第3話 ハサミの手品
私は相変わらず、アシグセが悪くて椅子に体育座りしたり機嫌が悪くなると1人ベランダに行ってはベンチを蹴っていた。
変わらぬ行動、変わらぬ日々、流れゆく時間。
焦燥感が私の中ですべては足の暴走に任せるように抑えきれなかった。
同じようにねぇさんの綺麗な紫煙は濃くなり、へらぁと笑う子の肌色はさらに白くなっていった。足の悪さと吐き出す紫煙はふえてゆくのに、へらぁと笑う彼女は相変わらずなままだった。
髪を切りたいな、伸ばしていたロングの髪を思いっきりバッサリと、アシンメトリーにして、刈り上げて脱色して、そう、きれいな月のような色に。
走り出していた、書類にサインしてギギィと思い扉を蹴飛ばして、信頼している美容師のもとへ。
「あら、久しぶりね、伸びたわねーまぁた放置して伸ばしてたんだから先っちょだけ色がちがうじゃないの」
そう彼女は笑うと何も言わない私の頭を理想通りに仕上げてくれた。黙り込む信頼。言葉を交わさぬ会話。通じる意思。居心地がいいような悪いようなくすぐったさ。
私はお代を払うと最後まで無言で帰った、重たい扉の向こうへ。
次の日、あの子は自らのハサミでザンバラ頭を使って、へらぁ、と笑った。
白い部屋。 久保香織 @kaori-s
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