第二章:アガスティア山脈の謎

第18話 帝都にて……

【小解説】VR-MMOにおける「速さ」の取り扱いについて


 アヴァロン・システムの登場により、人類は仮想現実空間において望むがまま活動ができるようになった。生身で自由に空を飛ぶこともできるし、化石燃料を大量消費するクラシックカーで、無人の高速道路をドライブすることもできるようになった。

 ヴァーチャル・リアリティは、人類を物理的空間的な制約から開放した。だが開放できなかった制約もある。それが「身体的感覚的制約」である。そしてそれが最も顕著な問題となったのがVR-MMORPGであった。


 それまでのMMO-RPGには、ステータスの中に「敏捷性」「速さ」といった身体速度の項目があり、この数値が高いほど攻撃速度やスキル・リキャスト速度が高まる、つまり速く動くことができた。だがVR-MMORPGでは、現実世界での「反射速度」と仮想世界での速度に差が生まれ、仮想世界の速度に慣れてしまうと現実世界で深刻な問題が発生しかねなかった。簡単に言えば、モノを受け取る速度や歩く速度といった、日常活動の「感覚」にズレが発生してしまうのである。


 西暦2049年にアヴァロン法が制定され、数多くのVR-MMORPGが登場したが、初期にリリースされたゲームの大半が、こうした「仮想と現実の感覚的ギャップ」という問題を引き起こした。そのため、それ以降のゲームではステータスに「敏捷性」を入れていないものが多い。キャラクターの速度は、プレイヤー自身の感覚に頼ることになった。


 これは問題を解決する一つの解にはなったが、ユーザビリティという視点で考えれば、苦渋の決断だったと言わざるを得ない。かつての映画のワンシーンのように、弓矢や弾丸を躱すことに憧れるユーザーも多かったからである。そこで開発されたのが「感覚補正アルゴリズム」である。


 これは、通常は現実世界と同じ感覚でゲーム内を活動するが、ある瞬間だけ飛躍的に速くなる、というものである。またその際には、攻撃や回避といった感覚的なズレをプログラムが自動補正してくれる。これにより、プレイヤーは移動時や戦闘時のみ速くなる、といった使い分けができるようになった。


 「Dead or Dungeon」においても、このアルゴリズムが組み込まれている。また常時発動パッシブスキルに「補正」、「身体強化」などがあった。このスキルによって、高レベルでの自動補正を受けることができ、また戦闘時のみといった切り替えをいちいちする必要がなくなった。

 高レベルプレイヤー同士の戦いにおいて、この二種のスキルの有無は勝敗を左右するものとなった。その一方で、常時発動スキルに組み込めるのは、課金による拡張を行わいない限り五つまでであり、そのうち二つが埋まるというのはプレイヤーにとって痛いものであった。

 高レベルの課金プレイヤーの多くが、この二つのためにスキル枠を拡張していたのは、言うまでもない。





 ゴールドシュタイン帝国の北方にある「ウィンターデン」は、アガスティア大山脈から流れる豊かな水と大森林に囲まれた美しい街である。その一方で、北方や山脈から魔物が流れてきたり、毎月のように迷宮が出現したりする危険地帯でもあった。


手頃な・・・危険というものは、冒険者にとっては魅力的でもあるのです。素材や魔石が得やすく、自分自身を鍛えることにも繋がる…… そのためウィンターデンには、将来性ある若い冒険者が集まりやすいのです」


 ウィンターデンの冒険者ギルド長ロベール・カッシェは笑みを浮かべ揉み手をしていた。ここが冒険者ギルドでなかったら、どこから見ても商人としか思えない。ヴァイスは首を傾げた。


「その話は、俺に何の関係があるんだ?」


「いえ、ですから…… 「なんでヴァイスさんがこんなに狩っちゃうんですかっ!」 」


 ギルド長の話を遮り、怒鳴り声が響く。このギルドの名物受付嬢レベッカであった。買取所の机には魔石のみならず、毛皮、牙、骨などが山のように積み上げられ、その周りには人だかりができていた。全員が呆れた表情をしている。


「ブラックボアの牙、ゴールドバッドの羽根、赤プラテットの魔石…… みんなアイアンやスチール向けの魔物じゃないですか! なんでオリハルコンの貴方がこんなに殺戮しちゃうんですかっ! 全滅ですよ! ぜ・ん・め・つ!」


 六色聖剣と共にルーン=メイルに出現した迷宮を討伐し、魔物大行進モンスターパレードを食い止めたことが認められ、ヴァイスは真純金オリハルコン級に「無理やり」昇格させられた。


《 ルーン=メイルとの交易強化という功績、エルフ族合議員全員の署名が入った感謝状、更には皇帝陛下すら頭をお下げになられるエルフ族の重鎮エゼルミア様の書状、功績としては十分過ぎます。誰も反対しないでしょう。そして六色聖剣からの強い要請なのです。レイナさんなど、ヴァイス殿がオリハルコンにならないのなら、六色聖剣はミスリルに下がるとまで仰っしゃられて……》


 そう泣きつかれてしまった以上、首を縦に振らざるを得なかった。リューンベルクからも「さっさとオリハルコンになれ」と脅しに近い手紙が来ている。

 単独ソロ真純金オリハルコン級冒険者の登場は、ウィンターデン中の話題となり、ヴァイスのところには連日、様々な誘いが来ていた。あまり避け続けるのも問題だと考え、スキル検証を兼ねて駆け出しの冒険者たちと一緒に魔物狩りをしようと思ったのである。


「いや、こうして素材を持ち帰り…… 「迷宮に行きなさいっ! 迷宮にっ!」 」


 この世界に来てまだ試していなかった「補正」「身体強化」を確認するために、ウィンターデン郊外の森で半日ほど狩りをしたのだ。六色聖剣に依頼するほどでも無いと思ったので、素材回収は青銅ブロンズ純鉄アイアンの冒険者たちに依頼した。

後ろの男たちがウンウンと頷いている。「一緒に狩り」ではなく、ヴァイスが一人で魔物を倒し、後ろの男たちは素材を回収しただけである。


「俺ら、必要だったのか? って言うか、あまりにも速すぎて全く見えなかったぞ? 気がついたら魔物の死骸の山ができていて、そこらじゅうに魔石が転がってたよな?」


「北の森はそれなりに魔物が多いはずなんだが、見かけたか? 俺ぁ死体しか見てねぇぞ?」


「北の森は、当分は平和だろうなぁ。ありゃ、たぶん全滅してるぜ?」


 一緒に同行した男たちが苦笑いをしている。レベッカはコメカミを抑えながらギルド長に顔を向けた。


「ロベールさん。もうこの人は迷宮以外の活動は禁止したほうがいいです。自由な狩りなんて許したら、地上から魔物がいなくなっちゃいます」


「そんな理不尽な……」


 ヴァイスがそう言うと、レベッカはキッと睨んで、明後日の方向を指した。


「どうしても狩りをしたいんなら、アガスティア山脈まで行きなさいっ! ついでに迷宮も討伐してきなさいっ!」


 どうやらこのギルドでは、目の前の女性が最強らしい。





 ゴールドシュタイン帝国皇帝アレクサンドル・F・ゴールドシュタインは、国務尚書からの報告を聞き、親書に目を通した。北方の都市ウィンターデンが皇帝直轄領となっている理由は、エルフ族の森「ルーン=メイル」が隣接しているためである。皇帝の地位に就いた者はルーン=メイルに行幸し、国祖ルドルフの友であった不死のエルフ「エゼルミア」と面会する。ルドルフ王が決めた為来しきたりにより、八百年にわたる友好関係が維持されている。新皇帝が最初に玉体を運ぶ場所である以上、特定の貴族を置くわけにはいかなかったのである。フリッツ・エレンフェスト国務尚書が補足する。


「報告によりますと、ルーン=メイルに出現したダンジョンは、従来の常識から外れていたとのことです。普通は最大でも地下二十五層までですが、ルーン=メイルのダンジョンは四十層以上もあったと報告が入っています。此度のことで、排他的であったエルフの森も交易を許可してくれました。上位薬の精製に不可欠な希少薬草類が安定的に手に入るようになり、大きな経済効果を生み出すことでしょう」


「ふむ。エゼルミア殿からの親書にも書かれている。六色聖剣は無論だが、このシュバイツァーなるミスリル級冒険者が活躍したそうだな。『ルドルフ王の再来』というのは、些か過剰な評価だと思うが……」


「御意にございます。しかしながらこの冒険者は単独でありながら、既にオリハルコン級に昇格しております。またリーデンシュタイン公国からも、迷宮討伐などでこの者の活躍が報告されております。帝国としても何らかの形で、酬いては如何でしょうか?」


「冒険者ギルドからの報奨だけでは不足か?」


「ルーン=メイルの噂は、帝都にまで広まりつつあります。近隣諸国が不穏の中、ダンジョンまで変化しているとなれば、今後ますます、優れた冒険者が必要となるでしょう。ギルドの宗主たる帝国が、優れた冒険者を放置しておくというのは、些か聞こえが悪うございます」


「卿の意見にも一理あるな。ならば六色聖剣およびシュバイツァーには、余への謁見の名誉と帝国からの報奨の下賜しよう。それでどうだ?」


「陛下の御厚情に、彼らも感謝の涙を流すことでしょう。では早速、ウィンターデンに使いを出すことに致します」





 ルーン=メイルでの迷宮討伐から、二十日ほどが過ぎていた。その間、ヴァイスは近隣の森でスキルを試したり、レイナの躰に溺れたりしていた。また週に一度は、グラディスがコッソリと訪れてきた。アレ以来、定期的に催すようである。レイナもそれは黙認しているようだ。

そんなある日、ウィンターデンの冒険者ギルドに呼び出されたヴァイスたちは、皇室からの報奨の話を聞いた。レイナたちは名誉なことと喜んだが、ヴァイスは頭を掻いて首を振った。


「それは、断ることはできないのか? カネをくれるのなら貰っておくが、別に皇帝なんぞに会いたいとも思わん。カネだけ送ってくれ」


 ヴァイスの放言に、ギルド長ロベール・カッシェも六色聖剣も呆れてしまった。商才あるギルド長は、咳払いして取り繕った。


「あー、ヴァイスさんは他国からいらっしゃったのでご存知ないかもしれませんが、皇帝陛下に謁見する機会など、庶民にはまずあり得ないことなのです。それほどの名誉なのです」


「なぜ、名誉なのかが理解できんが…… まぁ良いだろう。もともと、帝都には行くつもりだったからな。会いたいというのなら、ついでに会ってやる」


「……ヴァイス、お願いだからその態度は、陛下の前では出さないでね? 不敬罪に問われかねないわ」


 ロベールは胃を撫でながら、レイナの言葉に何度も頷いた。





 八十万人以上が住む帝都レオグラードは、ウィンターデンとは比較にならないほどに栄えていた。上下水道がしっかりと整備され、街を歩く庶民の服装も、どことなく洗練されている。謁見の日を迎えたヴァイスは、普段と変わらぬ服装で宿の一階に降りた。六色聖剣たちも革の鎧を身に着けている。だがどこか服装に艶やかさがあった。レイナなどは首に緋色の布を巻いている。


「晴れの舞台だから、少しだけお洒落をしてみたの。どう?」


「似合ってるぞ。まぁ俺は普段と変わらんがな』


 ヴァイスは全員の武器を受け取り、アイテムボックスに収納した。宮殿内は武器の持ち込みが厳禁であるため、最初から預かっておく。迎えの馬車に乗り、宮殿へと向かう。皇室の紋章が入った馬車に、街の人達も注目していた。二台の馬車が宮殿外苑に入る。近衛兵たちが護る内宮への入り口で降りる。ここから先は、徒歩で進まねばならない。女性の兵士が現れ、六色聖剣を身体検査する。こうした気の利かせ方は流石だと感心した。ヴァイスも普通に検査を受けた。どう見てもただの冒険者にしか見えない格好に、衛兵たちの表情が曇っている。前後を衛兵に挟まれ、七人は内宮に入り、謁見の間へと向かった。


「ダ、ダメよ。 ヴァイスッ、外套から手を出してッ」


 謁見の間の前で、レイナが小声で窘めてきた。ヴァイスとしては「会ってやる」という感覚なので、なんでこちらが畏まらなければならないのかとも思うが、一応は言われた通りにする。

謁見の間には、衛兵の他、行政官と思わしき初老の男がいた。一段高くなっている場所に、椅子が置かれている。ヴァイスは普通にカツカツと歩いたが、レイナに引っ張られて途中で止められた。


「……ゴールドシュタイン陛下、御入室」


 合図と思わしき声とともに、レイナたちが一斉に跪礼した。ヴァイスは立ったままだったが、レイナが急いで手を掴んで押し下げてくる。仕方なく似たような格好をした。入ってきた国王は蜂蜜色の髪をした中年の男で、かつての弟子の子孫とは思えないほどに普通に見えた。横に立つ衛兵たちが眉間を険しくしている。どうやら何か、宮廷の作法から外れているようだ。もっとも、ヴァイスにとってそんなものはどうでも良かった……


「面をあげよ」


 皇帝の声と共に、レイナたちが顔を上げる。どうやら頭を下げていなければならなかったらしい。大したことではなかった。皇帝の側に控えていた行政官らしき初老の男が、何かを読み上げはじめた。ルーン=メイルの迷宮討伐がなんちゃらと聞こえた。


「各人に金貨五百枚を下賜し、その功績を称える」


 目の前に何かが運ばれてきた。木の台に布が敷かれ、その上に絹製の袋が置かれている。どうやら金貨らしい。


(金貨五百枚か。大して有り難いとも思わんが、帝都の高級娼館で豪遊でもするか……)


 ヴァイスにとって、この世界でカネを稼ぐことは簡単であった。ダンジョンに潜って魔物を討伐して素材を集めればそれなりのカネになる。金貨五百枚程度なら一週間もあれば余裕で稼げるだろう。

袋をそのまま手に取ろうとしたら、先程の行政官が小さく咳払いし、微かに首を振った。どうやら後で改めて貰うのが礼儀らしい。実にアホらしいが、とりあえず付き合う。


「ヴァイスハイト・シュバイツァーとやら。卿に聞きたいことがある」


 (ヴァイスにとっては)アホらしい儀式が終わると、皇帝が口を開いた。ヴァイスはいい加減、跪礼の姿勢にウンザリしていた。胡座を掻きたいと思った。イラ立ちから思わず素で返答する。


「はぁ、なんでしょう?」


 この返答には、傍に控えていた初老の行政官も周りの衛兵も驚いたようだ。だが皇帝は笑って、手を上げる仕草でそれを抑えた。


「構わん。そもそも冒険者とは、宮廷作法などには疎いもの。少々の無礼は許そう。ルーン=メイルの長老エゼルミア殿は、親書の中で卿を『国祖ルドルフの再来』と評していた。卿にその気があるのなら『英雄王の剣』に挑むことを許すが?」


「へ、陛下、それは……」


 行政官が慌てる。衛兵たちも息を呑んでいる。だがヴァイスは表情を変えなかった。それどころか


「お答えする前に、少々の無礼は許してくれるとのことなので…… 失礼。足が痺れそうだ」


 その場で胡座を掻いた。流石にこの態度は許し難かったのだろう。ヴァイスを捕らえようと衛兵が動いた。だが皇帝がそれを止めた。


「静まれ! 余は無礼を許すと言ったはずだ。それで、どうする?」


「お断りします。俺は神鋼鉄アダマンタインなどに興味はありません。第一、抜いたらその後が怖いですから」


「ほう。抜く自信はあるのか」


 そう問われ、ヴァイスは肩を竦めた。Lv990装備は、それ以上のレベルのプレイヤーなら誰でも持つことができる。これまで抜けなかったのは、そのレベルに達した冒険者がいなかったからだろう。

自分なら抜ける。だがヴァイスには、その気は全く無かった。


「もし抜いたら、の話ですよ。もし抜いてしまったら、どうなります? 俺を『国祖ルドルフ』と同列とするのですか? 新たな英雄王、伝説の再来…… それを国が認めますか? 認めてしまって良いんですか?」


「なるほど。英雄王の伝説は、伝説のままとすべき…… 卿はそう言いたいわけか」


「エルフの婆さんは、何か勘違いをしているんでしょうね。俺は確かに、ルドルフ王と同じ力を持っています。たとえば……」


 空間に手が消え、そして出現した。真紅のポーションを手に持っている。六色聖剣以外の全員が目を剥いた。伝説とされていた「異空間収納」のスキルを目にしたからである。


「……こんな、異空間収納の力を持っています。ですが、俺はルドルフ王ではない。あんな生き方は、俺にはできない。考えても見てください。何もないところに、国を創ったんですよ? どれだけの苦労があったと思います? 迷宮を討伐する力なんて、ルドルフ王の力のごくごく一部に過ぎませんよ。彼の生涯全てが伝説なんです」


 ヴァイスは本気でそう思っていた。DODで戦い方や遊び方を教えた「元弟子」は、自分の想像を遥かに超えた存在となっていた。いきなり飛ばされた未知の世界で、たった独りで生き、迷宮を討伐し、ともに戦う仲間を集め、多くの人々から信頼され、一つの国家を打ち立てるなど、自分には到底できないだろう。ヴァイスは元弟子ルドルフに対して、心から敬意を払っていた。

皇帝アレクサンドルはヴァイスの言葉に何かしらの感銘を受けたようで、深く頷いて笑った。


「卿の言いたいことは解った。だが余としては、卿の力を見てみたい。伝説とされるルドルフ王がどれ程の強さだったのかを知りたいのだ」


「ならば、冒険者ギルドに指名依頼を出しては如何です? どこかのダンジョンを単独討伐しますが?」


 二人のやり取りに、行政官は何かを思いついたようである。小声で話しかける。皇帝アレクサンドルはそれを聞いて頷いた。


「では、余からギルドを通じて卿に依頼する。帝都の東方に出現したダンジョンを単身で討伐せよ。帝都に近すぎるため討伐対象となっている。既に真純金オリハルコンランク『紅の騎士団』が挑んでいるが、中々に苦戦しているそうだ。卿が真に国祖ルドルフに匹敵する力を持つならば、やり遂げられよう?」


「構いませんが、報酬はお幾らでしょう? まぁこちらも商売ですので……」


「シュバイツァー殿! これは陛下の勅……」


 モキュッモキュッと揉み手をするヴァイスに対して、初老男が何かを叫ぼうとしたが、皇帝は爆笑した。


「ハッハッハッ! 卿は面白いな。余の依頼を達成した暁には、望むものを与えよう。地位や土地、あるいは金…… なんでも良い」


「そうですか。では、考えておきます。一応、冒険者ギルドを通じたほうが良いと思いますので、明朝、ギルドに寄ってそのままダンジョンに向かいます。数日後には、討伐の報告ができるでしょう」


「数日だと? その大言、しかと相違ないな」


「余裕です」


 笑って頷いた。数日ですら掛け過ぎだろう。依頼は「採取」ではなく「討伐」なのである。魔石やドロップアイテムなど全て無視して突き進めば、数時間で終わるだろう。謁見が終わり、ヴァイスたちは立ち上がった。


「さて、腹が減ったな。帝都の美味い飯屋で食事しよう」


 一人笑う男に、その場の全員が呆れ返った。


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