第11話 屋外での転倒
今回は朝樹の体験談に、ユキノさんの突っ込みですv
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今回は待望の、私が朝樹さんの体験談にツッコミを入れる回です!
朝樹さんだって結構めちゃくちゃやっとるんやないかい……と先生に叱られてばかりの子供がアホな仕返しを思いついたときのようににやけております。
以下、朝樹さんもなかなかやりおる……というお話です。
※※※
日頃ゆきのさんの武勇伝に突っ込みまくっている朝樹ですが、まさか自分が同じような目になる日が来るなんて思いもしませんでした。←だから私は軍事マニュアルを愛読しているのです。世間は「嘘でしょ?!」に溢れています。
御存知の方もおられると思いますが、朝樹は難病持ちで沢山の薬を飲んでおります。それ自体はまぁエッセイ一本のネタになったな、程度の事だったのですが……。
なかなか症状の方が改善せず、元々短気な朝樹は思い余って「よし。湯治に行こう」などとアホなことを言いだしました。
どうせ行くなら泉質の良い所が良い。
観光ができればなおいい。
ご飯がおいしければもっと良い。←うんうん。わかるわかる。
そんなわがままな湯治志望客が選んだのは、おんせん県おおいたの別府、
湧泉量・源泉数とも日本一で、泉質は全部で7種類。別府市全体では10種類もあり、隣同士の旅館でも泉質が違うため、いろんな旅館の温泉を巡ることが出来るらしい。
しかも昔からの湯治場としても有名で、湯治宿には「地獄蒸し」と言う温泉の蒸気を使った料理を宿泊客は勝手に作って食事ができる。
もうここしかないじゃないですか―!
そして「湯治に行く」と言いだして一週間もしないで朝樹は別府にいたのでした。
お宿も昔ながらの「貸間旅館」。
字の通り「貸間」つまり部屋だけ貸すから後は自分の好きにしてねv と言うフリーダムな旅館です。
布団の上げ下ろしから食事まですべてセルフサービス。
でも8畳以上ありそうな(昔の畳なのできっともっと広い)古いけど清潔な部屋とミニキッチン……いや、台所がついていて一泊3500円~4000円。安い。
しかも布団の上げ下ろしなんて出来ないと思っていたら、女将さんは電話予約の時に色々話していたので簡易ベットを用意してくれていて、通常一人での宿泊客は二階らしいのですが、一階に部屋を用意してくれると言う気配り……
ホントにすごく良い人でした~
温泉については、……さすが日本一。
外の下水溝からは湯気が立ち上り至る所に白い蒸気。
そして熱い!
入浴用に冷ましてはあるようでしたが、それでも熱い!
風呂場には注意書きが貼ってあって、効能が落ちるので多量の水入れないように、とか書いてあるけど入れないとまず入れないので申し訳ないけど張り紙は無視の方向で。
適温の温泉は快適でした~
変化は翌日からありました。
ステロイドの副作用で、高血糖が続いていたのですが、なんと朝の血糖値が正常値!
うっそ――!
いやきっと偶然!
と思ったら翌日も正常値。
効くもんだな湯治。
昔から人が集まってきた土地です。
それなりの理由があったんですね~ ←もっと早く聞きたかったー!!スタローン・ゆきのも以前に難病を患ったことがあるのですが、湯治がそんなに効くなんて……とギギギしております。
それに初日、温泉でどれだけ温まっても私の皮膚色は真っ白いままだったのですが、二日目・三日目と日が経つにつれて、きちんと温まると皮膚色が赤くなるようになってきたんです。
汗もかくようになって、何だか段々人に近づいているような気がしてきました(苦笑) ←大丈夫。朝樹さんは充分人です。セロテープで指をくっつけたりしません。
効いてるんじゃないか、この湯治。
そう思ってきた頃、事件は起きました(涙)←あらまあ。
近所のコンビニに徒歩で行った帰り道。
コンクリートの急な階段でした。
朝樹は病気のせいで足の筋力が落ちていて、段差を上がるのに手すりが必要でしたがそれも段々改善している所でした。
でも階段は必ず手すりを握ります。
この時も右手はガードレールを握っていました。
ただ、いつもと違って階段は急で、段差も大きく幅も狭かったんです。
私の左足首は、その階段に対応できず大きく前に重心が倒れるのが分かりました。
必死でガードレールをつかんだ右手で身体を支えましたが、何しろとっさのこと。
私は階段に正座をするような格好で止めるのが精一杯でした。
こう言う時は無暗に動かない。
そう思いながら全身の状態のチェックです。
上半身に問題は無い。
ガードレールをつかんだ右手も、関節などに痛みは無い。 ←さすがの判断!急な事故に遭うと、怪我をしていても脳が興奮状態でその場では痛みを感じない場合もあります。痛くないからと慌てて動かず、まずは手足などに異常が出ていないか確認してくださいね。
そしてゆっくり背負った小さなリュックを降ろします。
私はなるべく両手を開けておくために荷物はリュックに入れるようにしていました。
中からタオルハンカチを取り出します。
正座した状態の足から血が流れてはじめていました。
ヤバいなー
そう思いながら足に状態のチェックです。
何とか階段に座るような格好に持って行き長めのスカートをめくります。
不思議と痛みはまだ無かったです。 ←それはなかなかの怪我だからです。
右足は派手にスリ傷になっていますが深い傷はありません。
この位なら自分で処置が出来そうです。(しかし宿がナトリウム泉だったので死ぬほど滲みそう) ←そういう問題じゃない(私が朝樹さんにこれを言える日が来るなんて……!!)
左足を見ると、出血源が見えます。
足首に10センチほどの坐創。 ←はい、みなさん、定規をお持ちになってください。10センチの怪我、です。
ギュッと圧迫するけど、またすぐに出血してきます。
でも拍動性ではないので静脈性の出血です。
圧迫していたら止血できないかな……
そう思いながら圧迫を続けながら今後どうしようか考えました。
傷は皮膚層はざっくりですが筋層までは至っていないようでした。
出血点は最低二か所。
きっとゆきのさんなら自分で処置するんだろうな― ←たぶん私だったら出血箇所と太ももの太い血管が走っているところを縛って無理やり止血しちゃいますが、真 似 し な い で く だ さ い 。特に、持病をお持ちの朝樹さんは!
創面が挫滅していなかったので、洗浄して固定していればそのうち治る……
この思考回路って、絶対ゆきのさんのスタローンが感染してますよね(笑) ←一緒にスタローン友の会に入りません?笑
と、ここまで考えていたら道の反対側で観光客と思われる女性の二人組が「救急車、呼ばなくて良いかしら?」とか言ってるのが聞こえてきました。
「は?」って感じです。
こんなかすり傷で救急車なんて呼んだら、救急外来に戻った時になんて言われるか! ←いや呼びましょうよ!静脈血だって出血量が多ければ命にかかわります!
私は、大丈夫ですよ―とその二人組の女性ににっこり笑って頭を下げて根性で立ちあがり宿に帰る事にしました。
立っても大丈夫でしたし。
普通に歩けました。
骨は大丈夫。
骨が大丈夫なら問題は無い。
と、やっぱりスタローン感染している事を考えます。←うん……感染してますね……。
とりあえず落ち着いて洗浄と止血をしてからドラッグストアでも行って必要な物品を……。
そこまで考えて、自分が抗血小板薬(いわゆる血液サラサラ薬)を飲んでいたことを思い出しました。
ステロイドの副作用の血栓予防のため、毎朝欠かさずに飲んでいるんです。
……押さえた位で止まるわけねーじゃん。 ←ちょぉっっっとおおおお!!!それはスタローンだって船坂(不死身の日本兵)だってどうにもなりません!ちぎれかけた指をセロテープでくっつけた私だって、その薬を飲んでたら病院に行きますよー!!止血のための血液凝固のプロセスが働かないんですからー!!
私は諦めて医者に行くことにいたしました。 ←なにをどう諦めたのか……。
宿の女将さんに近所の外科系の病院を聞いてみようと、宿の玄関から声をかけると女将さんは私を見て第一声が「ひ――っ!」でした。
……確かに出血は多かったかな?
スニーカーがカポカポいってたし。 ←想像以上の出血量にこちらが「ひーっ!」です……。
私より顔色を悪くした女将さんは、ご自分の弟さんを呼んで近所の整形外科まで送ってくれました。
ホントに何ていい人なんだ。
そして整形外科では、診察してくれた先生がちらっと傷を見て一言。
「手術室開けて―!」
はいぃ??
手術室?!
確かに、その病院には事前に電話連絡して持病があることや、飲んでいる薬の事など伝えてはありました。
しかしまさか手術室を使う程の傷ではないと思ったのですが。
その整形の先生曰く
「感染が怖いからね、しっかり洗わないといけない。今日縫えるかどうかも分からないけどとりあえず出来る事はするから」
「はぁ……」
そんなやり取りの後、マジ手術室に運ばれました。
まさかの患者役手術室。
冗談…… だったらよかったなぁ。 ←こんなことを言うのは釈迦に説法だと思いますが、ステロイドを副作用が出るほど飲んでいる場合はほんっとーに!感染に注意してください!
ステロイドは内服でも外用(塗り薬)でも医療を変えたと言われるくらい素晴らしい薬です。医師の指示通りに使うなら怖がることはありません。ただ、内服の場合、自分の免疫機能も下げてしまう場合があります。そうすると、普通の人ならどうってことのない怪我でも大きな感染につながる場合があります。このドクターもそれを心配したんだと思います。
まぁ、処置は生理食塩水でこれでもかと洗って、縫って。
創部が足首だったため動かないようにギブスシーネをあてて。
ものすごい重病人のような姿になってしまいました。←重病人なんですよ……。
手術中、整形の先生は内科疾患は不得意らしく「明日主治医の所へ行ってね!」と100回位言ってました。
翌日、主治医の所へ行くとそのまま入院になったので、まぁ整形の先生の判断に間違いは無かったのでしょうが、ホントに色々びっくりでした。
ちなみに入院は抗生物質の点滴目的で一週間で帰れました。
傷の処置は家で自分でやってます。
ゆきのさん推奨のヘモスタパットではなく、エスアイエイドと言う傷にへばりつかない被覆材を楽天で購入。
傷の状態や浸出液の量で処方された軟膏を使ったり、別の被覆材に変えたりと色々試しながらも傷の状態は改善しております。
しかし家族からは「湯治に行ったはずなのに何で傷だらけになって帰ってくるんだ」と呆れられ……
仕方ないじゃないですか~。
私だって元気になって帰ってくるつもりで行ったのに~。
ホントに御祓いに行かねばならないでしょうか……?
と言う訳で、何だかゆきのさんの無茶っぷりを叱れない立場になってしまいました(苦笑)
ちなみに持病のない人でも皮膚層が10センチも切れていたら病院へ行って下さいね?
自分でくっつけようとは考えてはいけません。
……聞こえてますかゆきのさ―ん。
ちゃんと病院へ行かなきゃいけないんですよ―。 ←
屋外での転倒は危険です。
特に土の上で転んで傷を作った場合、いろんな感染が考えられます。
きちんと病院へ行きましょう。
←うん、その通り。今ではほとんと考えられませんが、土からの感染で最も怖いのは破傷風です。破傷風の予防接種は義務付けられていますが、最近では破傷風と同じく終生免疫がつくと思われていた風疹や水疱瘡も終生免疫(一度かかったり予防接種をしたらもう感染しないこと)が必ずつくわけではないことがわかってきたので、朝樹さんレベルの怪我をした方はとりあえず病院に行ってください。
え、おまえは行くのかって?
……それは聞かないでください……。
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