第24話 白拍子

「現れたということなら那由他は貴方に倒されてしまったということですね」

 目の前に現れた白拍子はゆらりと動くと刹那――必殺の間合いに詰めてきた。

 なるほど――これなら那由他が倒されたのも頷ける。これほどの使い手は未だかつて逢ったことがない――否、二人目か。

 それは人としての限界をとうに超えて――後は周りすべてを空気の流れさえ利用し切っている。

 なるほど――これは必然の塊だ。

 彼女が動くことが、彼女の考えることが、すべて理にかなっている。

 その間合い、拍子、重さ、早さ、順序――そのすべてが理想でこれ以上ない――そう隙無く見える。

 普通なら私も今の瞬間に首が落ちるのだろうが――残念ながら私も人では無い。

 そう易々とこの首を人間ごときに差し出すわけにはいかない。

 だが、よくぞ此所まで積み上げた。

 これは千年ぶりの戦闘になろう。

 喜べ――お前は我の生きた久遠の中で二人目の強者に値する。

 世界よ――お前はそんなに殺したいのか。

 そんなに我を殺したいのか――。

 それなら本当にお前を殺してやろう。

 こんな世界など無くなってしまえばいい。

 千年前にお前に組み伏せられたあの夜に成し遂げられなかった願望は我の中で熟成され今――此所に成し遂げられる。

「お前が、この世の秩序なら我を止めてみせろ」

 呟く前に純白の幽鬼は音もなく飛び掛ってきた。

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