第3話 許嫁の名は・・・

 藤倉一弥には許嫁がいる。

名前は雨宮玲奈という。

 彼女は藤倉の遠縁に当たるというか、もっと端的に話せば大昔に分かれた分家筋という方が正確かも知れない。

今から三百年前に藤倉久蔵が雨宮家に養子に入ったのが起源とされる。

無論、歴とした鬼祓いの一族である。

ただ、この件には少し問題があった。

なぜなら、一弥が意識したのは、つい最近であったからだ……。


 そもそも許嫁とは親同士が勝手に取り決めるのもだが、それにしても同じ時期に生まれた事だけで、許嫁になってしまう事が往々にしてあるのが通例の為、それはこのケースにも当てはまっていた。

 ある年、基経が雨宮に行く用事があった。

 それに一弥はついて行っただけのことだった。同じ年の幼な友達いて、たまたま女の子だと言うだけ。

 その時の一弥は不思議と縁を感じていたかもしれない。

 だが、今の一弥は、それすら忘れ果てて仕舞っていたのだった。

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