第6話 下の毛のコンプレックス

 みんな、だれでも自分の顔とかカラダにコンプレックスがあるものだと思うけれど、私にもいくつかある。その中の一つ、一番恥ずかしいことが、「毛が生えてこない」ことだ。どこの毛かと言えば、普段は見えない、その部分のことだ。髪の毛は十分すぎるくらい生えてるし、まゆも自由に形を作れるくらい普通に生え揃ってる。でもそれ以外が、ほぼ無毛なのだ。

 腕や脚、それから脇なんかは、みんな脱毛に時間がかかるとか、お金がかかるとか、自分でやるかサロンでやるか、剃るか、抜くか、などなどいろいろ苦労があるのは、学校でも友達同士の話題の一つなので私もよくわかっている。脱毛で肌が荒れたとか、剃ると生えたての毛が醜いとか、そんな話はよくよく友人たち同士が苦労談として話している。で、その部分だけであれば、私はこの手の苦労は全くない。なにしろ腕も脚も、それから脇の下も生えないのだから。


 でも、人知れず悩みなのは、あの部分も生えないということ。もちろんあの部分も全部脱毛してしまっている人はいると思うけど、私の今まで見たことある中ではたぶん多数派じゃない。というか見たことがない。友達でも多分誰もやってない。部活や合宿の温泉とかで、友人先輩後輩の裸を見る機会は多いけど、毛がない人なんか多分誰もいない。すごく薄い人とか形を整える人はいるだろうけれど、「まったくない」ひとは見たことがない。

 ところが私は幼い子供みたいになんにもないのだ。だから普通の姿勢で歩くと小さいお尻が前についているみたいにその形まで見えてしまうのだ。生々しくて嫌だ。

 とにかく、これが私にとっては苦痛なくらい恥ずかしいのだ。仲の良い友人だと、初めて私の裸を見たときに、え、そこも脱毛してるの?と端的に聞いてくるので、生えないのだと説明できる。それで、「えー、いいねー、さっぱりしてて」とか言ってくれる。でも仲の良い友達でない限り、当然、毛のことなんか聞いてこない。きっと、「この子、そこも脱毛してる。しかもそんなに大胆に。」と思われてるかもしれない。性的に、例えばよからぬ男性経験などがあって、そういう風に脱毛しているのだろうと、思われているかもしれない。あるいはちょっと変態的な嗜好をもっているのかもと思われてしまうかも知れない。そうだとしたらお風呂とか着替えとか人前で服を脱ぐのが本当に恥ずかしくなる。私は男の人との関係なんて、もちろん一度もないわけだし、そんな風に思われてしまってるとしたら本当に屈辱だ。

 私には生えないってこと知ってる友達だって、「いいねー、さわらせてー」と言ってくることもよくあって、私のその部分を無邪気になでなでしながら「すごい!かわいい、触り心地いい!」とか。褒めてくれてる(慰めてくれてる)のかも知れないけど、私にするとこういうのも、やっぱりいい感じはしないのだ。


 でもオトナの女の人の間では、性的に奔放すぎるわけじゃない人でも、変態的な思考を持っているわけではない人でもその部分も処理する人が増えてきているという話を聞いたりする。身だしなみの一部とのこと。もし本当なら、私もオトナになれば、毛がないことは悩みじゃなくなるのかな、と、将来に希望を持ってみたりしている。


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