一人か、独りか。

 10月スタートドラマ『まだ結婚できない男』を楽しみにしている。

 シリーズ1作目の放送は13年前の2006年で、当時、見ていた頃はまだ学生でした。主人公の桑野を見ながら「こんな人、結婚できるわけないじゃん」と他人事に笑っていた。13年後、あい変わらず独身で続編を見ることになるとも知らずに。桑野を演じた阿部寛はこの間に結婚してしまった。


 ひとり暮らしも10年を越えて、そろそろ人生の半分をひとりで暮らしていることになる。ひとりでいる期間が長いと、人はどうなるのか。よく言われるのが、一人言が増えるということだろう。


 ひとりだし、おかしなことでも言いたくて「だっふんだ」とか言ってしまうことがある。だれも聞いてやしない。言ってやったぜ、と思う。すると、それがなぜか頭の中では、「脱糞だ」と自動変換されてしまう(トイレ中は特に)。自動だからしょうがない。だから、変換されたときは「だっふんだ、だっぷんだ」と言い直すことになる。ひとり暮らしは大変だ。

 他にも「すごい!」とか「死にたい」とか突然言う。「すごい!」は人から言われたい言葉の第1位だから、代わりに自分で声に出して言ってみる。でも、ただそれだけではあまり自分が言われている気にならないので、試行錯誤の結果、できるだけ部屋の隅っこに立ち「すごい!」「尊敬します!」「かっこいい!」と鼻先に迫る壁に向かって発声して、その反響を客観的に聞き、ふんふんと満足する。時々、隣の住人も賛同して壁をトントン叩いてくれる。ありがたい。

 また、「死にたい」はそのままの意味だけど本当に死にたいわけじゃない。絶対に死にたくはない。その意味は、ただ現状から抜け出したいというだけだから、「死にたい、いや、生きたい」と付け加えて、神様に聞こえるようにお願いする。ひとり暮らしだからって、決して静かではないのだ。


 上で言ったようなことを一切隠して、僕はひとり暮らしを人によく勧めている。


「ひとり暮らししてみたくて……」

「絶対した方が良いよ! 洗濯とか料理とか、してもらえるのが当たり前じゃないんだよ? 朝帰りも自由だし。夜も好きに徘徊できるし」


 ひとり暮らし最高だよ、と。

 本当だよ、と。




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 『まだ結婚できない男』

 10月8日スタート 毎週火曜よる9時

 初回15分拡大!!

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