第5話甘えていい?

授業が終わり教室では帰る準備をする者や部活の準備をする者がいた。


その中で俺は誰にも見られないように極限に影を薄めて教室を出て、今昇降口で人を待っていた。


早すぎた為か昇降口には、まだ誰もいなかった。


人というのはこの学校で一番の美少女の鷹宮だ。

何のために?と問われると一緒に帰る為だ。

学校一の美少女と一緒に帰る、と羨ましく思うかもしれない。


だが、学校一の美少女と言ってもそれは見てくれるの話でこの美少女、性格が悪い。

今日屋上に呼び出されるまでは、どうせ噂だろと思っていたが身を持って理解した。


これだから三次元は嫌なんだよ!


そんな事を考えているとようやく来た。

そして鷹宮は何かニヤニヤしていた。


やだなぁ……鷹宮と帰るの。

そんな事を考えていると鷹宮が来た。


「よっよう」

「ごめんなさい、待たせたかかしら」

「あっああ、いや俺も今来たとこ」

「うふふ、そんな事言って10分くらい待ったんじゃないの?」

「そんな訳ないだろ、じゃあ、早く帰ろうぜ」

「そうね」

「ふぁい!?」


俺の腕は鷹宮に絡め取られた。

それだけじゃなく鷹宮の豊かな胸が当たっていた。


うわっ………………やっぱり大きい。いいかも。

でも、恥ずかしいわ。

この恥ずかしさに耐えられず俺は言った。


「この腕、恥ずかしいから外してくれない」


俺は内心ビクビクと怯えていた、命令に刃向かった事になるんじゃないかと。

だが、そんな事はなく。


「大丈夫よ、誰か来たら外すから」


鷹宮はニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべて、そう言った。


ええ!あの鷹宮がこんな事するなんて。

いつも人をゴミを見るような視線を送っていて、当たりが強い物言いをするあの鷹宮がこんな事をするとは思えず俺は驚いていた。


結局腕は外される事なく帰路についた。


*******************


俺は今閑静な住宅街を歩いていた。

いつもなら静かで良いのだが今だけはこんなにも静かなのが恨めしい。


何故かというと沈黙が続いているからだ。


思えばこの気まずい状況になるのは分かっていた。

鷹宮から一緒に帰ると命令されてから午後の授業の時に考えとくんだった。

はぁ〜やっぱり俺はダメな奴なんだ。


俺が自虐的にならながらもチラッと鷹宮の方を見るとちょうど通り過ぎた公園を鷹宮は見ていた。


俺は鷹宮が見ている方向の公園に目を向けた。公園では小さな女の子が木の下で泣いていた。


どうやら手を離してしまい風船が飛んで行って木に引っかかってしまったらしい。


俺はそのまま見なかった事にして通り過ぎようとした。

だが鷹宮は既に泣いている女の子に向かって行っていた。

しょうがないなぁ〜〜という思いながら俺はその後を追った。


鷹宮の方が先に歩き出した為早く着いていた。


俺が二人の所に着いた時には遅かったらしくいつもの強い物言いは幼女にも炸裂していた。


「あなた、泣いて人の助けを待つんじゃなくて自分で何とかしようとしなさい。そんなんじゃ誰も助けてくれないわよ」


俺は普通に女の子が可哀想になった。

というか、さっきまで凄い甘えてきたのに、今はいつもの嫌われてる鷹宮だ。


鷹宮は今は一応俺のご主人様という事になっているのであまり鷹宮を刺激しないように出来るだけ言葉を選んで言った。


「まあまあ、でどうして泣いてるの?」


って、なんとなく理由は分かるんだけどねーー。


俺は一応女の子に泣いている理由を聞いた。


「ぐすん…ぐすん。ふ、ふ風船が〜〜〜」


と言いながら俺たちの頭の上で木に引っかかっている風船を指差した。


「う〜〜〜ん、どうかなぁ〜〜」


俺は苦手な物は努力でなんとかしてきたが唯一ダメなのが運動なのだ。

俺には運動のセンスが絶望的で中学時代にサッカーの試合で目の前に転がってきたボールを取ろうとしたら、触んな!!と怒鳴られた程だ。

それからか俺は球技の試合中なんかは幻のシックスマンばりに影を薄めている。


あっと、そんな余計な事は今はいいんだ。

俺は解決策というか、どうやって取るかを相談しようと鷹宮の方を向き尋ねた。


「何か解決策って思い付いたりする?」

「一つだけあるわ。あなたが四つん這いになってあなたをの背中に乗れば届くかもしれないわ」


うわぁーーーー!!きたよ!きちゃったよ下僕ごっこぽっい事!!


はぁ〜これを機にドンドンエスカレートしてかないかなぁ、してかないと良いなぁ〜。


もう俺の目からは生気が失せていただろう。


「分かりました。ご主人様の仰せのままに」

「??」


俺は小さい声でそう言った。

鷹宮には聞こえておらず頭に?を浮かべていた。


俺はフラフラと歩いて風船のちょうど真下に行き四つん這いになった。

そして鷹宮が俺の背中に乗ってきた。


はぁ〜〜俺変な性癖に目覚めないかな大丈夫かなぁ。


「う、うっ………よいっしょっと」


俺が自分の心配をしているうちに背中に乗っかっていた重みがなくなった事で風船が取れたんだと俺は思った。

そう思い立ち上がった。


立ち上がると女の子に風船を渡している鷹宮がいた。

鷹宮は女の子に何か言った後に俺の方を指差した。


ん?なんだろ。


すると、女の子は風船を手に持ち走って俺のところまで来た、そして女の子に付いてくる形で鷹宮も来た。


「おにいちゃん、ありがと」

「大丈夫だよ、気をつけて帰れよ」

「うん」


女の子はぺこりとお辞儀して帰って行った。


「良かったじゃない」


鷹宮は何故か頰を膨らませていた。


嫉妬しているのか?


俺がそんな事を疑問に思っていると鷹宮は俺の目を見つめてきた。何か重要な話をする雰囲気だった。


「私……あなたに甘えても、いいかしら?」

「あ?ああ別にいいよ」


えっええーーーー!?

どうせ下僕の俺には断れないからとオーケーしちゃったけど大丈夫かなぁ?


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