第7話 当たり前だけど怖い「指を切った」
皆さま、今回は外傷編復活です~!
ゆきのさんの愉快な?、いやいや愉快じゃない説教モノの体験談入ってますよ~!
「指を切ってしまった時の対処」編です。
シルベルターゆきのさんは玄関ドアで足の親指の挫創(潰れたような傷)だったようですが、夜中の救急外来、結構「何かで指などを切った」系は良く来ます。
普通に多いのが包丁で指を切った、ですがこれはもう消毒して終わりの人から手術室を開ける事になる人まで様々。
ただ、切り落としてしまった場合は救急車を呼んで下さいね。
パン屋さんのパンをスライスする機械で落しちゃった人を見たことがあります。
スパッといってるので繋ぐこと自体は難しい事ではなかったようですが、救急車を呼ばなかったら落した指、置いてきちゃうところだったみたいで。ちゃんと救急隊の人が清潔なガーゼを生理食塩水に浸して最善の方法で持って来てくれたので無事に繋がりました。
山とかでの作業中にチェーンソーか何かで切っちゃった場合、感染の可能性が高いのでくっつけるかの判断は微妙になってきます。
そもそも傷の様子によっては繋げられません。
あ、山は救急車は入れなくても、レスキューがヘリを飛ばしてくれることもあるので救急要請はして下さいね!自力で降りようとか思わないで、とりあえず電話を。特にゆきのさん。ちゃんとレスキュー隊呼んでね。(にっこり)
もし何かで切ったら、必ず傷口の圧迫止血と、切っちゃった先をなるべく乾かさないようにして持ってくて下さいね。
以下、ゆきのさんの話です。
ドーモ、シルベスター=船坂=ユキノデス。
↑ ※船坂弘。第二次大戦中、存命時には「生きている英霊」と呼ばれた、不死身の日本兵。
戦中の呼称は、「不死身の分隊長」「鬼の分隊長」「グンソーフクダ」。どんな怪我をしても死ななかったらしい。
さて今回は、監修の朝樹さんから危険すぎると一度ストップをかけられたネタをぶち込みます。
こんなバカなことをする人が私以外にいてはいけないという思いからです。
たぶん、朝樹さんにはいっぱい叱られます。
↑ これを聞いた朝樹は、万が一にも「そんな処置で治るんだ!」と思ってしまう人が出ることを恐れて一旦ネタにするのを辞めたのですが、1話から3話を読んでくれている方ならゆきのさんの男前っぷりを理解してくれているだろうと。真似する人は決して出ないだろうと踏んで書いてもらうことにいたしました。
繰り返しますが、良い子はまねをしないでください!!
前提条件として、私は裸足が好きです。
近場のスーパーに行くくらいなら、冬でも裸足にサンダルです。雪だろうが豪雨だろうが譲れません。ちょっと不審者ですが気にしません。
↑ ゆきのさんだから大丈夫でしょうが、普通の人類は風邪をひくと思いますので、このレベルから良い子はまねをしないでください。
で、ある雨の日、帰宅した私は裸足サンダルが濡れないように急いで家の中に入ろうとして……玄関のドアに爪先を挟みました。
ちなみに我が家のドアは開けたあとはゆっくり自動的に閉まる、という無駄に重い作りのドアです。
「ギャアアアアア」
反射的に悲鳴が出ました。
慌ててドアの動きを止めて爪先を引っ張り出しましたが……ドアの端って意外と鋭いんですね。
親指の先が切れて取れかけてました。
爪母のあたりからグチャスパァッて感じです。
見た瞬間思ったことは「これ病院行ったら爪抜かれちゃう……!」でした。
もう絶望です。
爪を抜かれるなんて痛そうで怖いこと我慢できない。
そこで私は自力でなんとかすることにしました。
↑ 自力で処置をする方がずっといたいと思うぞ!絶対!!
親指が切れてても驚かないけど、自分で何とかしようとしたら多分全国の救急外来の人は驚愕すると思う!
縫合しなくてもテーピングできつく固定すれば患部の再接合は可能、という症例を何例か見たことがあったからです。しかも縫合跡が残らない分、仕上がりもきれいでした。
↑ これは本当です。顔の傷も糸で縫わずにテープで治した方が綺麗と言う話もありますが、これには諸説あるので何とも言えない状況です。
患部を流水で洗浄し、しばらく圧迫止血、そのあとヘモスタパッドという超強力な止血パッドを細長く切り、テーピングの要領で患部にきつく巻きつけます。
ヘモスタパッド自体には粘着力がないので、その上からさらにセロテープできつく固定します。(セロテープ、ガムテープはCDCでも最後の砦として使われているくらいなので侮れません。エボラ等の感染者に対応する際に着用するラカルスーツも最後はテープで密封します)
↑ ……相変わらず的確な処置…… ホントにどこの国の軍に所属していたんですか?
大体何でヘモスタパットが普通に一般家庭にあるんだ??
けれど、それだけではさすがに指が不安だったので、さらにその上から大きめに切ったヘモスタパッドを巻き、再度セロテープできつく固定しました。
痛いか痛くないかと聞かれれば痛かったですが、爪を抜かれる恐怖に比べたら我慢できる痛みでした。
↑ 爪だって無暗に抜いたりしないんだけどなぁ……
入浴時は片足を上げて患部を濡らさないようにして入浴。
頻繁にパッドを変えると患部が取れてしまいそうな気がしたので、パッドは数日に一回、感染がないか確認しながらそっと交換するのにとどめました。
パッドを交換するたびに、次第に患部がくっついていくのがわかります。
「頑張れ私の白血球!ミトコンドリア!」とそのたび応援していました。
↑ 応援で良くなるなら、今頃全国の看護師はチアガールのユニフォームになってるよ……。
それから約2週間くらいでしょうか。
爪はまだ割れていますが肉はくっつきました。
その後半年以上経過した現在では、爪にも指にもまったく傷痕は残っておらず、指先を落としかけたと元患部を見せても誰にも信じてもらえないと思います。
あ、爪母も再生しました。
↑ まぁよく感染起こさなかったよね。
これで感染起こしたら、爪じゃなくて指を落とさないといけない羽目になっていたかもしれません。
でも朝樹さんに言われなくてもこれだけは断言します。
指を落としそうになったら病院に行きましょう。
「爪を抜くのが怖いの」なんて弱虫な理由でためらうのはやめましょう。
以上、怖がりな七沢からでした。
と言う訳で、なかなか「ひ―――――!!!」と言うお話でした。
繰り返しますが真似はしないでください!!
素人にできる処置ではありません。
ちなみにこのケースのように、ドアに挟んだなどの怪我は形成外科が得意です。
病院によって得意とする分野が違うこともあるので確認はしましょう。
うちの病院では指が切り落とされたら、形成外科が診ます。
「手の外」とも言うそうですが、整形外科が担当する病院(と言うか医師)もあるそうです。
切れた手をつなぐのは、最早職人技です。
皆さま、十分にお気を付け下さいm(_ _)m
文責:朝樹
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