーちゃんにはベストな格好だぁ~」とグリフ。
少し離れてミーシャが走って来た。
その格好は、オレンが言っていた和装の格好である。
黒くまっすぐに落ちている衣に腰には太い布が巻かれ、胸が大きく開いてピンクで鮮やかな下着が見え、袖に位置する部分は長く垂れ下がり、襟は大きく胸の位置まで開けきっていて、金髪の髪は、後頭部の少し脇で串のようなモノでまとめ上げられていた。
何とも
「ミーちゃん!なんだその娼婦みたいな格好!」
グリフの言葉に…「…っちぇぇぇぇぇぇぇぇすと!」と目の前に来た瞬間に大きく飛び跳ね、グリフの顔面目掛けてケリをお見舞いしたミーシャは、そのままポドリアンの傍に立った。
「ミーちゃん…2年も見ない間に、別人になったなみんな」
「ウン。ポッド。みんな強くなった!あれ…見てて。あいつらが倒すわよ!」とゴーレムを見る。
「倒すって…」
蹴られた顔を擦りながらグリフが立ち上がった。と…息を切らして坊主に藁で出来ている腰当をつけたフレディがやって来て、ミーシャの隣にくると、膝に手を当てて、息を切らした呼吸を整えていた。
「おぃ、フレディかぁ?」
「あぁ~、おれは正真正銘のフレディ…だぁ…」
「息の切れ方をみればそうだな…と言うか、お前らなんで…」
「おぉ~い、やるぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ポドリアンがフレディに声をかけている間に、遠くから声が聞こえる。
「デブ髭…説明は後だ…あいつらにあれを討伐させるから…報奨金として金貨10000枚くれ」
「10000枚って…、なんか借金でもしたのか?」
心配そうに訊くポドリアン。
「借金は無いが、あいつらを島流しにする為の船を買う金だ。何重にも……」
「うぉぉぉぉ…行くぞぉ~~」
ゴーレムに突っ込んでゆくグンガ。…と
「…ッチ、ったく面倒なのが来た…」
アルベルトが舌打ちをしながら向かってくるグンガを見ていた。
「おぉ~アル!それにアイゼン!久しぶり…、見てろ、今、そいつをぶっ飛ばしてやる」
「あぁ?」
アルベルトとすれ違ったグンガ、そして…。
「おぉ~い、アル!久しぃ~なぁ~。」
ガリレオが過ぎた、その格好を見たアイゼンは振り返り2人の行動を見守った。
「ミーシャ、体力増強の呪文だ!フレディ!攻撃力を上げる呪文を…そして…どこに居るかわからない土の神よ!俺に力をぉぉぉぉ」
大きな声で叫ぶグンガ!その後ろで……。
「俺にも!そして…ドラゴニアに居るかわからない光の神よ!俺の剣に宿れ!」
ガリレオが背中に背負っている剣を外し高々に上げた。
「了解!」とフレディ。
「いいわぁ」
ミーシャが指を2人に向けると、その指には、銀の指輪があり、その指輪には大きな黄色の石がついていた。
「この指輪に宿いし、光の神よ…力を…、スレスト」とミーシャ。
「この指輪に宿いし、光の神よ…力を…、トレジニア」とフレディが続いて呪文を唱えた。
すると……。
「うぉぉぉぉ来た来た来た来た!ドラゴニアに住んでいる土の神!俺の右腕に宿れ!」
ミーシャとフレディが呪文をとなえると、グンガの体が光に包まれ始め、大きく叫んで呪文を放ったグンガが、右の腕を突き出すと、その言葉にグンガが進んでいる場所の近くにある、岩や土が小さく揺れ始め、浮き出し、右腕に引き寄せられるかのように集まりだすと、その量は、時間を追うごとに増え始めた。
「うぉぉぉぉまだまだまだまだ…もっとこぉぉぉぉぉい!」
グンガの叫びに応えるかのように集まりだした岩や土は、グンガの腕の何倍もの大きさになり、上げていた腕も重いのか、段々と下がり始め、いつしか地面を引きずる程になった。
「あぁ~ミーシャ…まだまだ足りない!もっと力を!!」
その言葉に、小さくため息をついてから、再び呪文を唱えると、引きずっていた腕が光に包まれ、グンガは腕を持ち上げ、地面についているゴーレムの左腕を駆け上がり始めた。
「おぉぉぉぉぉし!これでいい!ドラゴニアに住んでいる土の神!この岩より硬いモノに変われ…そして…なんでも砕ける強い金属となれ!」
叫んだグンガの腕は、ゴツゴツしていた岩の腕が、茶色にどろどろとなり、いびつに変化したのち、黄金に輝く腕に変わった。
そして……。
「うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ石の化け物ぉぉぉぶっとぉべぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ゴーレムの肩に登った瞬間に叫んだグンガは、大きく後ろに右腕を持ち上げてから、勢いをつけてその腕を突き出した…。
その右腕がゴーレムの頬へと当たる、その衝撃波が円を描いて空気を揺さぶったと思った瞬間!
大きな破壊音と共にゴーレムの顔面を砕き、勢いのままに顔もろとも砕ききった!。
「え?」とグリフ。
「マジか!」とポドリアンが口を開けている。
「!」
さすがのアルベルトもその攻撃には眉が引きつっていて、隣のアイゼンも目を大きく見開いている。
ミーシャの隣に、サーシャが近付いてきて小さな笑みを見せた。
砕けた頭と砕けた右腕の石らもろとも投げ出されたグンガは、首から下に光る何かに目が留まった。
「かぁぁぁぁグンガ!俺がぶった切るっていっただろう!」
「まて!ガリレオ!なんかある!あれなんだ?」
「なんだって…なんだ!」
「見てみろ!」
グンガの言葉にガリレオが首辺りから、体の内部を覗き込むと、確かにそこには何かがある…。
「か~~~、いいや。とりあえず…」
それが何かは分からないが、ガリレオは大きく飛び出し、黄金に輝く剣を大きく振りかぶり…
「ったぁぁぁぁぎぃぃぃぃるぅぅぅ」
大きく威勢の良い声を上げながら光に向かって落下し、その光る何かへと刃を振り出した…その瞬間!
手応えはなかったが、確かに斬れている、真っ二つになった光から、神々しい程の光が漏れ始めると、その光の量が増し…そして…一瞬の閃光を辺り一面に放った後に、大きな爆音と爆風を伴った爆発を起こした。
その場を爆心地の中心として、爆風は優に100メートル程の円を描いた。
近くにいた者らは、その爆風に飲み込まれ、爆煙と土煙に巻き込まれながら、各々が思い思いの状態で飛ばされた。
しばらくして、静寂が辺りを包み込み始めると、カラカラと小石が転がる音と細かな石が降り注ぐ音、そして、立ちあがる音やひそひそと話す音、咳き込む音が覆いだし、その中で、小さく笑う声が聞こえていた。
「なぁ~グンガ。おめぇ~すげぇ~な…」
「いや~、頭取ったけど、最後に狩ったのはおめぇだな…」
「まぁ~な…」
「なんか…おもしれぇ~な。この力…」
「あぁ~そうだな…」
爆風が止み、爆炎や土煙が収まり始めた中心で、グンガとガリレオが大の字をかいて横になり、なぜか笑っていた…。
その風景を見ていたクレアシアンの目は細く、眉間に深い皺が入っていた……。
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