ようなのように、比喩る。

比喩をマスターしたい。

文章を書いていて面倒くさがりな性格が邪魔をすることがある。あー、もう思いつかん「なんとも言えない」って言っちゃえ、とか。もう全部「不思議な」「妙な」で済ましてしまえ、とか。投げやりになって、言葉を探す作業を放棄することがあります。「言葉では言い表せない」という表現は作家にとって逃げではないかとも思います。そこは何に例えてでもそれを表現すべきだし、できればぴったり当て嵌まる比喩を使用したい。

ということで。

世界一の比喩使いになってやるよ!!

(ヒユー!ヒユー!)

のように寒い朝。


【問1】 「泣く」

(大泣き)蛇口をいっぱい捻ったように泣く

(半泣き)結露のように溜まる涙

(うれし泣き)涙腺の栓が破裂して流れ出す


【問2】 「笑う」

(大笑い)壊れたおもちゃのように笑う

(あざ笑う)ナイキのような口角で笑う

(愛想笑い)顔に貼り付けたような笑い


【問3】 自由に例えてみよう

・油絵のような爺ちゃんの顔

・満員電車のような立ち飲み屋

・ビートルズが演奏したような出囃子

・猫の尾が起こしたような風

・3Dプリンターで複製されたような親子


難しいですね。上手くなりたいものです。

次は、物語の中で実際に使って練習してみます。


【実践】 比喩を使って短い物語を書いてみよう


(※この先、比喩が多分に含まれます。気分が悪くなったら一度ご休憩ください。)


朝のような夜だった。赤子のように頬を赤らめたヨウナは、腹の前でラッコのようにカイロを手でこすりながら、ブロッコリーで作ったピラミッドのような山の頂上を目指して修行僧のごとく黙々と歩いていた。打ち切りドラマの埋め合わせ特番のように降って湧いた天体観測イベントにヨウナのような学生が参加してくれるとはまさか米粒ほども思わなかった。一見、四人家族のように見える私たちは、『チーム流れ星』という〈佐藤〉や〈鈴木〉のように石を投げれば当たるほどありふれたオンラインコミュニティのオフ会として今日初めて顔を合わせる。集まったのは、娘のように見えるヨウナ。ホームステイ中の留学生のように見えるヒュー。元ヤンで若くして結婚と離婚を経験した二児の母のような喩美ゆみさん。そして家庭を顧みない父のような私の四人である。

「後藤さん、打ち切りドラマの埋め合わせ特番のように降って湧いたオフ会に誘っていただいてありがとうございます」

喩美さんが清流のように淀みなく言った。

「いえいえ。こうして皆さんにお会いできて一番くじでラストワン賞が引けたくらいうれしいです」

主催者の私は初めてチーム流れ星で集まれたことに喜びを感じていた。一方、ヨウナは浮かない顔でハイブリッド車のように静かに歩いていた。

カップ麺を五個連続で作り終えたほどの時間が経過して、ようやく私たちは頂上に到着した。

一番太いところが本場のバームクーヘンほどある望遠鏡の準備を進めるなか、ヨウナが夜中急に動き出した冷蔵庫のようにふいに言った。

「喩美さん、流れ星に三回願い事すると叶うって本当かな?」

思い詰めたように話すヨウナの顔が、食欲がなく窓から外を静かに眺めて過ごす猫のように見て取れて心配になる。喩美さんは絵本を読み聞かせるときのように優しい声で言った。

「私は叶うと思うよ。いつ流れるかわからない流れ星に三回も願い事が言えるんだもん。それってほんとに夢を叶えるためにいつも頑張ってる人でしょ」

喩美さんは微笑みながらヨウナの手を握ってやる。ヨウナの顔が白熱灯からLED電球になった。

そのとき、間違って反対方向の電車に乗った男のようなテンションで突然騒ぎだしたヒューが夜空に向かって叫んだ。

「スバラシイデス。ライク、ナガシソウメン!!」

四人は夜空を見上げる。私は、まだのび太と同じ年頃だった頃に、今では重要文化財のような古い実家のベランダで見た〈しし座流星群〉を思い出した。

突然、夜空で催される流し素麺を囲んで即席の四人家族は、互いに誰も知らない胸の内に抱えた願い事を心の中でマクドナルドのポテトが出来上がった合図のリズムで反芻した。


終。



比喩は用法・用量を守って正しくお使いください。

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