第25話 古い童話

「玲奈は待てなかったか」

 判刻前に雨宮静柰は開かれた洋館の表を見て呟いた――今は洋館の迎賓館の紅の絨毯に足を下ろしている。

 月夜に照らされて大きな硝子窓から酷く蒼白い斜めの光が長い廊下を彩り二階のテラスに出ればさぞ幾何学模様に整えられた芝の庭園は美しく見えるだろう。

 だが今はそれどころではない。

 それは以前訪れと時の記憶の一部だった。

 それが今は私の進行を助けている。

 入り口から程近い場所での多量の血痕。

 一弥からも玲奈からも何も連絡はない。

 急がねばと思いつつも既に大局は決しているのかもしれんと思った。

「どのみち誰にもあの物質を制御できはしない――幾ら才能が在ったとしても、あれはそういうモノだ。そうお前には伝えたじゃないか」

 館の奥深くに在る秘密の部屋には安楽椅子に身を預ける人の成れの果てがあった。

 それは干からびて幾年も経過していた。

 机に散乱した書類に目を通すと様々な制御法や魔力の抽出法などが書かれてあった。特に目を引いたのが永久機関に付いての記述だった。

 永遠の生命に届く研究の成れの果て恐ろしく古い血統の導入――古き神との交信。

 研究の果てに神は具現化し身体を授かるも目覚めることは無かった。

「――蛇と世界の欠片」

 静柰は手にした古い童話に目を通し始めた。

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