第19話 連絡

 僕は意識を取り戻した。

 反射的に首筋をなぞる。

 だが傷はない。

 周りを警戒したがその場所には誰も居らず扉には鍵さへ掛ってはいなかった。

 玲奈は大丈夫だろうか。

 あの少年は恐ろしく腕が立つ。

 兎も角、静柰さんに連絡をしなければならない。僕が無事なら、玲奈も彼と戦わなくても良いのだから。

 戦わなくてもいい相手なら戦わなくてもいい。事実――彼は僕を殺さなかったのだ。

 でも玲奈が彼に出会えば止められないだろう。

 そうなれば仕方のないことなんだ。

 けれど擦れ違えられるのなら敵として認識しなければ戦いは成立しない。

 なら、それで良い。

 ふたりとも納得して擦れ違えば良い。

 真正面から出会わなければ成立しない戦いなんだから。

 強すぎる相手との戦いは玲奈の本性をさらけ出すことに成りかねない。

 もしそうなれば玲奈は僕の所に帰ってこないかも知れない。

 それだけは嫌だった。

 僕は電池の切れた携帯を地面に叩き付けると麓まで駆け下りた。

 たしか公衆電話が一台、村役場にあったのを思い出したからだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る