「桜の森の満開の下」の下

 カフェで桜味のラテを飲みながら、次回のテーマを思い出す。スマホで検索したら青空文庫のページが出てきた。そういえば未読だったなと思い、ページを開く。

 半分ほど読んだところで、ふと手元に影が差した。天井のスポットライトを誰かが遮っているようだ。隣の席の人が立ち上がったのかと思って顔を上げたけれど、周囲の客に変化はない。視線を戻すと明るくなっていた。

 首を傾げながら読み始めると、また暗くなった。自分の髪か頭かもしれないと、体を動かしてみたけれど変わらない。影が差しているだけでなく、誰か覗き込んでいる気配もする。けれど、私はもう上を確認したりはしなかった。どうせ誰もいない。

 どうしようかな。影の気配に注意を向ける。とりあえずこの場所から離れたい。

 影が揺れ、花びらが一枚、スマホの上に落ちてきた。これはやっぱり山桜だろうか。

 鈴鹿峠? 桜を目指すなら吉野山かな。でもどちらにしてもまだ桜は咲いていない。

 花びらが画面の上を滑って行く。何気なく見送ると、一つの単語が目にとまる。それで行先が決まった。

 私は京都行きの電車を検索する。都に着いたら影は消えるだろうか。



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テーマ「桜の森の満開の下」

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