第13話 入れるの一日、消すの一生「刺青」
今回はゆきのさんの幅広い知識のおすそ分けですv
ほんっとに何でそんなに詳しいのでしょうか?
この話は元傭兵、では説明がつきません。
不思議で面白い人ですよね~ゆきのさん。
◇ ◇ ◇
ことの始まりはツイッターで唐突に朝樹さんに聞かれたことでした。
『刺青ってきれいに消えますか?』
……なぜその質問をする人選をレディな私に?!と思いつつも、むかし病弱だったため、名前と血液型と既往症を腰に彫ろうと真剣に考えていたことがある私は真剣にお答えしました。
↑や― だって何となくゆきのさんなら何でも知ってるような気がしたんですよ~
実際知ってましたし。
しかも私が驚く位詳しく(笑)
この手の質問は夜間の救急外来に電話相談でかかってくるのです。
何故夜間救急に??って感じですが、夜になると不安になるんでしょうかね?
しかし私の勤める三次救急の病院は美容整形等は扱っているはずもなく・・・
ぶっちゃけ全然分からないのです(汗)
以下、刺青、タトゥーは気軽に入れない方がいい、というお話です。
まず、よく刺青消しの手段として取り上げられるレーザー。
あれはかなり長期にわたって根気よく照射し続けたとしても、何もなかったようなまっさらな色の皮膚に戻ることはほとんどありません。
濃い色の模様が薄くなる、と言った感じです。
レーザーは黒色に最もよく反応し、他の色には反応しづらいため、このような現象が起きます。
特に絢爛たる色の洪水の和彫りなどには効きづらいです。また、彫りの深さでも効果は変わります。彫りの浅い刺青ほど薄くなりやすいです。
なので、ワンポイント程度なら刺青された部分の切除を勧めるドクターも多いでしょう。
……切除です。誤植ではありません。完璧に消すにはそれしかないんです。
刺青が入っている箇所を切り取り、縫い合わせます。
傷痕が残ることが多いですが、切除跡なら「事故にあった」「うっかり切った」等、いくらでも言い訳がきくと言うことでこれを選ぶ人は多いです。
少し大きめの刺青の場合、エキスパンダーという器具を皮下に埋め込み、皮膚を伸ばして切除する場合もあります。一度で済む場合もありますが、伸ばしては切り、伸ばしては切り、となるとかなり根気がいる場合もあります。
また、これも、サイズによっては限界があります。
ドクターによりますが「この大きさ以上は伸ばし切れないので無理です」という境界線が確実に存在します。
背中一杯に彫った彫り物などは切除はほぼ不可能と言っていいでしょう。
他に、刺青を入れた部位によっても「切除は無理」は存在します。
まずおそらくどこのドクターでも「無理」と判断されると思われるのが首です。
血管、神経が集中し、皮膚も薄く伸びが期待しづらく…あとは朝樹さん任せた!
↑任されました!
終わりにまとめて解説します。
次に切除が難しいと言われているのがスネ。これはなぜかわからないので、もし、朝樹さん、「こういう理由かな……」というのがあったらお願いします。
↑こっちも任されました!
こう言う解説なら得意です。
このように、刺青、タトゥーは
『入れるの一日、消すの一生』
です。
中には、消せないことに悲観して、刺青の部位を燃やすような人もいます。
火傷の跡の方が言い訳がきいて同情してもらえる分まだマシという理由です。
そのくらいのものなので、入れるときは本当によーく考えてくださいね。
あのBzの稲葉さんですら、刺青が理由で健康ランドを門前払いされました。
あなたの今後の人生での、社員旅行、子供とのプール、彼女と行く温泉、普通の就職、結婚、そんなものを大金をかけた刺青・タトゥーが邪魔するかもしれません。
特に年少リングやギャングスター(わからない人はわからないままでいてください)を入れようかな、なんてつい考えちゃう世代の方、なるべく!考え直してください!隠しようがありません。手袋をつけ続けて生きていける職業はありません。
アートメイクも刺青の一種です。
これは普通の刺青やタトゥーより浅く入れることが多いため、時間がたつと青く褪色していくことが多いです。
アートメイクは『メイク』という名前がついていても、アイライナーやアイブロウのようにクレンジングでは落とせないこと、色が変わることもあること、それらを念頭に置いていただければ幸いです。
◇ ◇ ◇
と言うことでした。
夜の救急外来にはいろんな相談の電話がかかってきます。
でも救急車の対応をしながらでは、ゆっくり話を聞くことが出来ないことも多いです。
だけど、夜中にそんな電話をしてくるって、よっぽど悩んでいるんだと思うんですよ。
刺青って、そんなに悩まないといけなくなるんですね……
これって、自分の判断で「彫らない」って選択ができるものなので、本当によーく考えて下さいませ。
それで、首に彫らない理由ですが、こっちは簡単です。
首の先には人間の最重要臓器があるからです。
万が一何かあったら脳に障害がでます。
首にある血管は、もし変に刺して血栓が飛べば脳梗塞です。
出血させれば脳出血… そこまで行かなくても麻痺など出れば大事でしょう。
それに首から出ている神経系は上半身のほとんどをカバーしています。
無暗に触ったらこっちも大事です。
首に彫り物を入れる人も少ないでしょうし、消してくれるところはもっと少ないでしょう。
スネの方は、単純に技術的に難しいからだと思われます。
ここは皮膚の下の筋層も薄く、その下はすぐに骨です。
皮膚は寄せにくく、寄せても
彫る時は骨にあたれば感染の元になりますし、消す時は皮膚を切開すれば寄せにくく開きやすい。
あまり手を出したくない場所でしょう。
……余談になりますが、今回朝樹が転んでざっくり行ったのもスネの下の方、足首近くでした。
抜糸までに二週間以上の時間を取ったのに、傷は一部離開しております……(涙)
不良肉芽がしっかりできてしまったので自力でデブリ(デブリートメント/不良肉芽を切開すること)しております。
……良い子はまねをしないでください。
朝樹は医療用の道具と薬を持っていますので出来たのです。ゆきのさんのように家庭用のはさみとカッターでやったのではありません。
※1章の火傷の処置参照
その位、スネの傷って厄介なんですよ。
ついでなので夜中の救急外来へ掛ってきた電話相談で、印象的な物をご紹介。
「妻と娘が喧嘩をして収拾がつかない。つかみ合いになっていてこのままでは怪我人が出る何とかしてほしい」
……無理です。
警察を呼んで下さい。
「精神科にかかっている子供が暴れている。何とかしてほしい」
……受診して下されば何とかなるかもしれませんが、家にいる状況ではどうしようもありません~。
救急隊にバックボード(固い担架)に固定して搬送してもらいました。
「うちの子が腹が痛いって言ってるんだが」
「いくつのお子さんですか?」
「子供なんか使ってないわ!(激怒)」
どうやら風俗の経営者さんだったらしい。「うちの子」って言ったじゃないですか―。
……枚挙にいとまがありません。
どうしても困ったら電話相談は構わないのですが。救急対応してるんだな―と言う雰囲気があったら、時間を置いてかけ直していただけると丁寧な対応ができるかもしれません。
基本は「救急」外来なので、朝まで待てない救急事例が対象です。
電話する時は、ちょっと気にして下さるとありがたいですm(_ _)m
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