第11話 やっと冒険者になったぜ

 猫耳のギルド職員の女性がいるカウンターに俺と姫姉がメルさんを引き連れて行く。

「すいません俺たち冒険者になりたいんですけど」

「えーと先ほどあちらで諍いをしていた人ですよね」

 やっぱり見られていたみたいだ。

「あはは、お恥ずかしいところを……ところで冒険者登録をしたいのですが」

 ここはあえてごり押しでなんとしてでも冒険者登録をしてやる。

「はい登録自体は可能ですが……犯罪者はなれませんよ」

「大丈夫です!俺たちは清い体です!どこも穢れてません。なので手続きを」

「はあ、でしたらこの登録用紙を記入してください」

 そうして渡された紙には名前と使用武器、住所と特技を書く欄しかなかった。

 俺と姫姉はその書類を全て埋めて猫耳職員に提出した。

「はい、えーと、ユーマさんとヒメナさんですね。使用武器はお二人とも剣と、住所は……お、王城とありますが、これは?」

「現在の住所です」

「さすがにこれは……」

 やはり信じて貰えないか。かくなる上はメルさんを使って。

「メルさんお願いします」

「はぁ、仕方ありませんね。彼らは現在王城にてお過ごしになられている客人です。王室騎士団第三師団団長のメルリアが保証します」

 メルさんが短剣を見せながら俺たちのフォローをしてくれる。

「こ、これは失礼しました! まさか騎士団長様とは露知らず。今までのご無礼何卒ご容赦のほど」

 さすがは王室騎士団団長だぜ。これなら話が早く済みそうだ。

「で、ではユーマさんとヒメナさんのギルドカードをお作りしますので少々お待ちください」

 そういうと猫耳職員は奥の部屋に入って行き数分後部屋から出てきた。

「お待たせしましたこちらがお二人のギルドカードになります。後はカードに所有者登録として血を一滴付けて貰えればそれでお二人はその瞬間から冒険者です」

 猫耳職員の言う通りにナイフで軽く刺して血をギルドカードに垂らす。するとギルドカードが少し光り、光が収まるとギルドカードに名前とランクが現れた。

「お二人とも無事に終わりましたね。ではギルドカードについて説明します。ギルドカードは名前とランクがデフォルトで表示されます。あと二つ名などがたまにつく場合があります。二つ名は隠すことができます。依頼を受ける場合はあちらのボードにある依頼書をこちらまで持ってきて手続きを受けて下さい。あと常設の依頼は手続きは必要ありません。お二人のランクは一番下のFランクですので受けられる依頼はFランクの物のみとなっております」

 猫耳職員の話を聞いていると後ろから声を掛けられた。

「おいサリアよこやつらのランクを一つ上げてやれ」

 声を掛けてきたのは予想通りギルドマスターだった。

「ですがギルドマスター、何も依頼を受けていないのにランクアップしても良いのですか?」

「良いよ、副ギルドマスターが迷惑をかけたし。それにあやつらを下せるくらいに強いのだから少しくらい優遇したところで問題あるまいて」

「ギルドマスターがそこまで仰るのであれば。ではユーマさんとヒメナさんはギルドカードをお貸しください、ランクアップの手続きを行います」

「「お願いします」」

 俺と姫姉は猫耳職員さんにギルドカードを渡した。猫耳職員はギルドカードを受け取るとまたも奥の部屋に入って行き、数分後にカードをもって戻って来た。

「お待たせしました、こちらがEランクのギルドカードになります。言い忘れてましたがギルドカードはランクが上がる毎に素材が変わります。Fランクはアイアン製でEランクはカッパーです。後ギルドカードを紛失されますと再発行するのに手数料として100シア頂きますのでくれぐれも失くさない様にお願いしますね」

 うへぇ、再発行するのに100シアもするのかよ。これは気を付けておかないと後悔しそうだ。

「はい、わかりました」

「では良い冒険を」

 こうして俺と姫姉は晴れて冒険者になったわけだが、色々あったせいでもうそろそろ日が暮れてしまいそうだ。

「ユーマ様、ヒメナ様、今日はもう日が落ちそうなのでそろそろ王城に戻られた方が良いのでは?」

「そうですね今日はもう時間ですし帰りましょうか」

「そうだな、遅れて飯抜きにでもされたら困るしな。帰るか」

 俺たちがそんな会話をしているとまたしてもギルドマスターが声を掛けてきた。

「三人とも待ってくれ。お前たちに渡すべきものがある」

 ギルドマスターはそう言うと階段を駆け上がって行きそれから数分の後、階段を駆け下りてきた。

「はぁはぁ、おぬし達に今回の詫びとしてこれを受け取ってくれ」

 ギルドマスターそう言いながら俺たち三人それぞれに袋を差し出してきた。俺たちはそれを受け取り中を確認すると中には金貨と銀貨が入っていた。

「なぜこんな大金を我々に?」

 メルさんは不審げにギルドマスターと問い詰める。

「なにそれは今回の副ギルドマスターが起こした面倒ごとに対する賠償金じゃ。何、気にするでない。それは副ギルドマスターの物じゃ。気にせず受け取ってくれ。と言うか受け取ってもらわないとこちらが困る」

 ギルドマスターから渡された袋を俺たちはしぶしぶ受け取り冒険者ギルドを後にするのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る