第11話 『七王国の話し』 上

 話は、数年前に遡る…。


 国王『ロバート・バラシオン』の死去により、七王国の『』を巡って、『ウェスタロス』大陸では内戦が起こっている。


 北部を統括している『エダード・スターク』が、『ロバート・バラシオン』王の『王の手』…。

 『王の手』とは、七王国の中で最も強力な権威と、責任においては王に次ぐ役職であり、小評議会の一員で、君主がいないときに、王の代理人として評議会の会議を導く地位にある。

 その王の手に指名されると、『ロバート・バラシオン』の元に、長女の『サンサ・スターク』と、次女の『アリア・スターク』の2人と王都へと向かった。

 また、『落とし子』である、『ジョン・スノウ』は、北の壁を守る冥夜の守人ナイツウォッチになり、北の壁に身を収めた…。

 『落とし子』とは、正妻とは違う、女性との間に生まれた子の事を言う。

 長男の『ロブ』と次男『ブラン』、三男『リコン』は、北部に母と残っていたようである。


 『エダード・スターク』の娘は、次期国王の『ジョフリー・バラシオン』の妃となる事になっていたようである。

 旧友だった、『エダード・スターク』と『ロバート・バラシオン』の間で決めた話であり、この事で、お互いが、より深い繋がりを持てる事になると信じていたようであった。

 また、『ジョフリー・バラシオン』と『サンサ・スターク』は、お互いを気に入り、仲も良好になっていたようである。


 ただ…。


 『ロバート・バラシオン』が狩りに出て、不慮の事故に合うと、『ウェスタロス』大陸では、不穏な空気に包まれた。

 息子である『ジョフリー・バラシオン』を次の王として掲げる派閥と、『ロバート・バラシオン』の弟『スタニス・バラシオン』を掲げる派閥が、『キングス・ランディング』の王の間で合い間見合い、そして、『スタニス・バラシオン』派が、『ジョフリー・バラシオン』派に拘束された。

 その『スタニス・バラシオン』派にいたのが、王の手である『エダード・スターク』である。


 『ジョフリー・バラシオン』は、側近や母である『サーセイ』の忠告により、『エダード・スターク』に恩赦を与える為に、北部に使者を出し、長男である『ロブ・スターク』の王都訪問と永遠なる忠誠を、妹である『サンサ』の手紙にて書き示させて送ったのである。

 その手紙を読んだ『ロブ・スターク』は、北部に所在する領主の軍を募り、王都へと、『エダード』、『サンサ』、そして『アリア』を救出する為に、進軍を始めた。


 その最中、『エダード』が王への忠誠を誓う事を了承し、公開にて、王への慈悲を嘆願する場を用意した『サーセイ』らは、『ジョフリー』に“決して、傷をつけてはならない”と口を酸っぱくさせる程言い聞かしていた。

 それもそうである。『ウェスタロス』大陸北部は、『ウェスタロス』大陸でも重要な拠点であり、近辺の国々での争い等が発生した場合には、いち早く、参戦してくれる地方である。

 強固な信頼関係を続ける為には、手は出してはいけないのであった。


 だが…。


 『サーセイ』は反逆の罪で『エダード』を収監し、恩赦による〈壁〉への追放の用意をする。しかし、『サーセイ』と宮廷の意図に反し、新王『ジェフリー』は気まぐれを起こして、公開の場で『エダード』を斬首させたのであった。


 ティリオンは、酔っているのか、面白いように口が滑っていた。彼の話は続く…。


 ティリオンは、『ウインターフェル』より、壁を視察してきた帰りに北部にある村にて拘束されたようである。


 『ロバート・バラシオン』が北部の城『ウインターフェル』に、『エダード・スターク』の王の手就任の任を与えに行った時に同行し、滞在したが、王都へ帰る前に、北に位置する壁の頂からしょうべんをしたいと思ったらしい。

 その足で、壁の視察をし、帰途に就いている時であった。


 『ロバート・バラシオン』一行が滞在していた時に、その領主『エダード・スターク』の次男『ブラン・スターク』が事故に合い、下半身不随となった。

 その事故現場にあったブロンドの髪が、『ラニスター』家が関わっていると思った、母親の『キャトリン・スターク』が、交渉をするつもりでティリオンを拘束したのである。

 ほかにも…、前の王の手である『ジョン・アリン』を殺害したのが、『ラニスター』家の陰謀…と、彼女の元に、妹の『ライサ・アリン』から、手紙が送られてきていたのであったようだ……。


 ティリオンを拘束した『キャトリン・スターク』は、『高巣城』に住む『ジョン・アリン』の妻。『ライサ・アリン』の元に向かう事にした。

 そこで、『ライサ・アリン』の唯一の子、『ロビン・アリン』。

 病弱で弱々しい6歳の男の子であり、『高巣城』でかつアリンの谷間の守護者。

 てんかんのような症状を示す病気に苦しみ、心も体も発育が遅れており、乳離れさえしていない子の思い付きで殺されそうになったティリオンは、決闘裁判を申し出る。

 決闘裁判とは…、文字通り、戦いに勝った者が罪を決められると言う事である。


 『高巣城』とは、切り立った山の上にそびえる城である。

 謁見の間には、月の扉と言う、開閉式の床があり、その床が開くと、眼下には数百メートル下に地上が見えていた。

 その謁見の間で、ティリオンは決闘裁判を行う事になるが、『ライサ・アリン』は、軍の志願者を立てた。

 それに異議を唱えたティリオンは、自分の代理に兄の『ジェイミー・ラニスター』を立てると言うが、却下された。

 なら…彼が戦うしかないが…、この見てくれである、剣も扱う事は出来ないし、戦闘の訓練もしたことがそんなに無い…そして…。


 ちいさく手を広げておどけるティリオン…。


 彼は代理を募ると、『ブロン』と言う戦いに長けた傭兵が現れた。

 痩せて、狼のような外見を持ち、乾いたユーモアと、非道徳的ではあるが実際的な哲学の持ち主である。


 『キャトリン・スターク』が、旅籠で居合わせた全ての男に、息子の暗殺未遂の罪で『ティリオン・ラニスター』の逮捕に協力することを求めたとき、その場に居合わせていた。

 ティリオンを〈アリンの谷間〉の高巣城に護送する手伝いをするが、決闘裁判では、報酬を期待してティリオンの擁護者となったのである。


 彼の活躍で無罪放免になったティリオンは、王都『キングス・ランディング』への帰途の途中で山賊に包囲されたが、うまく味方につけた。

 進軍する北部の軍を相手に立ち上がっていた、父の率いる軍が近くにいる事を聞きつけると、その場所に向かったが…、父である『タイウィン・ラニスター』に駒のように扱われ、戦場では、前衛を任せられ、そして…死ぬことを強要された…。


 それが『ラニスター』家である…。


 だが、強運なテリオンは、生き残り、『タイウィン・ラニスター』の前に立つと、父は思ってもいなかった事を口にする…。

 それは、“わたしのかわりに王の手をやってくれ、私が王都に戻るまで、お前がジョフリーの王の手だ!”と…。


 ティリオンは、手にしていたカップを飲み干すと、大きくカップを上げて振り、お代わりを催促した。

 ティリオンの話しは続く…。


 彼が王都『キングズ・ランディング』に着いた頃には、『エダード・スターク』の娘、『サンサ・スターク』は心身ともに疲れていた…。

 見るも可哀そうな状況のようであった。

 ティリオンは、彼女を淑女のように扱った、それは、状況が悪くても、いつかは妃であり、またどんな星の元に産まれても、彼女は女性であるからだ…。

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