第18話 戦闘準備

「それで隠れているつもり?」

「へえ――。さすがにわかるんだね」

「いいえ、それに隠してない。もしかして莫迦にているのかい?」

「そんな目で睨まないでくれよ。怖くて出て来られないじゃないか」

 と、続けながら屋敷の迎賓用の広間の中央階段から恭しくも病的に白い指先を晒しながら降りてきた。

 それは制服を着た青年だった。

 少年のように大人しそうな顔をしていた。

 だが、それが偽装だと厭でも感じさせるほどの実力を垣間見せていた。

 ――武術。武芸。体術。そして暗殺術に至まで色々な呼び名があるが、どれも結局は相手を殺す術に他ならない。

 あたしも雨宮の家で一通りの技を習い覚えているが、身に付けたものは技だけでなかったらしい――対峙した時には力量がある程度測ることが知らぬ間に備わっていた。

 ――もっとも、完全にわかるわけではないのだが目安にはなった。

 目の前の青年は対峙しただけで分かるほどにその才があった。

 ――殺人技法と云うものにおいて……。

 特に青年の眼光には今まで相対した如何なる者も持ち合せていない特異な蒼白い光が宿り隙間なく、あたしの起こりを見逃すまいと初動の目付を行っている。

 起こりとは人が動くときに起こす初動作のこと――それを見逃さなければ相手の動きを見切ることが出来る。

 双方一撃でもらえば間違いなく相手の命に届く。

 真剣勝負――それは自分にとっても恐ろしい事だと云えた。

 その一方でこの相手なら思う存分、己の心技をその身体の限界まで使い切ることが出来るのではないかと密かに期待している自分がいることもわかっていた。

 不思議だが目の前の人物と次の瞬間、殺し合うのだと分かっているのに――おかしな話だが相手を信頼している。

 だが確認をする。

「おい。一弥はどうした?」

「ああ、やっぱりあの人の関係の人だよね。あの人なら……」

「いや、良い。最期まで聞くとお前と戦えなくなるかも知れない」

「くくくッ。それもそうか。ならば彼の居場所がしりたいなら俺を倒すしかないな」

「ああ、そうしよう」

 あたしは得物を抜き放ち鞘を捨てた。

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