第2話 寝起きでも眠りたい
「ねむりーん、式終わっちゃったよー」
「うぅん、後10分……」
「それホームルームとか自己紹介が終わっちゃうから!」
モモちゃんも叫ぶような声で私の頭は少しだけ覚醒する。
「うるちゃいよモモちゃん……」
「いやここねむりんの部屋じゃないからさ、学校だからさ」
「学校……?」
はて、私はなぜ学校で寝ていてモモちゃんにたたき起こされているのだろうか。
少しだけ記憶を巻き戻しつつ思考を巡らせることで脳を活性化させていく。
私は眠るのは、睡眠が特に大好きではあるけれど学業に支障を来すような眠り方はしないのがポリシーである。
故にこれはモモちゃんのいたずらで……。
「あら、起きたのかしら?」
聞きなれない声……いたずらにしては手が込んでる。
だが私はまだ眠いし、今日は入学式で式が終わったら自己紹介だけのは……ず。
「寝たらダメな日じゃん!」
「あぁ、今起きました……」
「ず、随分と個性的な起き方なのね。でも今の感じなら健康面に問題はなさそうですし、えっと……あなた、お名前はなんだったかしら」
「猿渡桃です。桃だけで子は付きません」
なんだかモモちゃんが自己紹介している。
はて……私は今どこにいて、なんでモモちゃんが見知らぬ白衣の女の人に名乗っているのだろうか。
「もしかしてここは病院!?」
「保健室よ、落ち着きなさい。私は養護教諭の上北よ」
養護教諭?保健室?
「なんで私は保健室に?」
「入学式の最中に寝ちゃったからでしょ!」
「まぁ校長、無駄話が長いから気持ちはわかるけどね、そういった持病はあるのかしら?」
「いえ、ただ眠るのが好きで……少し寝たいという欲求が高まったときにきっかけがあるとすぐ眠れる体質なだけです」
「ナルコレプシーではな……すごく特異な体質ね?ならもう大丈夫ってことで教室に行っても平気かしら」
「いや生徒に聞かないでくださいよ……で、大丈夫なのねむりん」
モモちゃんも聞いてるじゃん。
とは思ったけれど……眠気が少し残っているけど、まぁ多分大丈夫。
「はい、それにこのままここにいると病弱とか、そんなふうに思われちゃいますし」
―――――――――――――――――――――――――――――――
その時、小清水さんの教室では……。
「えー、寝落ちしてしまう生徒が出たことにより、PTAからの意見もあって今後は校長先生のお話は朝会を含めて廃止ということになりました」
担任から告げられた言葉によって生徒たちから英雄扱いされていたのだが、小清水さんと猿渡ちゃんはその事実を知ることはできなかったのだった。
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