第10話 恐怖の銀杏 (おまけ:化学テロ対策)

 お久しぶりになってしまいました。

 何だかすみません。


 シルベスター・ユキノ嬢がまた愉快なネタ(ネタ?)を拾ってまいりました。

 「医療エッセイ」の範疇内かどうかは微妙ですが、医療系雑学としては面白い視点で、面白いネタでございます。(←やっぱりネタ扱い)


 えーと。

 この話は私がいろいろ言うよりも、読んでいただいた方が面白いかもしれません。

 解説は終わりにまとめていたします。

 あ、突っ込み入れますよ、いつも通り(笑)



 ではシルベスター・ユキノ嬢の武勇伝です。





 ◇ ◇ ◇




 脳だけは鍛えられない……そんなことはわかっていたはずなのに。

 またやらかしたシルベスター・ゆきのです。


 でも、ギンナンが脳に致命的なダメージを与えるなんて予想できますか?


「彼女の死因はギンナンです」なんて医師に言われるのを想像できますか?


 と、逆ギレしつつ今回は始まります。


 私はギンナンが大好きです。

 もうものすごく大好きです。茶わん蒸しの具で一番好きです。たまに2個入っているとそれだけで幸せです。


 ある日、農協直営の販売所で大量のギンナンが袋詰めされて数百円で売られているのに出会いました。


 やった!!!!!


 その日の私はギンナン祭です。


 一見食べづらそうなギンナンですが、殻ごと紙封筒に放り込み、レンジでちょこっとチンすれば、殻も綺麗に割れてほこほこの蒸しギンナンが作れます。  


 ↑紙の封筒に必ず入れて下さいね。爆発しますから。


 家でいちばん大きい封筒を探し、袋の中身をざらざらと入れていく私。


 わくわくしながらレンジの前で踊る私。  ←……踊ったんですか……?


 家には私1人。お皿には湯気の上がるギンナン。これを独り占めできると思うともう嬉しくて嬉しくて夢中で食べていきます。

 食べても食べても減らないギンナン。まさに夢のギンナン祭です。


 そして……。


 家人が帰宅。  ←監視監督が甘いぞ家人!!


「ただいま!メリークリスマス!ゆきのの好きなケーキ買ってきてやったぞ!」

「それどころじゃない……私……死ぬかも……」

「は?」


 ケーキの箱を掲げて玄関で微笑む家人。

 その前に倒れ込む私。


 たぶん、世界で一番不幸なメリークリスマスでした。


 いや、ギンナンを食べ終わって3~40分たったらものすごく気分は悪いわめまいはするわ頭は痛いわで、私、「え、なにこれ」な状態になったんです。


 風邪っぽくもインフルっぽくもない。

 でも死にそうに調子が悪い。動けない。


 その日はギンナンしか食べていなかった私はもしかして……と思ってグーグル先生に聞きました。


『ギンナン 食中毒』


 はい。ばっちりありました。ギンナンは食べ過ぎてはいけないという項目。


 こういうときはネットで調べてやきもきするより専門職だと『日本食中毒センター(24時間365日無料稼働)』に電話をしてみます。


「あの……ギンナンで食中毒になるというのを聞いて……ギンナンを食べてから悪心、頭痛、めまいがひどいので電話をしたのですが……』

『はい。何個くらい食べました?』

「30個以上」

『ひゃはっ?』

「30個以上だと思うんですけど……数えきれません……」

『……確かにギンナンは食中毒を起こしますが、失礼ですが性別と身長と体重を……』

「はい。女、○cm、○kgです」

『少々お待ちくださいね……それでしたら30個くらいなら念のため病院に行かれた方が……』

「解毒剤とかあります?」

『ないのと、その量ではおそらく様子見ですね』

「デッドラインは何個ですか……?」

『成人女性ですと……個人差がありますのではっきりとは言えないのですが、50個がほぼ致死量です』

「わかりました……ありがとうございます……」



  ※※※



「というわけなの……」

「ばっかじゃないかおまえ」

「だっていろんな軍事マニュアル見たけどギンナン食べ過ぎると死ぬなんて書いてなかったもん」

「そんなに食べるバカいないからだよ!」

「バカって言うなバーカ!!」

「バカだからバカなんだろバカ!そこまで元気あるんなら病院行かなくても平気だろバカ!」

「わかったよ行かないよ!死んだら後悔しろよバカ―!!」


 ↑え?……結局行かなかったんですか?病院??

  そして……軍事、マニュアル……???



  ※※※



 結局、家人の言葉が正しく、私は無事に生きております。


 ちなみにギンナンを食べ過ぎるとビタミンBのなんとか回路が破壊され、最悪の場合死に至るそうです。(元気になってからざっと調べましたが難しくて投げました。朝樹さんよろしく!)


 日常に潜む殺し屋、ギンナン。


 もうギンナン祭ができないと思うと残念でなりません。




 ◇ ◇ ◇




 という事でございました。


 何やってるんですか、ユキノさん……(涙)

 せめて病院行こうよ……(切実)


 ちなみに銀杏中毒は、人の神経伝達に必要なビタミンB6の働きを阻害してしまうため、食後1~12時間後に、腹痛・嘔吐・下痢・頻脈・消化不良などの食中毒様症状が出たり、ひどい場合にはふらつき・痙攣・呼吸困難・意識消失・ショックなどを引き起こします。最悪の場合、死亡例もあります。


 危なかったんですよ、ユキノさん!


 銀杏中毒、ちなみに小児の場合ずっと深刻です。

 少量の銀杏で中毒を起こすことがあります。

 子供に銀杏を与える場合、量に注意して下さいね~


 この他にも、日常生活には結構いろんな『毒』があります。(今回の食中毒は自然毒限定です)


 有名どころではフグ毒。

 これは神経毒です。呼吸をするための筋肉を動かせなくなって呼吸が止まります。

 スーパーがフグと気付かず捌いてしまって、普通に売っていたフグを食べて救急搬送された症例を見たことがあります。

 決して人事ではないんですよ。

 あ、その人は2日位かな?人工呼吸器のお世話になって、その後は元気にお帰りになりました。


 ジャガイモの青い芽も危険ですし(死亡事例あり)、意外な所でチョウセンアサガオ。

 花の根元の所、ちょっとオクラに似てませんか?あれで「食べられそう」と思ってしまうらしいんですよね。

 でもあれも神経毒です。意識レベル低下などから始まります。


 決して食べてはいけません。

 ユキノさ―ん。聞こえましたか?

 食べてはいけませんよ―。


 キノコ系も危険です。


 キノコ系はいろんな迷信があって。

 ★色が派手なキノコは毒があるから地味な色は安全(迷信です)

 ★油で炒めたら毒が抜ける(迷信です!)

 ★虫が食べていれば安全(迷信です!!) 

 ★匂いが良ければ食べられる(迷信ですなんです!) などなど……


 地方によりキノコによりいろんなことが言われているようです。

 でも、専門家でもない限り見分けのつかない事の方が多いようですので、素人が安易にキノコ狩りに行って毒キノコを取って来ないでくださいね。


 キノコは自然毒の中毒では断トツトップの不動の一位です。


 あと、水仙。

 にらと間違えて食べちゃう症例があるんですよね。

 綺麗なニラが生えてると思っても、摘んで帰ったらだめですよ~



 これらの自然毒は神経毒がメインです。

 神経毒と言えば、今新聞やニュースのトップを騒がせるVXガス。

 サリン・ブタンなどと共にテロの神経ガスの有名どころです。

 シルベスター・ユキノさんはこの辺に関して詳しい資料を送ってくれました。


 どうやら傭兵時代にザイールとコンゴを歴任していたようです(本人は嘘だと言っていますが……?)


 豆知識としてどうぞ。




 ◇ ◇ ◇  




 いま、巷で話題のVX剤を筆頭とした神経毒、ソマン、タブン、サリン。


 これにはPAMという特効薬がありますが、常備している病院は少ない上に重症の場合はPAMが届く前に死亡します。

 このときその場しのぎになるもの。 


 それは『大量の牛乳』です。


 ↑PAMは農薬系の誤飲にも使用するため田舎の病院は常備があります。時々、農薬をオ○ナミンCのビンに移したりして畑に出て、中身が農薬だと言う事を忘れて一気飲みしたりする方がいらっしゃるのです。なので「薬がない」という心配はしなくて大丈夫です。都会の方は発注すればすぐに届けてくれますでしょうしね。

 でも牛乳は確かに有効です。

 吐く事は推奨しません。




 米国軍はPAM製剤の携帯を兵士に義務付けていますが、本気でアラブと戦争をしているイスラエル軍の教えは「変だと思ったらまずたくさん牛乳飲め」です。


 これは薬理学的にも正しいそうです。

 ただし牛乳だけでは解毒ではなく緩和しかできないため、日本でC兵器かがくへいきの被害にあったら牛乳を飲みながら救急車を待ってください。


 また、一人の場合は流水で汚染箇所を洗浄し続ける、周囲に人がいたらホースなどで遠くから……汚染箇所を洗浄してもらう(二次被害を避けるため)ことが大事です。 

 神経毒には経皮毒(皮膚から毒素を吸収する)も多いからです。


 学生時代にアルコール綿を肌に当てて赤くなるかならないか、という授業を保健体育の時間に受けた人も多いと思います。

 ここで赤くなった人がいるように、アルコールも広義の神経毒です。


 同じように対テロ策として。


 辛子、マスタードの臭いがしたら『イペリット(マスタードガス)』という糜爛性(皮膚や内臓をただれさせる性質)のガスの可能性が高いです。


 杏仁豆腐の臭いがしたら『青酸ガス』という、酸素を体内で作る機能を壊し、酸欠で人体を死亡させるガスの可能性が高いです。(青酸はよく『アーモンドの臭い』と言われますが、それは日本人になじみのある炒ったアーモンドではなく生アーモンドの臭いなので杏仁や巴旦杏はたんきょう、杏の臭いに近いです)


 どちらにしても異臭を感じたらすぐに風上に退避し、できるだけ現場から遠ざかってください。


 誰かに触れられたあとに身体の異常を感じたら、『流水で』異常を感じた個所を洗い流しつつ、牛乳を飲みながら救急車の到着を待ってください。 ←汚染された服は脱いで下さいね~


 イペリット、青酸ガスとも牛乳は悪影響を与えません。

 また、上記二つは一般的な物質では解毒が難しいです。


 ただし青酸は非常に安定性が低いため、酸素に触れるとすぐに毒素は弱まっていきます。


 以上、傭兵的な知識なので掲載は朝樹さんにお任せしますー





 ◇ ◇ ◇ 




 はい。載せちゃいました。


 この国はサリン被害の経験から、化学テロに関する装備がしっかりしています。

 東京消防庁の装備なんて、顔も見えないのに惚れそうになります(笑)


 でも、テロで一番怖いのが、実はパニックだったりもするんです。


 異臭がして、大勢の人が狭い出口に殺到する。

 そこはもう、自分の意思で身体が動かない程人に押され、それだけで死人が出る事になるでしょう。


 まず、落ち着いて下さい。


 この国の人ならきっと出来ると信じています。

 強大な自然災害にも支えあうことができ、略奪などの起きないおそらく世界で唯一の国。


 落ち着いて、パニックに巻き込まれない様に冷静に行動して下さい。


 周囲を良く見て、最善と思われる行動を取って下さい。


 閉じ込められた、もうダメだと思っても諦めないでください。


 そのドアの向こうには、オレンジの服を着たレスキュー隊や自衛隊、DMAT(自衛隊と提携して訓練を受けた専門の医療職)が待機していますから。

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