第4話 拠点作りと新年
朝、目を覚まし食卓へ行くと疲れた顔をした父上と姉がいた。
「おはようございます、父上、シャーシャ姉」
「おはようクウヤ、来週には王都へ向かう。」
「おはようクウヤ」
兄上の卒業式と姉上の始業式に出席するために来週に出発するようだ。俺には兄たちの記憶がない。生まれた前後には王都の学園へ行っている為だ。
「わかりました」
席について食事を取る。食事と言っても薄いスープに硬いパンだ。去年から1日三食だったのが二食になり、料理も質素なものにかわった。領の税金をあげるのではなく、こういった対応をする父上を尊敬している。
食事をすませると、姉上は勉強するため自室へ、父上は書斎へ向かった。俺は領内に行く許しを貰っているので、出掛ける。
「領内をみに出掛けてきます。」
「夕食には戻るように」
「はい、わかりました父上。」
森に入り村から百キロ離れた場所へ身体魔法をかけ移動し、周辺の木を風魔法で伐採し、土魔法で耕す。将来的にはのんびり暮らすための拠点作りだ。村には結界石があり五キロ離れた位置までは魔物が入れないが、それを過ぎたら魔物に襲われるため、ここまで離れて作れば問題ないと判断した。
午前中には小さな小屋まで作ることが出来た為、周辺の散策を行う。拠点から三キロ離れた位置には洞窟があり、ライト魔法を使い中へ入っていく。鑑定魔法を使い調べていると鉱山である事が判明した。一時間程調べ外へ出ると獣の気配を感じ、身構えると話しかけられ驚いてしまった。
「人間がここにいるのは何百年振りだ」
「狼が喋った」
「ワシは狼じゃなくフェンリルじゃ」
フェンリル、地球では神話で語られる存在。異世界で目にして感動。
「小僧はここで何をしている?」
殺気を含んだ言葉で質問され、警戒しつつ答える。
「ここから近い場所に拠点を作ったので、周辺の散策をしていました。」
「ふむ、ワシの討伐やこの周辺を荒らしにきたわけではないのじゃな」
「はい。ただ、この洞窟の鉄などは将来的に欲しいのですが?」
敵対しにきたんじゃないとしり、殺気がなくなった事に安堵しながら質問する。
「それなら構わぬ。好きなだけ持っていくが良い。ワシの餌さえ盗まなければ問題ない。」
「ありがとうございます。」
すると、洞窟へ入って行った。そのまま俺も屋敷へ戻り、父上へ帰って来たことを告げ自室へ戻った。
リー・ジェット男爵は頭を悩ましていた、来週には王都へ出発しなければ行けないが、結婚式に捧げる物がない。ロンの卒業式「2月10日」そしてシャーシャの入学式「3月20日」それから10日後に結婚式だ。滞在費用などかなりの出費の上、特産と言える物がこの土地にはない。
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