貴方

いつか私が貴方の隣から居なくなったとして。

いつか私がどこか遠くに行ったとして。

この雑音だらけの世界で、貴方はどうやって私の心の居場所に気付くのだろうね。

貴方はきっと分からないから、私は期待しないで、でも寂しくて泣きながら、貴方をいつまでも待っているよ。


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私は貴方のことを何も知らないのかもしれない。けれど、あなたはそれ以上に私のことを何も知らない。

何故なら、私は私が貴方のことを知らないということを、知っているから。


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肌を重ねた時、確かに感じた温もりと安心と充足感は、木苺のジャムを煮詰める秋に少しだけ似ていた。

それはもう、昔のことで、そんな秋はもう二度と来ないのだけれど。


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貴方の存在がそっと私の中から消えていた時、私はこの恋が貴方の中で終わったことを感じた。そう仕向けたのは、私だけれど。

私たちは、始まりも終わりも、私が故意に発した言葉で、偽りの中に。

それでも、貴方のことを好きという事実だけが、歪に事実で。困ってしまう。

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