諦念乱立 -9-
ハクは青く透き通った矛を右手に構え、レンライは地を這うように低く屈む。
「それじゃあ位置について、ヨ〜〜〜イ……」
少女の肢体は
「
宙へ弾け飛ぶ腐葉土。
先制を仕掛けたのはレンライだった。
人並外れた瞬発力はやはり獣。
木々の間を縫うようにすり抜け、滑るように地面を走る。
目の前に姿を現したかと思えば森に隠れて姿を眩ます。
一瞬のうちにハクとの距離を詰めた少女は獲物を狩るように
「疾いな」
ハクは少女の攻撃を後方に跳ねて避け、矛を振り抜き応戦する。
「とか言って反撃してるじゃん。嫌味なやつ!」
一撃、二撃と続く攻撃にハクは対応しきれていた。殴打を
しかしハクの攻撃も直撃には至っていなかった。
「やるね〜」
地の利はレンライにある。
少女は人間離れした動きで木の幹までも蹴って走り、縦横無尽に森を跳ねる。
目を開けている時間、まばたきまでの数秒。
撃ち込まれる手数が次第に増えていく。
振りが大きい矛では反撃の隙が作れない。
追うのがやっとの状況でハクは防戦一方を強いられた。
「獲ったあぁーーー!!」
上空からの獣の一撃。
迎え撃つように振り上げた矛先は少女を捉えることなく空を切る。
空中で体を捻って攻撃を避けたレンライが姿が視界の隅に消えた。
「くっ……」
眼下から
少女の小柄な身体には見合わない力で、軽鎧を纏った少年は蹴飛ばされた。
「あれ〜、なまってるんじゃな〜い?大丈夫?そんなのでワタシを止められる??」
立ち上がり、体勢を立て直すハク。
対して、首や腕をぐるぐると回すレンライは準備運動でもしているかのようだった。
「ばってん硬か鎧やね〜。そげん硬かなら自分の身だけは十分守れるばい。――あっ、今のはなまってるって言葉にかけた高度なジョークで――」
「……お前のそのふざけた態度はいつも苦手だった」
「それはお気の毒に」
ハクが詰め寄り、走りざまに矛の石突き付近まで持ち手を下ろした。
遠くからの一撃であれば相手との距離を取れる。
攻撃を加えるにしろ受けるにしろ余裕ができる。
「うんうん。解るよ、それ。だけど直線的な振りは読まれやすい。上に振り上げたなら――――横に躱してカウンター!」
レンライに向かって振り下ろされた矛先はまたしても空を切り、地面に深く突き刺さる。
飢えた爪が肉に
次の瞬間、ハクは矛を支点として弧を描くようにくるりと宙を舞い――
「にゃっ!」
避けると同時にレンライの後ろへ回り込んで力一杯に背中を蹴飛ばした。
今度はレンライの身体が吹っ飛び、そのまま木に叩きつけられた。
「これで相子だ」
へなへなと尻尾が垂れ下がる。
「……クソが。……ぶっ壊してやる」
罪人の海 秋月漕 @imshun
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