第8話
●第8話
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探偵チーム視点
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二人組のフレンズが、あるターゲットを探してジャパリパーク中を歩いていました。
ふたりとも、創作の探偵が身につけているような茶色い帽子をつけていて、全体的に似たような格好をしています。
一人は、ショートの金髪で、白いワイシャツにピンク色の袖なしセータが特徴的です。
そしてもうひとりは黒髪のミディアムで、白いワイシャツに茶色い袖なしセータを身に着けています。
黒髪のフレンズが、金髪のフレンズに話しかけました。
「ねえ、センちゃん。なんかあそこに変な足跡があるよ」
センちゃんと呼ばれたフレンズが返事をします。
「ただの溝でしょ。あんな足跡のけもの見たことがないわ」
「でもほら、あっちの方に続いているみたいだよ」
そう言って、溝の先を指さしました。
「行ってみようよ!」
「待ってよアルマーさん」
そうして二人はその方向へ進んでいきました。
二人は気づきませんでしたが、案内表示の看板に、【ライブステージ】と書いてありました。
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そのころ、キュルル一行
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「ここが、ペパプのライブ会場」
トラクターでの旅の末、キュルル、サーバルちゃん、カラカルちゃんの三人は、ペパプライブが予定される屋外型のライブステージに着きました。
そこにはすでに、会場の三分の一ぐらいの席が埋まっていました。
もうすぐライブが始まるのでしょうか?
「いっぱいフレンズがいるね!」
そういってサーバルちゃんが声を上げます。
「私達も席に座りましょ」
カラカルちゃんがそう言って、みんな席に付きました。
その後すぐ、あるフレンズがステージに現れました。
サーバルちゃんと同じような服装に、メガネを付けたフレンズです。
「それではこれより、公開オーディションを開始します!
このオーディションで合格したフレンズには、ペパプライブのオープニングアクトとして予定される演劇に出演してもらいます。
そして、ペパプのマネージャーをしております私、マーゲイが、司会兼、審査員を務めさせていただきます。」
どうやらライブではありませんでしたが、オーディションがあるみたいです。
「エントリーNo1、タヌキさん!」
マーゲイが呼んだあと、ステージから出てきたのは、紺色のセーラー服をきたフレンズです。
「それではタヌキさんの特技を見せてください」
「はい!」
可愛らしい返事のあと、タヌキちゃんはステージ上で倒れ込んで、横向きに丸まりました。
「これは何でしょうか?」
「死んだふりです」
「これは素晴らしい演技力です! 合格!」
おおー、と会場から拍手がわきました。
タヌキちゃんは嬉しそうに手を振ります。
「エントリーNo2、パフィンさん!」
次にステージに出てきたのは、上はブレザーのような格好に、下は白いスカート、そして、後ろ髪は黒で、前髪は白、なにより、前髪にはオレンジ色の目玉模様が入っています。
「パフィンさんの特技を見せてください」
「はーい! 私の特技はジャパリまんを加えながら空を飛ぶことでーす!」
懐から取り出したジャパリまんを口に加えました。
そしてそのまま宙に浮かんでいます。
「すごく器用ですね! 演劇の黒子としての活躍が期待できます! 合格!」
「はむ、もぐ、もきゅ、わーい」
パフィンちゃんはジャパリまんを食べ終わったあと、嬉しそうにしています。
「エントリーNo3、トキさん!」
出てきたフレンズは、上は白い服に、下は朱色がかったピンク色をしており、羽がふさふさしています。
「トキさんの特技を見せてください」
「それじゃあ歌うわね」
♪わたーしはートキー
♪ジャパリまんーがー好きー
♪でも歌うーのがーいち番ー好きー
普通の話し声から一変、特徴的な声で歌っています。
「歌が好きな気持が伝わってきますね! 合格です!」
「うふふ、やったわね」
ギャラリーの中には、耳を抑えるフレンズもいたが、みんなの反応は上々です。
トキちゃんも、嬉しそうな表情をしています。
おほんと、マーゲイが咳払いをして、話し始めました。
「それではオーディションはこれにて終了です! 皆様お疲れ様でした」
パチパチとみんな拍手して、この場は解散になりました。
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少し時間が経ちました
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オーディションが終わったあと、キュルルたちの方へ、マーゲイちゃんが近づいてきました。
「もしかして、あなたがキュルルさんですか」
「え……そうだけど」
どうやらマーゲイちゃんはキュルルたちのことを知っているようです。
「かばんさんから話は聞いています。
キュルルさんのおうちの件で力になってくださいって。
お客様に何か知っていることがないか聞きますので、情報があればすぐに伝えます。」
「かばんさんから?」
「ええそうです。ラッキービーストを通じて、連絡がとれるんです。」
どうやらかばんさんの方で、キュルルのために動いてくれていたみたいです。
「ありがとう! マーゲイ! 私はサーバル!」
「私はカラカルよ」
「はい、あなた達のことも伺っています!」
「……ところで、ヒトであるキュルルさんに一つ相談していいですか?」
「うん。いいけど、なにかな?」
マーゲイから、ある相談を持ちかけられました。
「実は、今回行う演技についてなのですが、題目は【ペンギンの戦士たち】を予定しているのです。」
「それってどんな話なの?」
「それはですね、はるか昔……」
~はるか昔、ヒトとフレンズが仲良く暮らしておりました。~
~しかし、突然、恐ろしいセルリアンが現れ、大暴れしました。~
~みんな、セルリアンにおびえて、逃げていたところに、五人のペンギンの戦士たちが現れました。~
~ペンギンの戦士たちは、恐ろしいセルリアンを倒して、ヒトとフレンズを守りましたとさ~
~めでたし、めでたし~
「……という話です。」
「へえ……」
「すっごく強いんだね! ペンギンの戦士たち」
キュルルにとっては思った以上に短い話に思いました。
それとは対象的に、サーバルちゃんとカラカルちゃんは関心があるようです。
「私がこの話を読んだ時、この五人の戦士たちがペパプのことに思えたんです。
私にとって、初めてペパプを見たときから、憧れのヒーローだったんです!
だから絶対この題目をペパプのライブにやろうと決めたんです。」
「そうなんだ」
マーゲイちゃんの話から、ペパプに対して、凄まじいまでの情熱を感じました。
「そこで相談なのですが、ヒトとフレンズが、どのように仲良くしていたのか、ヒトであるキュルルさんに教えてほしいのです。」
「なるほど」
(僕が、どのように仲良くしていたのか、か)
キュルル、サーバルちゃん、カラカルちゃんの三人は、ブランコ、ボール遊び、輪投げ、パズル、相撲、紙相撲、マラソン、それらの旅の思い出をマーゲイに伝えました。
「すごい参考になります! 三人は本当に仲良しなんですね!」
「うん! そうだよ!」
マーゲイちゃんの感想に、サーバルちゃんは元気よく答えました。
「今まで、いろんな冒険して、いろんなフレンズにあってすっごく楽しいんだ!」
「まあ、そうだよね」
キュルルはサーバルちゃんの言葉に、同意しました。
自分自身、いろいろな経験をして、楽しくないといえば嘘になります。
そんな時、カラカルちゃんが小声で、つぶやきました。
「ずっと三人で旅ができたらいいのに」
「え?」
キュルルはカラカルちゃんの言葉が聞こえなかったので、聞き返しました。
「なんでもないわよ!」
「あはは、カラカルぅ」
どうやらサーバルちゃんには聞こえてたみたいです。
「キュルルちゃん、おうちが見つかっても、また三人で旅しようね!」
「サーバル……そうだね。」
(僕のおうちが見つかったなら、それもいいかもしれない)
そして、キュルルはマーゲイさんの方を向いて、話題を変えました。
「マーゲイさん、もしよければいくつか質問していいかな?」
「はいなんでしょう?」
キュルルはいくつかの疑問を、マーゲイに尋ねました。
「この絵に見覚えあるかな?」
そうしてキュルルが差し出した絵は、五人のペンギンのフレンズが書いてあります。
「どう見てもペパプですよね?」
「いや、この絵は、僕が記憶を失う前の、つまりニ千年前に書かれた絵なんだ。」
そういって、キュルルは自分がこれまで考えてた推論をぶつけます。
「さっきの【ペンギンの戦士たち】って、ヒトとフレンズが仲良く暮らしていたときの話なんだよね?
これってさ、パーク閉園前に実在した戦士たちを書いた絵なんだと思うんだけど違うかな?」
「……」
そのキュルルの言葉に、マーゲイは黙って考え込みました。
そして、少しして、口を開きました。
「それはありえないですね」
「え!?」
キュルルは驚きました。
マーゲイは続きを話し始めました。
「私が読んだ【ペンギンの戦士たち】って絵本は、パーク閉園後に作られたフィクションなんです。
製作者はかばんさん……今のかばんさんではなく、世代交代する以前のかばんさんのうちの誰かが、フレンズたちに文字を教えるための教材として作成したものなのです。」
「……つまり、マーゲイが文字を読めるのって」
「平たくいえば、かばんさんのおかげですね。
ちなみにですが、みんながみんな読めるわけじゃないんですよ。文字に興味があるフレンズが、文字を読めるフレンズに、いくつかある教材を使いながら教えてもらっているんです。」
(文章が簡単だったのってそのためなのか……かばんさんって、実は本当にすごい人なんだなあ)
「かばんちゃんってすごいんだー! 文字とか全然知らなかったよー」
「私も全然興味なかったからね」
サーバルちゃん、カラカルちゃんも感心しています。
「ですので、この絵はおそらく、初代ペパプ……だと思うのですが、少し変なんです。」
「変?」
「初代ペパプは四人メンバーなんです。五人メンバーになったのはもうすでにパークが閉園してた三代目からですし……
真ん中のロイヤルペンギンは初代メンバーに含まれていないはずなんです」
「え……」
キュルルはおぞましい寒気を感じました。
なぜなら、考えれば考えるだけ、自分が何者なのかわからなくなってくるからです。
たとえ二千年前とは言われても、パークの来場客という手がかりがありました。
それすら怪しいとなると、何もかもが恐ろしくてなりません。
「……今のペパプって何代目?」
キュルルは声を絞り出しました。
「百五十三代目です」
ある程度の覚悟はしていたものの、実際に突きつけられた現実にキュルルはクラクラしました。
「キュルルちゃん! 大丈夫?」
キュルルの様子に気づいたサーバルちゃんは心配してくれています。
「……うん、大丈夫だよ。ありがとう。」
強がるキュルルにサーバルちゃんとカラカルちゃんは何も言えませんでした。
マーゲイちゃんもキュルルの様子を案じています。
「すみません。私が余計なことばかり言ってしまって……
キュルルさんを不安にさせてしまいました。」
「いや、いいんだ。マーゲイさんは悪くないよ」
キュルルはマーゲイちゃんに気を使わせたくなかったので、そう励ましました。
「では、休憩を挟んだ後に、ライブが始まりますので、ぜひ見てください」
「ありがとね、マーゲイ」
サーバルちゃんはそう言って、キュルルとサーバルちゃんとカラカルちゃんはその場をあとにしました。
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少し時間が経ちました
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もうすぐライブが始まります。
席についたキュルル、サーバルちゃん、カラカルちゃんはライブが始まるまでゆっくり待っていました。
しかし、突然サーバルちゃんが立ち上がりました。
「ごめん、ちょっと用事ができたみたい。ふたりともライブを見て待ってて」
「え? どういうこと?」
キュルルの返事には答えず、会場から離れていきました。
「まあ、キュルル、私達はライブを見ましょ」
「う……うん」
カラカルちゃんはそう言いました。
実はカラカルちゃんは、サーバルちゃんがどこに向かったのかすでにわかっています。
(音とか気配とか……セルリアンが近くにいるわね。任せたわよサーバル。
キュルルは一人にしておけないから、私はここにいてってことでしょ。)
そうして、オープニングアクトの演劇、【ペンギンの戦士たち】が始まりました。
~はるか昔、ヒトとフレンズが仲良く暮らしておりました。~
ナレーションで話しているのは、どうやらマーゲイです。
舞台から出てきたのはタヌキちゃんとトキちゃんです。
♪わたーしはートキー
♪そしてわたしはヒトー
ミュージカルのように歌いながら入ってきました。
タヌキちゃんがヒト役のようです。
♪私達はとっても仲良しー
♪ボールを一緒に投げあうのよー
そうして、二人はボールを投げあいっこしています。
~しかし、突然、恐ろしいセルリアンが現れ、大暴れしました。~
するとステージにセルリアンのかぶりものをかぶったフレンズが現れました。
中にふよふよ浮いています。
どうやらパフィンちゃんが中に入っているようです。
そしてセルリアンはヒト役のタヌキさんに近づいて……
「食べちゃうぞーパクっ」
「うひゃあああ!」
タヌキさんを口に加えて中に浮きました。
トキちゃんは悲痛な声で言いました。
「私じゃあのセルリアンにはかなわないわ。誰か助けて!」
~みんな、セルリアンにおびえて、逃げていたところに、五人のペンギンの戦士たちが現れました。~
「待たせたわね!」
そうしてステージに現れたのは五人のペンギンのフレンズさんでした!
みんなを引っ張る、ロイヤルペンギンのプリンセス
温和で天然、フンボルトペンギンのフルル
クールなリーダー、コウテイペンギンのコウテイ
明るくて、何事にも一生懸命、ジェンツーペンギンのジェーン
元気が一番、ワイルドな乙女、イワトビペンギンのイワビー
「助けに来たよー」
「か弱い人々を守るのが私達の使命だ!」
「どんなセルリアンでも、私達は負けない!」
「そんじゃロックにおっぱじめるぜー!」
そうして、五人のペンギンたちは、一斉に腕を振って、セルリアンに攻撃する演技をしました。
その瞬間、ステージから花火があがりました。
きらびやかな演出に観客はわきました。
「あーれー」
そうして、セルリアン役のパフィンちゃんはタヌキちゃんを離して、飛び去りました。
「助けてくれてありがとう」
「ありがとう。あなた達、強いわね。」
たぬきちゃんとトキちゃんは戦士たちに感謝しました。
~ペンギンの戦士たちは、恐ろしいセルリアンを倒して、ヒトとフレンズを守りましたとさ~
~めでたし、めでたし~
観客席から、おおきな拍手と歓声がわきました。
そして、ステージの真ん中に、ペパプの五人が集まって、一拍をおいた瞬間、音楽が流れました。
「それじゃあみんな! 新曲よ!」
わーっと会場が沸きました。
ペパプの歌と踊りに、キュルルも舌を巻きました。
この演劇が始まってから、ライブを見ている間、暗い気持ちが吹き飛んだかのように忘れていました。
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そして、ライブが終わったあと
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「すっごく楽しかったね! カラカル」
そうして興奮するキュルルに対して、カラカルちゃんは何か考え込んでいます。
「……っええそうね! 楽しいライブだったわね」
なんだか変な様子です。
「ちょっと私、サーバルを探してくるわね。キュルルはここで待ってなさい!」
「え……カラカル!」
そういってカラカルは走り出しました。
(どうしたんだよ。ふたりとも。)
最高のライブを見たはずなのに、なんだか面白くありません。
むしろなんだか、のけものにされたみたいで最悪な気分です。
(事情を聞かないと収まらない!)
そして、キュルルはカラカルちゃんを追っていこうと、観客席から移動した直後、後ろから誰かに捕まりました。
そして、そのまま木で作られた檻に投げ入れられて、閉じ込められました。
「うわ!」
(一体何なんだ!)
「やっと捕まえましたよ」
「これで依頼達成だね、センちゃん!」
「依頼主に届けるまでが依頼よ」
そうして、キュルルは二人組みのフレンズに捉えられてしまったのです。
●第8話 完
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