第13話 カモさんチームはATMに向かってください
親父との会話から、大人としての責任をもってマリと向き合おうとは考えたものの。
実際のとこ何が変わったわけでもなかった。
……ぶっちゃけ責任って言葉の意味、本当のところよくわかんねえんだよな。
責任ってなんだよ(哲学)。何をしたら責任取ったことになるのか。
基本的に人に押し付けるか押し付けられるシーンでしか登場しない言葉だったしなー。
他の大人はみんな理解して生きてるもんなのか。
無責任な人間になりたくないという思いはあるけどさ。
具体的にこのようなことをして責任を全うしようという考えが全く浮かばない。
今の俺の状態じゃ、著名人の無責任な言動に対してTwitterで、
"責任感というものが全く感じられない。日本はどうなってしまうのか……"とかクソリプで物申すくらいのことしかできそうにない。
「あ、ウツミさん!こっちです!
おおー、マリちゃんも来てくれたんだ!嬉しいな!」
幹線道路沿いの大手ファミリーレストラン。
入店したところで、奥の席にいるオサム君に呼び掛けられる。
相変わらずイケメンだな。ガタイもさらに良くなってないか?
あの爽やかな雰囲気、一生纏える気がしない。
彼なんかはどうなんだろ。
責任って言葉の意味、言葉ではなく心で理解できてたりするのかしら。
30歳が19歳に思うことじゃないんだろうけどさ。
今後、ちょっとその辺の視点も持ちつつ、周囲の人を観察していってみようかな。
何か学べることとかあるかもしれない。
てかやべえ、もうほぼメンツ揃ってるじゃん。
俺らが最後か。駐車場の止めた位置が店から遠かったとか言い訳しようかな。
富山の飲食店って駐車場広すぎてビビるよね。
店の数倍とかザラにある。
遠いとこに止めちゃうと、雨の日とか車にたどり着くまでにビシャビシャになるわ。
「そこが開いてるんで座ってください!
マリちゃんの分、今椅子貰ってきますね」
「いいよ。私すぐ帰るし」
「そんなこと言うなよマリ。
ああ、ここの椅子使っちゃおう。マリはソファー座りな。
タナカさん、そこ荷物置いて大丈夫ですか?」
わやわやと席に着く。
メンツは8人か。
俺、マリ、オサム君、タナカさんまではいいとして、アニメオタクのおっさんと男子高校生のコンビ、70代くらいのおじいちゃん、さらにヤンキーのサワタリ君までいた。
意外なメンツだな。後半はあんまり話したこともない人たちだ。
"濃いメンツと呑みました!色々とぶっ飛んだ話も聞けて貴重な時間でした!この出会いに感謝!"とか意識高いコメントを集合写真とともにTwitterに挙げそうになる。
そこでTwitterが出てくるところが最高に意識低くていいよね。インスタグラムとかやってないからよくわかんねえんだよな。
「全員揃ったな。じゃあ俺は帰るからな。
約束通り今日の稼ぎは全部俺のもんだからな、クソ爺ぃ」
「ほっほっほ。まあよかろう。
次は他の者とももっと仲良くするようにの、ケンジ」
「ケッ……誰が!」
「
集合とともに離脱したのはサワタリ君だ。
その行動の意味も分からないが、そもそも彼がここに参加していることが意外だ。
「ほっほっほ。すまんの、みんな。
あやつを少しずつでも皆に歩み寄らせたくて、無理やり連れてきてしもうた。
不快にさせたなら申し訳ない」
「いえいえ、全然大丈夫ですよモキチさん!
俺も彼と仲良くしたいんで!みんなもそうですよね!?」
おじいちゃんとオサム君が盛り上がっている。
このおじいちゃん、サワタリ君と仲いいのか?
ちょっと状況がつかめないけど、適当に「いや本当全然大丈夫ですよーむしろちょっとでも会えて嬉しかったですー」とか一ミリも思ってないこと言ってる俺ガイル。
俺ガイル最終巻いつ出るんだろうな。
このおじいちゃんは、遠藤 茂吉さんだったかな。
モキチさんと呼ぶことにしよう。
「さあ!何はともあれ、今日はみんな来てくれてありがとうございます!
折角の同期のよしみなんで、ちょいちょいこうやって集まっていけたらなーなんて思ってます。
あ、僕らもうドリンクバーとか頼んでるんで、ウツミさん達も適当に頼んじゃってくださいね」
オサム君の言う通りに、ドリンクバー二つとフライドポテトを注文した。
マリは、自分はすぐ帰るからとノー注文で済まそうとしたが。
いいよ、そのくらい俺が出すから。
「やあ、ウツミ君。ひさしぶり」
「どもっす、タナカさん。
ていうか、結構痩せましたね。体調大丈夫っすか」
「ははは、貧乏暇なしだよ。冒険者で稼ごうと思ったら大変だ」
タナカさんもマンションいい値段で売ってるはずだし、そんなにキツいとは思えないけど。
ああでもこの人、前職並に稼ごうとか思ってるのかな?
いやいや無理でしょ。
前の仕事ならベテランの域だったろうけど、冒険者としては初心者なんだから。
それを仕事の量でカバーしようとすると、どこかで無理が来る。
身体に"魔素"が慣れるまでは時間がかかるっていう。
今は軽めに働いて、徐々にレベル上げつつ労働時間増やしたほうがいいんじゃない?
あーでも、俺の場合はマリという名のチートがあるからな。
ちょっと感覚違うかもしれない。
「あ、そういやこないだガチャやってましたよね。
どうすか、引きのほうは。」
「ん……大丈夫。
いや全然全然。大丈夫、全然大丈夫。
まあ微課金だしね。実質無課金の範疇かも。
そこそこいいの引けてるしね。収支トントンか、ちょいマイナスくらいかな?
まああのエンタメ感も楽しめてるし、トータル得してると思うよ。
他に金かかる趣味もないしね。それやってると思えばむしろ節約できてるぐらいなんじゃないかな」
どうやらかなり危険な領域まで浸かっているようだ。
この早口が何よりの証拠。
どうすか?って聞かれて大丈夫って答えてるとこが最高に大丈夫じゃない。
ガチャ厨って金銭感覚イカれてるから信じられないような金額を微課金呼ばわりしてくるんだよな。
収支トントンだのエンタメ込みでトータル得してるとか他の趣味のほうが金かかるとかはパチンカーの常套句だ。
ちょっとこの人に金は貸せないなー。
俺さ、ガールズ&パンツァーってアニメが大好きなんだけどさ。
周りにアニメわかる人少なくて、昔たまたまわかる人に会えたと思ったらその人パチから入った人でさ。
相当飲まれてトラウマ作ってるの知らずにめっ早で語ってたら色々地雷踏んで手を焼いたわ。
カモさんチームはATMに向かってくださいとか言ったらスゲーキレられた。やだやだ、心が狭いね。
そんな感じでわいわいと歓談し。
注文した品も適当につまみつつ。
場が暖まってきたところで、オサム君が全員に切り出した。
「あー、宴もたけなわではありますが。
ちょっと注目、いいかな。
実は皆さんに聞いてみたいことがあって」
全員が会話を止めてオサム君に向き直る。
「よかったら、みんなが冒険者を始めた理由を教えてくれないかな。
動機とか、目標とか、きっかけとか。
もし嫌じゃなかったら、俺から順番に話していきたいんだけど」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます