第6話 戦闘終了

「やっと目覚めたね。あんたは、なかなかの手練れだった――あたしは気に入ったよ」

 一弥は目を覚ますと赤い空とシルエットが見えた。

 赤い光が斜めに見えた。

 夕暮れ時。

 逆しまに覗き込む玲奈の顔があった。

 どうやら膝枕をされているらしい。

 だが、不思議と違和感は感じられない。

 体温を感じているからなのか、この瞳に敵意が無いのがわかったのか、それしても、少し前まで命の遣り取りをしていたとは思えなかった。

 むしろ一弥は大昔から知っていたような不思議な気持ちで一杯だった。

「きみは僕を知っているみたいだね。だけど、僕はきみを知らないってのはフェアじゃないんじゃないかな」

「なるほど、たしかにね。なら、自己紹介しよう――私の名前は雨宮玲奈。よろしくな」

「僕の名前は藤倉一弥。よろしく」

「あれ、連絡がきてなかった?」

「あ、手紙が来てたけど……」

「そうそう、それだね。私は朝にて手合わせを願いたいという内容を書いたのだけどね……」

「え、来たのは親父からの手紙だったけど、これだよ」

 玲奈は懐から差し出された手紙を受け取って読むと、くくくッと笑い始めた。

「どうしたの?」

「たぶん、わたしもあんたも嵌められたんだよ」

「誰に?」

「意外に鈍いな――きみの父君にさ」

 そう大きな瞳を細めて笑った。

 その彼女の何気ない表情が一弥の瞳を捕らえて離さなかった。

 だが、暫くすれば焦点がぼやけてくると、意識が遠のいていった。



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