第51話 ザンザ

 ザンザの街に入るときに、デルピューネが普通に身分証明を持っていることに驚き、俺は商業ギルドのギルドカードを出して中に入った。

 実はスマホでリーリンを表す表示が青色から赤色に変わっていたのに気づいた俺は、商業ギルドで身分証明を作る時、リーリンには気づかれないように前の世界の名前を使ったのだ。


 「デルピューネさんは身分証明持ってたんですね。」


 「たまに人族に紛れて、街を巡るからな。それよりピューネでいいぞ。親しい人からはそう呼ばれているからな。」


 「ピューネ。僕はクーヤン。よろしく。」


 改めて自己紹介をする。


 「これからどうするのじゃ。」


 「一旦商業ギルドに向かう。」


 商業ギルドの中に入りギルドカードを見せる。


 「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件ですか?」


 「僕の持っている商法をいくらかでお譲りしようと思いまして、何処か信頼出来る商会を教えて貰えないでしょうか?」


  「お客様が持っている商法ですと、手裏剣・トンファー・サスペンション・蒸留装置ですね。」


 「はい。」


 「それでしたらバーバラ商会かボロボロ商会がおすすめですね。」


 話を聞くと、バーバラ商会は一代で成り上がり、ここ最近は店舗を拡大しているらしい、ボロボロ商会はいくつかの国にも支店があり、武器をメインに取り扱っていて、資金力はこの国一位とも言われているようだ。

 ここから近いボロボロ商会に向かってみた。

  お店に着くと、かなりお金がかかっていると解る建屋で、中に入ると、身なりが良い優しげな男が挨拶をしてきた。


 「いらっしゃいませ。」


 「すいません。商会長はいらっしゃいますか?」


 「大変失礼ですが、お会いになる予約とかしていますか?」


 「してないです。」


 「それでしたら日を改めてお越し願いますか?」


 確かにアポも取らずに来たのは失礼だったかもしれないが、確認もせずおいかいされるとは、しかも日を改めてって言いながら具体的な日付や時間を言われてない以上相手する気がないんだな。


 「解りました。」


 店を出てバーバラ商会に行く、お店に着くと、ボロボロ商会とは違い、どこにでもあるような建屋で、中に入っても汚くはないが古着と解る洋服を着けた女性が挨拶をしてきた。


 「いらっしゃいませ。」


 「すいません。商会長はいらっしゃいますか?」


 「私ですが何かご用ですか?」


 まさか商会長が店先で接客をしているとも思わず、しかも見た目二十代の女性に目を見開き驚いている表情を見て、


 「クスッ、皆さん私が商会長と知ると同じ表情をしますね。」


 「失礼しました。」


 「気にしてないわ。それで何かご用ですか?」


 「僕の持っている商法をお譲りしようと思いまして、来たのですが?」


 まさか見た目6歳の俺から商法の話が出るとは思わず、一瞬、本当に一瞬だけ表情を変えたが、すぐに元に戻して、話をかけてきた。


 「すいませんが、お店が閉まる時間、又は明日のお昼頃お越し願いますか?見ての通り、現在私一人しかいないもので!」


 苦渋な顔をする商会長を前に承諾して、お店が終わったら一緒に食事をしながら話をすることになった。


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