第3話俺です!

俺は今間違いなく奇妙な事態に陥っていると思う。何故なら学校で女の子に下僕になれ、と言われているからだ、しかも学校一の美少女に。

だからあんな変な声が出てもしょうがないと思う。

まあ、今はそんな事はいい。この頭のおかしい美少女に理由を聞いてみよう。


「なんで、俺がげ、下僕にならないといけないのかな?」


ここで学校での俺のいつも笑顔で優しくカッコいいという完璧なイメージを崩さない為にも笑顔を崩さなかった俺を俺は内心で褒めちぎった。


「別に誰でも良いのよ」

「じゃあ、何で俺なんだよ」

「それは、あなたの弱みを握ってるからかしら」


弱みなんて思い当たるのは一つしかない。そう、俺がオタクだということ。

俺は間違いなく怯えていた。心なしか膝が震えていたと思う。


「弱みってなんだよ」


本当に弱みを握っているのか聞いてみた。


「あなた、オタクなんでしょう」


知ってたーーーーーーーーーー!!!嘘だろ!!いつだ!いつバレた!いや、まだだ。

証拠が無いから大丈夫だ。


「オタク?俺が?そんな訳ないじゃん、あはは」


俺の乾いた笑いは屋上に続く階段に響いていた。

そうだ証拠が無いから大丈夫じゃん。焦って損した!

しかし鬼畜美少女は携帯を操作して俺に何かを見せてきた。


「これ、あなたよね?」


そこに写っていたのはラノベを買っている昨日の俺だった。

あったよ証拠!あっちゃったよ証拠が!何してんだよ昨日の俺!

と、心の中で叫びまくった。



「お、お俺です」

「え?なんて?」


小さい声で聞こえなかったのかもう一度聞いてきた。


「俺です!」

「そうよねあなたよね」

「なんで俺なんだよ」

「あなたが何か隠してそうだったからかしら」

「なんでこんな事するんだ」


確か家もお金持ちで頭も良くて運動神経も良いおまけに顔もスタイルも良いと完全に勝ち組みなのになんでこんな貴族の道楽みたいな真似をするんだ。


「それは好きだから、かしら」

「なっ」


俺は言葉を失っていた。

コイツ下僕ごっこが好きなのか。このご時世に奴隷とか下僕とかはいないんだぞ。まあ、だからこそ俺を下僕にしようと脅してるんだろうけど。

流石金持ちのお嬢様だ、おねだりが規格外だ。

俺はもう逃げれ無い事を悟った。


「分かったよ付き合ってやるよ(下僕ごっこに)」

「そうよ、最初からそう言えば良いのよ」

「で、俺は何をするんだ」

「そんなに難しい事はないわ、ただ私と一緒にいてくれればいいのよ」


コイツ今命令って言おうとしてなかったか。

鷹宮の顔はあのいつも澄ましていた顔では考えられ無い程ニヤニヤしていた。

そんなに下僕が出来た事が嬉しいのかよ。


「分かったよ。でも、絶っっ対に言うなよ。それじゃあ」

「待ちなさい」


そそくさとこの場から立ち去ろうとしたら引き止められた。


「はぁ〜〜〜、今度は何?」

「あなたの連絡先を知らないと不便だから交換しましょう」


それにしても、こんな形であの鷹宮と連絡先を交換するなんて最悪だ。

連絡先も交換して今度こそ教室に戻ろうとしたら最初の命令が下された。


「まずは今日一緒に帰りましょう」

「はいはい分かりましたよ、昇降口で待ってます」


そう言うと俺は今度の今度こそ教室に戻って言った。


************


教室に戻って自分の席に着くと優吾とミエがきた。


「おいおい、また告られてたのか?」


優吾はいつも通りゲスな笑いを浮かべている。

学校一の美少女に下僕にされるという状況に少なからず怯えていた俺だが、 この気持ち悪い笑顔はいつも通りで今だけは安心するな。

そんな事を思いながら俺は優吾の質問に返した。


「今回は違うよ」

「前にも言ったけど、その笑い方やめなさいよね。見てて寒気がする」

「そんな事ないよ、優吾の笑い方は見てて安心する」


俺がそんな事を言うとミエは若干引いていた。


「流石分かる人にはわかるんだよって、そんなことよりじゃあ何しに行ってたの?」

「それはちょっと………言えない、かな」

「珍しいわね基本オープンな神尾くんが教えてくれないなんて」


俺と鷹宮の関係だけは絶対にバレてはいけない。

最悪オタクだということがバレてもいい。なぜなら、どうせボッチになるだけだからだ。(まぁどちらもバレない事に越したことはないのだが)

だが、鷹宮との下僕とご主人様っていう関係は誰にも知られてはいけない。俺がドM の変態野郎と言われるんじゃないか、俺は普通のノーマルなのに!


授業が始まるチャイムが鳴った。


でも、鷹宮に馬乗りにされるのは悪くないかも。

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