第1話 雨に降られて
タッタッタッ……
学校の帰り道、バスを逃して、夕日が落ちたての薄気味悪い空を時々見ながら急いでいる。いつもはバスで通る道も、外に出るとこの時間は出汁と炊けたお米の匂いでいっぱいだった。小走りする足とこの匂いのせいでお腹が空いた。ぐぅーっとお腹が鳴った。一番星が見えてもっと速く走った。でも、結局、家に着いたのは、1時間後の星がたくさん見える頃だった。
「ただいま」
そう言って家のドアを開けるとみんなすぐに駆け寄ってタオルで拭いてくれた。なぜなら、台風が近づいてこの頃よく夕立が降る。傘を差してもどうせ濡れるからと、差さずに杖のようにしてびしょ濡れで帰ったんだ。
最近僕はよくバスを逃す。学校が家からまともに行くと1時間半くらいはかかるからバスで行くんだが、最近下校するときにちょうどいいバスがない。ど田舎でもない。偶々、不運なんだ。
その翌日は、日中は晴れで帰りはちゃんとバスに乗ったが、雨は雨だ。バスを降りた瞬間に急に豪雨に変わって、バス停から家まで行くのにも結局びしょ濡れ。運賃だけ持ってかれたようなものだった。
「なんでこんな雨ばっかり。まるで僕に向けて嫌がらせでもしてるのかよ。」
ムキになって、空に文句を言った。あの綺麗な星々がなんだか憎らしい。
「ずぶ濡れなんかにならずに、ずっと綺麗で羨ましいなあ。あんなに雨の近くにいるのに。」
ついまた愚痴をこぼしていた。
その日の晩、星をぼーっと眺めていたら、横におじいちゃんがきた。
「あの星は、もう死んでいるんだよ。それでも今も我々に光を与えているんだ。誇らしく思え、“星斗”という名を。若い星も年老いて朽ちた星も、どちらの光も見られるんだ。こんなことないぞ、一生は一度きりだ。こんなに恵まれた星に生まれたことを存分に喜ぶんだ。」
そう言って、僕の背中を叩いた。僕は訳がわからなかった。ふと、とある話を思い出した。死んだ人は星になると。今の話となんだか重なったのか僕はまた訳が分からなくなった。冷ややかな夜風とともにぱらぱらと雨が降り出した。窓を閉めて、布団に潜った。
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