第2話 ゆーうつ

 目が覚めた。寝ている間にも、他は動いているかと思うとなんだか悔しい。僕が寝ている間に何が起きているか気になる。でも別に知る由も無い。ただ一日の三分の一寝ていることになってしまうのは、その時間で勉強すればもっと頭良くなるんじゃ無いかとか、考えてしまう。大体、よく寝た方がいいとか言うけど、寝てばかりでもダメだなんて、小学生によく言えるもんだ。


 そんなことをノタノタと考えているうちに5分くらい経っていた。その時間にこそ勉強した方がいいと言われても、時間は過ぎたんだし仕方がない。


 一階に行って朝食を食べていたら、テレビでこんなニュースを見た。

「昨日午後4時半ごろ、川沿いの歩道にバイクが衝突し、通行人だった小学二年生の男児が死亡しました。」

 毎日のようにこんなニュースを聞くけど、なんか実感がわかない。僕の知らないところで、当たり前に生きていた子が突然いなくなるんだもんな。昨日まではこんなこと気にならなかったのに、急に胸が痛んだ。朝食に食べたものがわからなかったくらい、テレビにかじりついていたみたいだった。

 ニュースなどどうでも良さそうに煮干しをひたすら噛み砕いている猫が羨ましくなった。



 むやむやした気分のまま、いつも通りのバスに乗って学校へ向かった。朝はたくさんバスが出ていて、ちゃんと8時に学校に着く。


 教室に入れば、いつもの景色が広がっている。でも、いつもは顔を見るのも嫌なくらい嫌いな奴も、今日はやけにいい奴に見えた。今朝のニュースのせいでどんよりしていたから、見慣れた顔が恋しくなっていたんだ。気が強くて、気弱な僕に怒ってばかりだけど、いざとなると優しくさえ見えた。でも今日は、午前中で授業が終わる。普段は喜ぶのに、学校にいたいときに限ってこうなるから、本当についてない。



 そうして4時間目の授業が終わり、掃除もして帰る時間になった。いつもとは違う時間帯のバスに乗る。「また逃して、雨でも降られたら……。」つい声に出してしまった。独り言なんてそう滅多にしないのに。そして、1番聞かれたくない人に聞かれてしまった。

 さっきの気が強くて僕に怒ってばかりのやつだ。案の定睨まれたけど、すぐに大勢の友達と楽しそうに帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る