あひるの決闘

「納得がいかない! 決闘を申し込む!」

 そう言ってD氏は真っ白なあひるをA氏に向かって投げつけた。

「受けてたとう」

 A氏は鷹揚にうなずいてから、慌てて、逃げて行くあひるを捕まえた。

「日時は今すぐ、武器はあひるだ」

「いいだろう。表へ出たまえ」

 二人は中庭へ出た。一部始終を見ていた人たちがそのままついて来たため、大勢の観客が見守っていた。

 D氏とA氏は三ヤードほど離れて、向かい合わせに立つ。二人は無言で、懐からあひるを取り出した。

「がー」

「ぐぁー」

 おおっと観客がどよめく。

「がーがーがー」

「ぐわっぐぁっ」

 がーがーと観客も盛り上がる。

 D氏は、がーと叫び、倒れた。A氏も、ぐわっと叫び、倒れた。

 介添人が二人に駆け寄り、がーがーと鳴く。

 中庭にはあひるだけが残り、あひるの勝利が決まった。



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