第2回文化祭企画会議

 『えのすい』に行った翌日、真実は図書館へ行き、文化祭企画書の学術的動機欄を書き上げた。

 議長は簡単だ、と言っていたが、書けば書くほど不足があるような気がしてきて、結局一日かかってしまった。

 翌日、仕上げた文章を提出し、無事、受領してもらえた。


 その週のロングホームルームは第二回文化祭企画会議だ。

 議題は、お化け屋敷の内容の詳細部分についてと、準備の行程についてだ。

 第一回会議と同じく、学級役員が議長を務める。


「構造はどうする?」


 議長が議題を投げかけると、次々と意見があがる。


「準備時間少ないから、無理に複雑にはしないどこ?」

「じゃあ、アルファベットのM字型は?」


「いいね~。そしたら教室の出入り口がある壁以外の壁沿いを、自分達が動けるようにして、そこから仕掛ければいいんじゃない?」

「そうだね。そしたら曲がり角が三つできるから、そこを曲がったら仕掛けがあると怖いと思うから、動く仕掛けは三つ作ればいいんじゃないかな?」


「そしたら、その間の通路を怖い感じに装飾すれば、いい感じだね」

「教室を暗くするのが結構難しいかもね。この教室、カーテンレール無いし」


「じゃあ、まずそこに幾ら予算が必要か見積もり出してから、他の仕掛けと展示系の予算考えよう」

「教室暗くする方法探して決めるのと、他の仕掛けとか展示とかの企画は、同時並行で進めよう」


「そしたら今日で、準備の係りも決められるね。自分は外の展示がいい~」

「え、もう係決め? じゃあ俺絶対お化け!」


「当日はみんなで公平に回さなきゃだから、それは今日決めなくてもよくね? それとも文化祭はずっとお化けやりたいん?」

「え、それは嫌に決まってるじゃん」


 クラス全体に笑いが起こる。会議はスイスイ進んでいく。

 流石は進学校のクラスメイト。頼りになる。

 そうして無事に全体会議が終わり、係りでの話し合いに移った。


 真実は、教室を暗くする係に入れられた。深海感の検証役だそうだ。

 オファーされたとき真実は、それって無理……自分は水族館のライトアップされた展示しか見てないし……と思ったが、楽しそうなクラスメイトのノリに何も言えなかった。


 これまであまり話す機会の無かったクラスメイトと係りになり、教室を暗くするという慣れない企画に、みんなで頭を捻る。

 みんな気さくで、いいクラスメイトだ。

 みんなも、真実のことを認めてくれる。


 クラスメイトとのこんな楽しい時間は、中学以来だ。

 この高校も悪くないかもしれない、と真実は思った。




 久しぶりに、真実は明るい表情で家路につく。

 途中、商店に寄り駄菓子を買う。

 おじちゃんに、今日は元気じゃねぇか? と言われて、うん! と元気よく答えた。


 家についても、特にトラブル無くすごした。

 夕食後は母親と美奈とテレビのバラエティー番組を観て一緒に笑った。

 真実は穏やかな気持ちで布団に入った。


 微睡みながら真実は、父親にもお休みを言ってから眠りたかったな、と思う。

 やがて、睡魔とともに眠りにつく。

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