第5話 襲撃者



 聖堂院を占拠されるなんて誰が予想できたんだよ。

 俺達の通っている学校は、今は無法者共の巣窟になっていた。


 人質になってしまったクラスメイトは大丈夫だろうか。

 あと、あいつも。


 俺は授業をさぼってたから、あいつ等には見つかってないけど。

 時間の問題だ。


 屋上でさぼってた幸運なんてすぐに尽きちまうに決まってる。

 それまでに何とかここから逃げ出さないと。


 でも、本当にそれでいいのか?

 俺だけ逃げ出して良いのか。

 だってまだ、クラスメイトもあいつらもこの学校の中にいるのに。


「くそったれ。俺が行ったところで何にもならないだろ」


 俺は、特別な力も持たないただの落ちこぼれだ。

 武器を持った乱暴者に、勝てるわけがない。


 拳を握りしめていると、足音が近づいてきた。

 人の声もする。


「本当に聞こえたのか?」

「ああ、声が聞こえたぞ。そこに誰かいるのか」


 まずい。

 と思ったけれど遅かった。


 銃を持った奴らがこっちに向けて走って来る所だった。


「おい、そこで何をしている」


 まずいまずいまずい。

 どうしよう。

 今から連中の前に出てって、無事でいられるのか。


 難癖付けられて、殺されるのが落ちじゃないのか。


 逃げるべきか大人しくしているべきか、判断につかないでいると。

 唐突に上空から何かが降って来た。


「ええっ!」

「な、誰だ一体!」

「何者だ!」


 それは人だった。

 しかも、華奢な少女だ。


 重力を無視しているかのように、ふわりと降り立った少女は、艶然と微笑みながら口を開く。


 少女の顔には、見覚えがある。

 いや、むしろ知らない方がおかしいだろう。

 きっと、荒れくれ者達もその可能性に気が付いているはずだ。


 でも、一体なぜ。

 こんなただの学校に?


「この国にいて私を知らない人がいるなんて、驚いたわ。聖女って言えば、分かるかしら」


 そんな聖女は、そうやって自信たっぷりに口を開いた後で、こっちを見て「もう大丈夫よ。だから安心なさい」と微笑んだ。

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メガネをかけたフクロウ 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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