すてきなふともも

 ヨーコのふとももはとてもうまそうだ。俺がこの部屋に住んでいるのはそれを食べるためだ。

 風呂上がりに短パン姿でテレビを見ているヨーコの膝に乗って、むき出しの肌に頬ずりをする。前足で脂肪の付き具合を確かめる。いい頃合いだ。今日こそ食べてやる。

 めいっぱい口を開き、牙を立てようとすると、ヨーコは俺の背中を撫でた。甘えるような声で何度も呼ぶから、仕方なく牙を収めて、俺は返事をした。見上げると、ヨーコは嬉しそうに笑っている。

 なんだかかわいそうになって、俺はヨーコを食べるのをやめた。

 もうしばらくは、大人しく飼われていてやってもいいか。そうだ、あんまり簡単に食べてしまってはもったいない。

 少し舐めて味見をすると、ヨーコはくすぐったいと身をよじる。とてもうまそうだ。次は絶対に食べてやろう。

 そう考えるのが何度目なのか、俺は覚えていなかった。



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テーマ「山猫から聞いた話」

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