第13話 初めての外

「冒険者ギルドに俺がキタ━(゜∀゜)━!ー」

「急にどうしたの優君、どこかで頭でも打った?」

「ユーマ様、どうかなされましたか?」

 少し浮かれて叫んだら意外にも周囲の人に変な目で見られてしまった。

「ごめんなさい、調子乗ってました。別にどこも悪くないのでそんな目で見ないでくだしぃ」

 さすがに今のは俺が悪かったけど、そんな可哀想な奴を見る目で俺を見ないでほしい。ゾクゾクしてきそうだから。

「さて気を取り直して入ろうか」

「そうですね、先ほどのユーマ様の痛い行動は見なかった事としましょう」

 あれ、そういえば俺と姫姉の二人でこっそり離れから出て行ったのに何でメルさんが着いて来てるんだ。

「メルさん、優君はたまに変な言動や変な行動をすることがあるんだけど、これは不治の病気だから気にしないで下さい」

「そうなんですか、大変なんですねユーマ様も」

 ひでぇ、ちょっと厨二病が漏れ出ただけでこの扱いかよ。

「もういいだろ早くいこうぜ」

「そだね、こんなところで立ち話もなんだし行こっか」

 そう言い俺たちは冒険者ギルドの中に入って行く。

 ギルドの中は昨日によりも人が結構いた。

「さてとりあえず今日受ける依頼でも探そうか」

「そうだね。と言ってもまだ低ランクだしそんなにいい依頼は無いと思うけど」

「そうですね、Eランクですとゴブリンかスライムかラット系の依頼が主ですね」

「物知りですねメルさん」

「ええ、一応これでもBランク冒険者ですから」

 まさかの新事実、メルさんは高ランク冒険者だったのか。

 そう言ってメルさんが真銀ミスリルでできたギルドカードを見せてくれた。

「すごいですねメルさん」

「まあこれくらいどうってこともございません。それよりもまずはカウンターでパーティー登録をしましょう」

 あれ、メルさんがちょっと照れてるみたいだ。褒められるのは嫌いじゃないらしいな。

「パーティー登録って何ですか?」

 姫姉がメルさんに質問をしていた。

「パーティー登録をしておけば冒険者ランクのほかにパーティーランクが付けられる。パーティーを組めばパーティーランクで依頼を受けることもできるからな。それにパーティーランクが高いってことは長いこと同じパーティーで戦っているという事で連携が取れていると判断される」

「なるほど連携が取れるってことは集団戦ができてなおかつ安全性が高いってことですね」

「そういうことです。だからよっぽどの事が無い限りはみんなパーティーを組んで依頼を受けるんです」

 メルさんのちょっとした講義を終えた俺たちは受付カウンターでパーティー登録をした。

「はい、これでユーマさんとヒメナさんとメルリアさんはパーティーとなりました。パーティーの名前はどうなされますか?」

 パーティー名か、ここはカッコいい名前を付けなくては。

「ではパーティー名は『あかつき』でお願いします」

「あれ優君にしてはまともだね。いつもならもっと厨二病な名前を付けるのに」

 俺だって闇夜を駆ける狩人とか付けたかったけど、なんか後ろでメルさんがすっごい目で睨んでくるんだもん。

「では暁で登録しておきますね。パーティーランクは皆さんのランクの平均から一個下からになりますのでパーティーランクはEランクです。Eランクで受けられるクエストはこちらになります」

 ものの見事に常設の依頼しかないや。依頼書には注意事項が幾つか書かれていた。

「じゃあ常設の全部受けときます」

「はい、常設の依頼はゴブリンとスライムとビッグラットの討伐に薬草採取です。討伐証明のためゴブリンは右耳スライムは核ビックラットは尻尾を取って来て下さい。それでは頑張ってください」

 俺たちはとりあえず依頼達成のために一番近い西門に行くことにした。

「そういえば俺たちの装備って明らかにおかしくないかな」

「そうですね、普通はそんな普段着で外に行くなど明らかな自殺行為ですね」

「そうは言われても私が着てる服ってユニークスキルで作っているからそこら辺の金属鎧より硬いよ」

 まさかの発言に俺は姫姉の着ている服に鑑定を使った。


付与服

 DEF+100

 防刃 耐火 自動修復

 想像クリエイトによって創られ付与エンチャントによって強化された服


「姫姉俺にもそれください、お願いします」

 あまりにもぶっ飛んだ性能だったため姫姉に頼み込んで創って貰うことになった。

「まさかそんなスキルを持っていらっしゃるとは」

「まあ魔力を結構使うし使い勝手は悪いんだけどね」

 そんな会話をしながらも俺たちは街の外にやって来た。

「ここが外なのか。普通に人がいるな」

「一応ここは街をつなぐ街道ですし商人やそれを護衛する冒険者や用心棒くらいはいますよ」

「まあそりゃそうですよね。街のすぐそばに魔物がいるわけありませんよね」

 街から一歩出ただけでエンカウントするのはゲームだけだよな。

「取りあえず依頼の魔物はあちらのラグの森に生息しています。薬草も取れますので行きましょうか」

 俺たちはメルさんの案内でラグの森に入って行く。

「此処からは命のやり取りです。気を引き締めて下さい」

「「はい」」

 それから俺たちはラグの森を数分歩いた。すると開けた場所に出た。

「此処はよく薬草が取れる場所です。少し取って行きましょう」

 メルさんに言われて俺は鑑定を使ってみると、結構な量の薬草が生えていた。

「結構な量がありますね」

「この薬草はリカ草ですね。低級ポーションの材料になります。いくつか取って行きましょう」

 俺たちはメルさんの指示に従いながら薬草を採取した。

「ではこの位にして先に進みましょう」

 その時、何かが茂みから飛び出してきた。

「あれはゴブリンですね。お二人で倒して見て下さい」

 飛び出してきたゴブリンは三体だった。

「姫姉俺にやらせてくれない」

 この数なら俺一人でもやれるはずだし、肩慣らしに少し本気を出してみることにする。

「別にいいよ」

 姫姉の了解を得たところで錆びたショートソードを持った三体のゴブリンがそれぞれバラバラに斬りかかってきたが、俺は一度後ろに下がり腰に差しておいた真銀ミスリルの剣を抜き端のゴブリンに斬りかかった。

 ゴブリンは反応できずに首を斬り落とされた。

 他のゴブリンたちは剣を振り回しながら俺に向かって来ていたが俺はそれを躱しながら残りの二体の首を落とした。

「やっぱりこの剣じゃ使いにくいな。姫姉、創造クリエイトで刀創れないかな?」

「良いよ。いつも使ってた木刀サイズで良いよね」

「ああそれで頼むわ」

「じゃあその真銀ミスリルの剣から創るよ、創造クリエイト

 俺が持っていた真銀ミスリルの剣を渡すと姫姉は創造クリエイトを発動した。

 姫姉の手に有った真銀ミスリルの剣は輝きながら形を変えて数秒の内に一本の刀に変わった。

「ついでに、付与エンチャント。これでそこそこ強い刀になったはずだよ。感謝してよね」

 そこは『別にあんたのためじゃないんだからね。私が楽をするために仕方なくやってあげたんだからね』とか言って欲しかった。

 そんな事を考えつつ俺は姫姉から刀を受け取り鑑定をしてみた。


真銀ミスリルの妖刀

 魔力吸収 体力吸収 自動修復

 創造クリエイトにより創られた刀

 鍛造で造られたものよりも高品質


「ねぇこれもの凄いことになってるんだけど」

付与エンチャントしたら妖刀になっちゃった」

 この刀呪われてないか心配になって来た。血を求めてきたリしないか心配だ。

「まあ、ありがたく使わせて貰うよ」

「それは剣なのですか?」

 メルさんがそう聞いてきた。

「これは剣では無くて刀です。斬ることに特化した武器だと思って下さい」

「確か東のまた向こうに同じような名前の武器があると聞いたことがございます」

 まあこっちにもあってもおかしくは無いだろう。

 そんなことを考えているとまた茂みの奥からガサガサ音がした。

「優君、メルさん、次は私がやります。良いですか?」

「はい、問題ありません」

「良いよ」

 俺たちが返事をしたと同時に茂みから今度はスライムが出てきた。

 

 



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