第25話 学校検尿、大事です。
世間はコロナで大騒ぎですが、当たり前ですが病気はコロナだけではありません。
もうすぐ新学期。健康診断の時期です。
その前にご一読ください。
今回はネフローゼ。小児の腎機能障害のお話です。
◇ ◇ ◇ ◇
今回は記念すべきスタローン・ゆきのが三途の川を見た第一回目の病気についてです。
↑三途の川ツアー、一体何回逝ってるんですか……(涙)
入学、進学、就職などで健康診断をしますね。その際にほとんど必ず尿検査をすると思います。
スタローンは7歳児検診のときに、その結果が出た瞬間親が呼ばれ、そのまま病院に直行し、そのまま入院しました。
こんなのスタローンらしくもないし面白みもない……!
↑スタローンらしさも面白みもいらないから――!
しかしそこで両親は「治療というより余命を気にする段階です」と言われたそうです。
よし、スタローンぽくなってきた。
↑ユキノさ――ん!スタローンだって七歳の時は「スタローン」じゃなかったと思うよ――!
そのあと私は主治医となるドクターに「治したいなら大人でもつらいと投げだす大人用の治療しかないけど、そのつらさを頑張って我慢しても治る保証はない。できるかな?」とものすごくスタローンぽいことを聞かれました。
もちろん即答。
「はい」
です。
↑七歳の時からオトコマエだったんですね。はい。その辺は分かってましたけどね。
理由は単純に「そんな宣告される自分がなんかかっこよかった」からです。アホというのは時折なにより強いです。
さてここまで引っ張ってきましたが、私が病院に強制収容されたのは 尿 蛋 白 が 5+ だったからでした(朝樹さん解説お願いします!あとうろ覚えなので5プラなんかないよ!と思ったらツッコんでください)
↑はいはい、やっと出番~
5+なんて見たことないんですけど、そこは病院の検査機器によって違います。そもそも5+まで出さなくても3+以上になれば尿中蛋白の測定をするので、そこまでの精度はいらないのです。
ちなみにそこまで私は一切自覚症状は出ていませんでした。
ええ、三途の川に極限まで近づいても自覚症状は軽いむくみくらいのことがあるんです。尿毒症のように食欲もなくならないし、体力も落ちません。
腎臓病、特にネフローゼ(これも朝樹さん説明お願いしますー)は。
↑はい。糖尿病の時に、病名に反して尿に糖が出たら結構進行していると言うお話はしたと思います。タンパクの方もそうです。少々のタンパク尿くらいでは自覚症状は出ません。小児なら特に。
けれど腎臓、されど腎臓。体の中の汚いものを濾過して外に出してくれる大事な臓器です。
その臓器の動きが悪くなると体の中には不要な汚染物質が溜まり、最終的には死に至ります。肝臓と同じですね。
私は腎臓がほぼ機能停止し汚染物質が溜まりまくり、三途の川が手招きしている状態でした。
なので、健康診断で蛋白1+が出た人は「自覚症状ないしー」などとは思わず、腎臓専門医を一度訪れてください。お子様なら親御さんが医院に連れて行ってあげてください。(±の場合の解説は朝樹さんにお任せします!)
↑±は弱陽性、または偽陽性と言われ、発熱や激しい運動後、ストレスなどが原因の場合や、尿試験紙自体の劣化、薬剤による偽反応の場合があります。この場合も再度病院で検査してもらった方が良いです。体質的にずっと偽陽性が出る人もいますし、病的でない場合も多いですが、病気だった場合早い治療介入が出来ます。
極度の疲労や高熱のあとは一時的に蛋白が多めに出る場合もあるので、そういった偶然か病気か様子見する程度か鑑別してもらえます。
いまは人工透析を行う医院も増えているので、最初に総合病院に行かなくても腎臓専門医のいる街のお医者さんが見つかるはずです。
とは言っても自覚症状がないとなかなかお仕事などを休みづらいという方もいるでしょう。なので私が味わったスタローン的地獄を書きます。イメージはランボー2でランボーが受けた拷問です。
恐らく、透析導入しないための主治医の必死の方針だったのでしょうが……。
・塩分は茹でこぼし分も含めて1日1.2gまで。カロリーは1200キロカロリーまで。つまり、ほとんどの物に味がありません。カリウム摂取も蛋白量制限も厳しかったため、ほぼ3食、「茹でたピーマンに鰹節をかけただけのもの、ちょびっと白いご飯、ちょびっと薄味のお味噌汁」でした。
・厳しい水分制限。お味噌汁以外に飲んでいいのは1日500mlまで。歯磨きや洗顔のときに隠れて飲まないように看護師さんが隣で監視をしています。
・輸液ポンプによる三か月間、24時間ぶっ続けの持続点滴。普通のガラガラ引きずる点滴とは違うので、お手洗いに行くのにもナースコールをしなければいけません。
・体の免疫機能が暴走して腎臓を傷つけているので点滴と服薬で極限まで免疫機能を落とします。私は副腎皮質機能喪失(説明お願いしますー)しました。(現在は回復しています)
↑……このネタだけで一本書けそうなくらい難しい事を……
ステロイドパルスと言って、ステロイドの大量療法の後、自分の副腎が機能しなくなる状態ではないでしょうか?ステロイドは普通自分の副腎が作り出します。それを外から大量に点滴などで入れると、副腎が「あ、俺作らなくて良いや~」とニート化することがあります。他にも原因もあるし書きだしたらきりがないのでこの辺で。
・腎臓の状態がよくなったら今度は年単位で免疫抑制剤を少しずつ抜いて、免疫機能を回復させていきます。その間は各種感染症に注意し、生ワクチンの予防接種ができない場合もあります。
四か月入院して退院してから、これを10年です。
↑小児の十年は長いです。
この期間免疫抑制剤を飲みながら、感染と戦いながら10年。
スタローンユキノはこうやって作られたのですね……。
もちろん状態がよくなれば食事制限やその他の制限は少しずつ解かれていきますが、それでも毎日測定する蛋白量に一喜一憂したり、週に一度の通院は精神的な負担になりました。
しかも、腎臓系の病気って自己免疫疾患であることが多いため、「完治」という概念がほぼないんです。
「寛解(全治とまでは言えないが、病状が治まっておだやかであること:グーグル辞書より)」というのを目指して治療するんです。
ただ、初期に適切な治療を受ければ寛解に持って行ける期間も短くなりますし、寛解のまま再発せず「完治」になる人もいます。
私はラッキーなことに今はまだ「完治群」に入っています。
ですから!繰り返しになりますが!
「自覚症状がないから……」
「数字が小さいから……」
なんて理由で先送りせず、尿検査で異常が出たらできるだけ早く専門医を受診して下さいね。
以前にも朝樹さんが解説してくれましたが、寛解にも持って行けずもうどうしようもない場合は「人工透析」という機械に腎臓の働きを代替してもらう方法しかありません。
それがいかに体に負担をかけるかも朝樹さんが糖尿病の項目で説明してくれた通りです。
治療はいつかは終わる可能性が高いです。
けれど透析導入をしたら腎臓移植するまで終わりません……。
最後に。
スタローン・ゆきのの異常な病院嫌いと点滴嫌いはこの体験から来ているとはっきり言い切れます。
あんな目にあうくらいならデブリ(デブリ:感染・壊死組織を除去し創をきれいにして、他の組織への影響を防ぐ外科処置のこと。「切開」を意味する debridement から)くらい自分でします。腐った肉がなんぼのもんじゃです。
これだけは朝樹さんにジャーマンスープレックスを食らっても譲れません。
◇ ◇ ◇ ◇
えー、朝樹にジャーマンスープレックスのスキルは持ち合わせていないのですが、もうちょっと病院に対する敷居を低くしてくれることを願ってやみません。
と言うことでネフローゼ!
朝樹の中でネフローゼと言えば、入院している小学生の安静を守らせるのに苦労した記憶とか、薬を飲ませるのに苦労した記憶とか、血圧を測らせてくれない小児に切れかけた記憶とか……。
涙なくして語れない死闘の日々が思い出されますが、みんな見かけは元気でした。きっとゆきのさんもそうだったのでしょう。
しかし小児は特に見かけとデータが合わない事なんてザラです。
治療はとりあえずステロイドパルス。が一番多いのではないでしょうか?
最近はプレドニンを長々飲まずに免疫抑制剤一剤に切り替えていくのが主流みたいですね。
鬼の様な水分制限も(超急性期はともかく)緩和されてきているようです。安静も昔ほどうるさく言わないようですね。
ただ、このネフローゼ。再発しやすいのです。
なので定期受診は必ず必要ですし、内服は長期になります。
でも、このステロイドパルスが効かない抵抗性ネフローゼと言うものもあります。こっちはもっと厄介です。免疫抑制剤を多剤同時に使うとか色々考えなければいけません。
ですが、ゆきのさんが言う通り、最近の小児のネフローゼは完治群に入る率が上がっているんです。
なので、検尿でタンパクが出たら早めに受診しましょう!
…………それにしてもゆきのさん。
初三途の川ツアーが七歳とか…………
検診、大事です。
(監修:朝樹さん)
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