小清水さんは眠りたい
水森錬
第1話 入学式でも眠りたい
ここはとある県のとある市立中学。
私こと小清水ネムは入学式に出席している。
だが…………。
(ねむい)
というかなんでこうもお偉いさんの話しはいちいち回りくどい言い方をして長引かせるのだろう。
前日から私は8時間寝たけれど、この催眠音声のおかげで凄い眠気がたっぷりと、そう、今まさに私に襲いかかってきているのだ。
正直、ここが眠ってもいい時と場所であるのなら私は謹んで睡魔に身を任してまどろみに落ちるのもやぶさかではない。
いや、むしろ全力で惰眠を貪りにいく。
「ちょっと、ねむりん流石に入学式でそれはまずいっしょ!」
隣に座っていた小学校からの友達のモモちゃんが肘で私の脇腹をつつきながら眠りに落ちそうな私を起こしてくれている。
「むぅ……5分だけ……」
「いやダメだからね、気持ちはわからないでもないけど!」
気持ちがわかるなら眠らせてくれてもいいじゃないだろうか。
今の私は数字のカウントをされるだけで眠りに落ちる自信が不思議とすごくある。
「えーですからして、皆様はこの4月に」
4……?
「入学して3年間を過ごされるわけですから」
3……?
「これからの日本を背負う若者として」
2……?
「是非とも、1番を目指して頑張っていただきたいと思っております」
1…………ぐぅ。
「寝ちゃった!?」
「そこ!私語は慎みなさい!」
モモちゃんの声が聞こえたような、それで何か叫び声が聞こえた気がしたけれど……既に眠りに落ちた私にはそれ以上の言葉は耳に入ってこなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「すげぇ……」
「嘘、本当に寝てる……」
「でも気持ちはわかる、長かったもんな……」
周囲からそんな小声が聞こえてくる中、私は友人であるねむりんが先生に揺すられているのを見ていることしかできなくなっていた。
「ちょっと、起きなさい!……ねぇ、この子のお友達なんでしょう?起こし方とかないの?」
「知ってたらもうやってます……」
「はぁ……まぁいいです。この子は保健室に運びます。それとあなたも入学式で騒いだ件、後でお話がありますからね」
私の中学校生活は最初から波乱を予感させるものであることを、気持ちよさそうなねむりんの寝顔を見送りながら確信してしまったのでした。
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